<写真1:玉川大学リベラルアーツ学部の永井学部長と学生発表メンバー>
東京都町田市の「里山」を活かすため、大学生がアイデアを提案します――。
玉川大学(東京都町田市/学長:小原一仁)のリベラルアーツ学部は町田市と連携し、社会や地域における実践的な学びを通じて課題解決力を養う「オフキャンパス・スタディーズ」の一環として、地域の自然や文化、交流をテーマに、里山資源の活用に向けた企画案を町田市の職員へプレゼンテーションしました。
〇町田市プレスリリース:玉川大学リベラルアーツ学部との連携授業学生発表会を開催!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000848.000052170.html
<写真:発表会参加者集合写真>
町田市と学校法人玉川学園は2025年8月、木に関する事業連携協定を結び、市内の樹木の利活用を共に進め、循環することを通じて、持続可能な社会や環境、地域の発展に寄与することを目指しています。町田市は里山の整備などにより、伐採した木材や竹材を処分せずに利用する「『まちだの木』活用プロジェクト」を展開しており、玉川学園は樹木の整備と学園での学びを“木の輪”でつなぐ「Tamagawa Mokurin Project(タマガワ・モクリン・プロジェクト)」を進めています。両者の取り組みをかけ合わせることで、教育や研究の成果を迅速に社会へ広げ、ゼロカーボンに貢献する目的で連携がスタートしました。
<図:事業連携協定ポスター>
緑豊かな玉川大学・玉川学園のキャンパスでは創立以来、自ら木を植え育て、その木を使ったものづくりを通じて、学生・生徒・児童たちが自然の循環を学んできました。キャンパスの多くの樹木が更新時期を迎えるなか、2021年に導入した木材低温乾燥装置をきっかけに、2022年にTamagawa Mokurin Projectを発足。これまでに、キャンパス内の里山環境を整備する聖山労作や“マイナスカーボン”を目指す世界初の実証実験、植林活動などの「木の循環」の試みに加え、大阪・関西万博のサテライトスタジオの建材として間伐材を提供するなどの「木の活用」、町田市との竹あかりイベントをはじめとする地域連携など、木を活かすさまざまな活動に取り組んできました。
<聖山労作の作業の様子>
リベラルアーツ学部では、哲学、社会学、環境学、国際関係論など広範な学問領域から複数の分野を組み合わせて「自分だけのカリキュラム」で学び、複眼的な視点と深く物事を見る力を養います。体験的な学びを中心とするオフキャンパス・スタディーズを教育の柱に据えており、企業インターンシップやフィールドワークを通じて社会課題の解決に貢献できる人材の育成を掲げています。こうした学部の理念が、里山保全という複合的な地域課題と親和性が高く、今回の町田市との連携授業へとつながりました。
2026年2月に開講したリベラルアーツ学部の集中授業「フィールドワーク玉川学園・町田」では、開講時点で大学1年生から3年生の十数人の学生が、約3ヶ月かけて現場と教室を往復しながら学びを深めてきました。玉川の丘の自然環境について改めて調べ、町田市職員による環境保全に関する講義などに加え、町田市小野路町の里山散策や竹林の伐採作業、エコイベントへの参加といった複数のフィールドワークを進めながら、「町田市の里山資源をどう活かすか」との観点で学生がまとめた企画案を、5月に町田市職員に向けた提案として発表しました。
<発表会の会場の様子>
「まちだの木」活用プロジェクトは、里山の整備や道路の維持管理などにより伐採した木材・竹材を処分せずに活用することで、新たな資源循環を生み出す取り組みです。竹林の多い小野路地域では、市民団体とともに放置竹林の整備や竹材の利用を推進し、伐採した竹を使った竹灯籠やメンマ(幼竹漬け)作りなどを実践。また、老木化などで役割を終えた街路樹を家具などに加工する事業連携も進めており、市庁舎2階食堂(キッチン パチパチ)ではその家具を実際に体験・利用することもできます。
<玉川大学リベラルアーツ学部長 永井悦子教授>
今回の企画の大枠は、ワークショップを通じた里山ルートの整備、アート展示、食を楽しむイベント、大学生によるSNS情報発信の四つのテーマです。発表に先立ち、担当教員であるリベラルアーツ学部長の永井悦子教授が、「机上で学んだことを現場に出て試してみる『オフキャンパス』の学びと、それを踏まえてさらに大学で学び直すこの循環によって、複眼的な視野や課題解決能力、コミュニケーション力などを養い、これらの能力を地域に還元できる意欲を持つ人材を育てることが教育の目的にある」と語りました。
<LA学部の紹介>
最初に発表したのは、「里山Canvas Project(里キャン)―ひろった森のピースでえがく『私たちの空間』―」をコンセプトに、町田市内の里山が抱える三つの課題を取り上げた萩原瑞樹さん(3年)、久木田湧地さん(3年)、出口晴仁さん(2年)の3人チーム。
その課題とは、①伐採後に放置された木や竹などが飽和状態になっている、②里山の出入り口や順路が分かりにくく、来訪者への案内が不十分である、③若者への広報不足を背景に、活動の担い手が減っている――ことだといいます。
そこで、これらの課題を解決する糸口として提案したのが、里山をキャンバスに見立て、案内看板の制作イベントなどを通じて里山の環境を改善する「里キャン」プロジェクトです。小・中学生とその親を主なターゲットとし、実際に里山を歩き、参加者が集めた素材で看板作りに取り組むことで、それまで「見る場所」であった里山を「自分たちの手で作り上げる場所」にし、参加者の意識を塗り替えることを目指しています。昼食には、町田産のメンマ(幼竹漬け)を使った炊き込みご飯を竹の器で提供する計画です。
<1番目の発表チームの学生>
これに続き、高村柊子さん(4年)、飯塚帆南さん(3年)、千葉勇児さん(3年)、伊藤雅樹さん(2年)のチームが、「『町田』で作るインテリアコーディネート―町田の木の価値・有用性を知ってもらおう!!―」を提案。「街路樹を処分せず、資源としてとらえる」という町田市の方針に着目し、里山で伐採した木や竹を実際の生活空間に取り入れた時の雰囲気を体感してもらうため、モデルルームの展示を企画しました。
市内に工房を持つ事業者と連携し、木製テーブルや竹灯籠、木工ワゴン、ナラ枯れ材を使ったフローリングなどを配置したリビングルームを公開し、資源を生かした個性ある家具づくりを手がける企業を紹介しながら、訪れた人に木材の新たな価値を知ってもらうことを狙いとしています。将来は「町田の木を使った里山の空間や建物として、例えば、幼稚園や子どもの遊び場、交流スペース、ワークショップ会場などを作りたい」との大きなビジョンも掲げています。
<2番目の発表チームの学生>
また、持田貴大さん(4年)、川口織姫さん(2年)の2人組チームは、「町田の里山を味わおう!―タケノコ掘り+親子向け食育ワークショップ融合企画―」を立ち上げました。“里山と食卓をつなぐ”を合言葉に、午前中に小野路でタケノコ掘りを体験し、午後は掘ったタケノコをゆでて具材にしたピザを調理し、試食してもらうという企画です。若者と地域を結ぶ体験型ワークショップを街づくりへと発展させる試みです。
これに加え、持田さんは別のテーマとして、「地域の自然を学びながら走ろう!―町田市・横浜市・川崎市連携 鶴見川42.5キロメートルジョギング大会―」も提案しています。町田市上小山田町に広がる源流域から鶴見川を上流、中流、下流の三つのエリアに分け、里山を体験しながら、施設見学や自然観察などを行い、最終的に42.5キロを走り抜くことを目指す、広域のスポーツイベント構想です。持田さんは「玉川学園はこれら三つの都市にまたがっていることから、学園の園児や児童、生徒、学生、教職員、卒業生に呼びかけてランナーやイベントスタッフを募り、参加者全員が里山環境について考えるきっかけにしたい」と壮大な夢を語りました。
<3番目の発表チームの学生>
最後のチームは、大山みくさん(4年)、高木萌恵さん(4年)の2人による「SNS発信―TAKE NOTE―」です。里山保全や「まちだの木」活用の取り組みは各所で進んでいるものの、特に若い世代への認知が十分でないとの問題意識から、大学生によるInstagramアカウントの開設・運営を提案しました。
具体的には、大学生目線で行う週1回の投稿を軸に、里山に関する知識、フィールドワークなど活動の様子、イベント告知という三つのコンテンツを組み合わせ、放置竹林など里山の現状を伝えるだけでなく、それらに関わる人を増やす仕組み作りを意図しています。アカウントはリベラルアーツ学部のホームページにリンクを置いて情報の信頼性を高め、発信は後輩へ継承していくことで継続的な運用を目指しています。
<4番目の発表チームの学生>
これら全4チームの発表を受け、市の職員からは総評として、「どの提案も具体性があり、実現できそうなものばかり」との温かく前向きに評価するコメントがありました。一方で、「自分が参加したいと思えるか、という視点から企画を見直すこと」「スタートとゴールだけでなく、その間をどう設計するかを考えること」「複数のイベントを連携させて参加者が自然と次のステップへ向かえる仕組みを作ること」など、企画をより実効性あるものにするためのアドバイスも共有されました。
<町田市職員からの講評>
最後に、学校法人玉川学園の小山豊常任理事が「昨年8月の協定締結から1年と経たず、これだけのイベントに発展できたことに感謝しつつ、これからも両者のポテンシャルを融合して関係性を強め、世の中に発信しながら地域の課題を解決していきたい」と展望を語り、今回の提案を土台に、実現に向けて連携をさらに強化していく考えを示しました。
<学校法人玉川学園 小山豊 常任理事>
発表会に出席した職員へのアンケートでは、提案内容を高く評価するコメントが多く、学生たちの地域への愛着や熱意が伝わる発表として好評を得ました。
文部科学省が地域課題の学校教育への組み込みを強く推進するなか、玉川大学リベラルアーツ学部と町田市のこの取り組みは、学生の“生きた学び”と地域の課題解決を同時に実現しようとする先駆的なモデルとなるかもしれません。今後は学生の提案が実際のイベントや施策に反映され、玉川学園と町田市の連携が「木の輪」とともにさらに広がっていくことが期待されます。
全国的に森林資源の活用が進む中、町田市が抱える地域の課題に対する、地元・玉川大学の学生ならではの視点による企画の提案は、環境と地域社会の持続的な発展に向けた連携活動の確かなスタートとなりました。
<関連情報>
〇町田市プレスリリース:まちだの木と里山活用フォーラムを開催します
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000820.000052170.html
〇玉川学園・大学の関連情報
・町田市と学校法人玉川学園による『「まちだの木」活用プロジェクト』と『Tamagawa Mokurin Project』の木に関する取組で推進する新たな資源循環事業連携協定を締結
https://www.tamagawa.jp/news/news_release/detail_25000.html
・「まちだの木と里山活用フォーラム」紹介
https://www.tamagawa.ac.jp/info/mokurin/news/detail_054.html