■今後、住宅費が家計を大きく苦しめる
これから住宅を購入しようとする人は2つの理由で、将来の生活が今以上に苦しい状況になることが予想されます。
ひとつは金利の上昇です。短期金利、長期金利ともに上昇が予想されます。すでに住宅を取得している人でも、変動金利を選択している人たちにも影響が出ます。
もう一つの理由は、住宅価格の高騰です。とくに都内などでは、中古マンションでも1億円を切る物件を探すのは難しくなりつつあります。
こうした背景から、比較的若い層では、従来より住宅ローンの期間を長めに設定する人が増えつつあります。この場合、月々の返済額は抑えられますが、返済期間が延び、トータルでの支払額は増えます。
住居関連費の支払いが増えれば、その他の支出である、食費・教育・旅行・教養・娯楽などを減らさなければなりません。
大幅な給料アップが期待できる転職をするか、もしくは夫婦とも一流企業の正社員といったパワーカップルでない場合、ローン返済負担増は「生涯賃金」を大きく削りとることになるでしょう。
■短期金利が上がれば住宅ローン変動金利も
まず、注意が必要なのは、1年未満の金利である短期金利です。これは日銀が決める「政策金利」に連動します。住宅ローンの変動金利も政策金利に連動して動きます。
政策金利は「コール翌日物」といって銀行間で1日だけ貸し借りする金利を言い、日銀が毎日その市場に介入することで一定の金利を維持しています。現状は0.75%です。そして、今後も以下に説明する理由で政策金利は上がります。
4月27、28日の日銀の政策決定会合では、0.75%の政策金利が維持されました。イラン情勢が緊迫化する前には、4月のこの政策決定会合で政策金利を0.25%上げ、1.0%にするという予想がエコノミストたちの間では大半だったものの、イラン情勢の緊迫化により経済の先行きが不透明となったため、日銀は政策金利を据え置きました。
しかし、原油価格の高騰や石油化学製品の供給懸念から、インフレも予想されています。今年に入り、比較的落ち着きを見せ始めていた消費者物価ですが、高い確率でインフレの再燃です。
■「実質賃金」がまたマイナスに陥る懸念
日本では、ガソリンや電気・ガスの補助金が出ているので今のところ物価上昇は抑えられていますが、補助金のない米国では1、2月にそれぞれ2.4%だった消費者物価の上昇率は3月に3.3%、4月には3.8%に跳ね上がりました。
そうすれば、やっとプラスになった「実質賃金」がまたマイナスに陥る懸念があります。「実質賃金」は、額面の賃金(名目賃金)からインフレ率を引いたものです。春に賃上げのあった会社も多いと思いますが、昨年並みのところも多く、3%以上の物価上昇となれば、実質賃金は再度マイナスに沈む懸念があります。
さらには、円安に対抗しなければなりません。円安は輸入物価の上昇を通じて日本経済に悪影響を与えます。政府は介入により160円を少し下回るラインを必死で守っていますが、金利を上げない限り根本的な対策にはなりません。欧米もインフレ懸念から金利上昇のリスクがあり、そうなれば日米などの金利差は縮まらないので円安が続きます。
この点でも政策金利を上げることが必要で、6月15、16日の日銀の政策決定会合では、高い確率で政策金利を0.25%上げ、1.0%になるでしょう。
さらには、黒田前日銀総裁が、短期金利について1.5%という言及をしており、そのことと関連しなくとも、私は年内に日銀は1.25%まで政策金利を上昇させると考えています。
そうなれば、住宅ローンの変動金利も一段と上昇するのは必至となります。
■長期金利が上がれば住宅ローン固定金利も
1年超の金利を長期金利と言いますが、こちらも上昇をまぬかれません。こちらは固定金利型の住宅ローンに影響を及ぼします。
図表1は長期金利の代名詞である「10年国債利回り」の昨年初からの動きです。昨年初には1.2%程度だったのが、高市政権になり急上昇。最近では2.6%を超えました。
これは、高市政権の積極財政に対し、投資家が財政悪化を懸念して国債を売り、それにより、長期金利が上昇したものです。さらには、イラン情勢により、ガソリン価格を170円程度に抑えることや、電気・ガス料金への補助などを延長せざるを得ないとのことから、2.5%を超える程度まで上昇したのです。
日本は、対名目GDP比で先進国中ダントツ最悪という財政状況で、財政悪化懸念への市場の反応が大きく、今後も補助金などだけではなく、医療費・年金などの社会保障、公共工事などのインフラ整備、米国に歩調を合わせる形での防衛費など、財政拡大が続けば高い確率で長期金利はさらに上がると考えられます。
つまり、固定金利型の住宅ローンはほぼ確実に上がります。
■新築も中古も都市部の住宅価格が上昇
上がるのは住宅ローンの金利だけではありません。ここ数年、都心を中心とした住宅価格は急上昇しています。東京23区内では、中古マンションでもファミリー向けなら1億円を切る物件を探すのが難しくなりつつあります。
さらには、イラン情勢で石油化学製品の供給不安も起こっており、それに関連して価格も上昇しつつあります。住宅の資材価格も上昇しており、一般的な戸建てで、今後資材費だけで数百万円上昇するとの指摘もあります。資材費の上昇は、都心に限らず地方でも同じです。一馬力の会社員が大黒柱の世帯では、もはや家を買うのが困難になりつつあるのです。
■住宅ローンの長期化が進む
そうした中、20代や30代前半などの比較的若い人たちは住宅ローンをこれまでより長期で設定する動きが活発化しています。「家賃の支払いはもったいない」「価格がもっと上がるかも」といった心理も働き、今のうちに買わなければという気持ちが強まります。
ただ、若い層は収入も高くない場合が多く、月々の支払いが抑えられる長期ローンに頼りがちです。実際、35年超の住宅ローンを組む割合は25.5%で、増加傾向にあります。完済時は70~80代以上になる50年ローンを組むケースも増えています。
住宅ローン期間が長ければ長いほど、図表2にあるように月々の返済は抑えられますが、全体での金利負担は重くなり、トータルでの返済額は増えます。
さらには、ここまで話してきたように、このところ金利が短期・長期ともに上昇しており、さらに上昇することが予想されます。
■返済期間30年と50年、利子は約8000万円増
図表2は元金7000万円を30年、または50年の期間で借りた場合の返済額です。
表を見てわかる通り、月々の返済額は30年より50年ローンのほうが少ないですが、トータルの返済額は50年のほうが断然多くなります。
現状の長期固定のローン金利は一般的に3%程度です。その場合、月々の返済額は30年ローンなら29万6000円で、トータルの支払額は約1億642万円。金融機関に払う利子は3000万円超で済みますが、同じ金利3%・返済期間50年になると、月々の返済額は25万2000円と減るものの、総返済額は約1億5120万円と、30年返済に比べ約4400万円強も増える計算。払う利子は約8000万円に膨れ上がります。
不動産価格の高騰などで返済期間を延ばす人が増えていると述べましたが、延ばせば延ばすほど、こんなにも利子が増えてしまうわけです。
■金利や返済期間により7000万円差
では、今後予想される借入金利4%時代となったらどうか。
50年で返済すると月々の返済額は29万4000円となりますが、トータルでの返済額は1億7640万円。3%時代と比べ、約2500万円増えます。3%で30年の住宅ローンと比べると、トータルでの返済額は約7000万円も増加します。
■生活レベルを落とすか、繰り上げ返済か
若年層の場合、この先の給与はある程度増えることが予想されますが、それでもどこまで増えるかは未知数です。転職をするなどして、今まで以上の収入を得て、繰り上げ返済を行うという選択肢もありますが、リスクが伴います。
いずれにしても、生涯賃金の予想をきちんと立てた上での住宅ローン返済計画が必要なことは言うまでもありません。金利や住宅価格の上昇は、人生設計を大きく変える可能性があることに注意が必要です。
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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。
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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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