※本稿は、窪田真之『「超」成長株の見つけ方』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
■米国のテック株はなぜ成長し続けるのか
美しい成長株が多いのは米国です。すでに名の知れた半導体大手「エヌビディア」は、成長のための確固たるビジネスモデルがあり、株価も利益もきれいに成長が続いています。同社の成長力は、図表1のように評価できるでしょう。
エヌビディアだけでなく、Microsoft・Googleなど米国には美しい成長株が多数あります。それは、インターネット・AIを利用するための世界インフラを支配している強みが何十年も続いているからです。Microsoftは、世界中で使われる基本ソフト(Windows)を支配している強みを活かして、インターネットを使う新しい革新的なサービスが現れると次々と取り込んで成長を続けてきました。
Googleはインターネット上の検索ソフトを支配している強みを活かして、基本ソフト(アンドロイド)でもMicrosoftに対抗してシェアを伸ばし、新しい革新的なサービスを取り込んで成長を遂げました。
身近な例で言えば、私たちがパソコンを購入すると、ほぼ自動的にMicrosoftの「Windows」かGoogleの「アンドロイド」がセットされています。なんらかの基本ソフトを使わないと、パソコンが動かせないので当然です。
■Wordに敗北した「一太郎・花子」
Microsoft「Windows」のセットされたパソコンを使って文書を作成する場合、原則として「Microsoft 365」というソフトを利用することになります。
私も昔は「一太郎・花子」を使っていました。ところが、パソコンで大量の文書を作成するのが普通になると「Word」を使わざるを得なくなりました。当時、日本語能力が最高レベルだった「一太郎・花子」を捨てて「Word」を使わざるを得なくなったことは非常に心外でしたが、Microsoftが支配するWindowsを使う以上、ほかに選択肢がなかったのです。
その後、「Word」の日本語能力も向上してとても良くなりましたが、結局、基本ソフトで世界を支配しているMicrosoftに日本のソフトウェアはかなわないと痛感しました。Googleも検索ソフト世界トップで、かつ基本ソフト「アンドロイド」で世界を支配していて、Microsoftとともに圧倒的な強さを有しています。
■ネットサービスで世界に勝てない日本企業
日本でも、東京タワー隣接地でのデータセンター建設計画が明らかになり、議論が広がっていますが、MicrosoftやGoogleは、次の成長に必要なAI開発領域においても、世界をリードしています。具体的には、AI活用に不可欠なインフラである「AIデータセンター」への投資で先行しています。
Amazonも合わせた3社でクラウドサービスで世界を支配し、収益基盤をさらに強固にしているため、AIを活用したビジネスがこれからどんどん増えるに従い、Microsoft・Googleの躍進が続くと考えられます。インターネット・AI利用者の一人としては、強すぎるMicrosoft・Googleに懸念を持ちます。
ただし、投資家としては、Microsoft・Googleのように、インフラを支配することで確固たるビジネスモデルを維持している企業は頼もしいと思います。
一方、日本からはなかなかインターネットやAIサービスで世界を支配する企業が出てきません。革新的サービスを次々と生み出す発想力はすばらしいのですが、いざ世界展開の段になると、Amazon・Microsoft・Google・Meta(旧Facebook)・Appleなどの米テック大手にかなわず、成長の芽をつまれてきました。
■「アメーバブログ」も「iモード」も敗れる
ここで歴史を振り返ってみましょう。NTTドコモが1999年に始めたiモードは、ケータイからインターネットに接続してウェブサイト情報を閲覧する世界初のサービスでした。同社はiモードの世界展開を目指して努力しましたが、日本独自の規格が受け入れられることはありませんでした。
そのうち、米国勢が展開するインターネットサービスに世界中を支配され、NTTドコモのサービスはあっけなく終了してしまったのです。
高機能ケータイの開発でも同社は先行しましたが、独自規格で世界に受け入れられることはなく、米国の携帯電話大手AppleのiPhoneとの競争に敗れました。SNSサービスでは日本のサイバーエージェントが2004年に始めた「アメーバブログ」が早かったのですが、後から広まった米国勢によるFacebookやX(旧Twitter)などに主役の座を奪われました。
インターネットもAIも、利用するためのインフラを米国勢に押さえられているので、日本企業は圧倒的に不利です。先にサービスを始めても、後から開始する米国勢に市場を奪われる――その繰り返しでした。
それでもなお、日本企業が強い分野はあります。
■日本企業が世界に勝てる分野は「エンタメ」
加えてゲームやアニメなど、さまざまなデジタル・コンテンツ、エンターテインメントの領域では日本勢に成長のポテンシャルがあると思います。私自身は、とくにソニーグループに期待しています。
美しい成長株として私が高く評価する企業が、ソニーグループ(証券コード6758)です。ソニーグループは20世紀に「美しい成長株」でした。1980年代に黄金期を迎えた同社は、1990年代以降は「残念な成長株」に転落したのです。そこからビジネスモデルを変え、再び21世紀に「美しい成長株」として復活を遂げました。
ソニーグループの歴史は、日本の製造業の盛衰をよく表しています。20世紀は、人類がものの豊かさを求めて努力した時代。便利なものを創り出して安く大量生産する企業が成長し、その競争を勝ち抜いたのが日本の製造業でした。
1980年代は、ソニーグループ・松下電器産業(現パナソニック)・日立製作所・東芝・日本電気(以下「NEC」と表記)・トヨタなど、日本企業が製造業で世界トップに上りつめた時代でした。製造業としてのソニーグループの成長は1980年代までで終わりました。
■なぜソニーは世界最強になれたのか
しかし、お見せしている株価と連結純利益は、1990年代以降、ソニーグループが「没落する成長株」となりかかる危機を乗り越えて、復活していく過程を示しています。その勝因はなんでしょうか?
その答えは、1990年代以降、ソニーグループがビジネスモデルを大きく変えたことにあります。製造業を縮小して、ゲーム・音楽・映画をグローバル展開する総合エンターテインメント企業として方針転換したことが、復活と成長のターニングポイントでした。
その後、20世紀には中核事業であったテレビ・音響機器などの製造業は、今はかなり縮小されました。現在では、ゲーム・音楽・映画を展開する総合エンターテインメント企業として、グローバルに高い競争力を持って成長しつつあります。製造業としては唯一、半導体(画像センサー)で高い収益をあげていることでも話題でしょう。
このように同社は見事な事業転換を果たしたわけですが、最初からはっきり道筋が見えていたわけではありません。ハード(製造業)重視かソフト(ゲームなど)重視か、社内で何度も議論し、ハード重視へ戻る局面もありました。
■世界が注目する日本のコンテンツ
長い議論を経て、手探りで変わってきましたが、結果的に時代の変化に適応して、見事に美しい成長企業として復活しました。その経営力に敬服します。
成長株としてのソニーグループへの私の評価は、図表4の通りです。
これから、さまざまな無形資産・無形コンテンツが世界で成長していく時代になると思います。ゲーム・音楽・映画という無形資産・無形コンテンツの制作・販売で確固たる地位を築いたソニーグループの成長が続くことが予想されます。日本はアニメで世界をリードしています。
さらに音楽・芸術・スポーツなど新しい分野で、日本の若い世代が世界で活躍するようになってきました。生成AIによって言語の壁が低くなる時代となることもあり、日本が生み出す文学作品も世界で評価される時代になると思います。
こうした新しい流れを捉え、ソニーグループが総合エンターテインメント企業として、世界で成長が続くことを期待しています。
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窪田 真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト
慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネジャー歴25年。公的年金・投資信託・ニューヨーク上場ファンドなど、2000億円超の日本株運用を担当。2014年より現職。楽天証券「トウシル」で月間200万PVを超える人気の投資コラムを連載。
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(楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト 窪田 真之)

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