「アスティーダ」というIPを育てていく 琉球アスティーダ代表・早川周作氏に聞く(前編)

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近年ビジネスとしてのスポーツへの注目が高まっている。その中で沖縄県を本拠地にする「琉球アスティーダ」は、運営会社が日本で初めて上場を果たしたことで知られるプロ卓球チームだ。

一体どのようにして成し遂げたのか。代表取締役を務める早川周作氏に聞いた。



経済・地理的メリットが大きい地「沖縄」



沖縄を拠点にする早川氏だが、生まれは秋田県秋田市。スポーツクラブ運営会社代表にいたるまでは紆余曲折のキャリアを歩んできた。



早川氏(以下略)
「中学までが秋田で高校は千葉でした。19歳の時に親父が会社を潰して蒸発して、新聞配達をやりながらお金を貯めて、夜間の大学に通いました。



三回生のときに起業に関わる形になり、25歳でその会社を離れて、30歳でまた東京に戻り、そこで中小ベンチャーの支援を90社ほどして、その中で落ち着いたなというところで沖縄に移住をして、いまは東京と行き来しながら、時折秋田や大阪にも立ち寄っています」



世界各国も延べ50か国飛び回るなど、多忙な日々を送っている早川氏だが、沖縄は、毎月訪問するほどの個人的なお気に入りの場所。現在は家族も移住し、2人の娘は地元の高校に通っているが、それは経済的・地理的要因も大きいという。



「沖縄って『教育コスト』が安いんですね。例えば東京麻布のインタースクールに通わせたら年間200万程度かかりますが、ここだと50~60万で済みます。コロナ禍を経験して、『東京一極集中』は難しいよなというのもありましたね。それと地図で見ると東アジアの中心にあることですね。例えば香港まで2時間ほどで、沖縄の経済発展と将来性に期待しました」



「スポーツチームは弱ければダメ」



色々な縁あって、代表を引き受けたのが琉球アスティーダとなる。



「アスティーダ」というIPを育てていく 琉球アスティーダ代表・早川周作氏に聞く(前編)
画像1: 「スポーツチームは弱ければダメ」


「アスティーダを引き受けたのは、日本のスポーツビジネスをもっとスケールメリットして、本当の『ビジネス』にしていきたいという、経営者としてやってみたいことがまずありました。

それになんといいますか、スポーツの価値がものすごく甘んじられてる環境ではないかと感じました。



例えば海外では、サッカーやF1などで桁違いの価値がありますけど、それに比べて日本ってなんて低いんだろうと。



いまこれだけAIで進化していても、エモーショナル感情が動かされるのがスポーツです。これに対して、日本では価値を生み出せてない。そこの再定義をしていきたいと思いました。



卓球に注目したのは、 5歳から始めて、 15歳でメダルが取れる可能性があることです。お金をかけてチャンスを与える球技として、『卓球』があると言われまして引き受けました」



就任当初は苦労の連続だったそうだ。



「いざ引き受けたら、ガバナンスも効いてないし、ディスクロージャー(情報開示)もされていない。もちろん当時は上場もしていません。チームもダントツ最下位。『スポーツビジネスは弱ければ駄目、圧倒的な存在にならないといけない』とも気づかされました」



早川氏が経営に参画した2018年は、プロ卓球リーグ「Tリーグ」創設初年度。
いきなり出鼻をくじかれる格好となったが、そこから吉村真晴(リオデジャネイロオリンピック卓球団体銀メダリスト)や張本智和(東京オリンピック卓球団体銅メダリスト)などを迎え入れて強化。

結果2020-21シーズンは、プレーオフを勝ち抜いて優勝。2024-25シーズンは1位となるなど、国内トップクラスの存在となっている(2025-26シーズンは4位でフィニッシュ)。



「アスティーダ」というIPを育てていく 琉球アスティーダ代表・早川周作氏に聞く(前編)
画像2: 「スポーツチームは弱ければダメ」


「アスティーダ」というIP



ただ、それが経営に好影響を与えたとは必ずしもいえなかったという。



「チームバリューを上げるために、『優勝できるチームを作ろう』ってことで、 実際に日本一になりました。現在の男子卓球界で一番のIPと言われている張本選手も獲得して、三年間所属※しました。



しかし、いわゆる人気選手がいるから、じゃあ興行収入またはスポンサーバリューが上がるのかって言ったらそこまででもない。確かに、勝って多少は変わったんです。でもスポンサーの反応ってそこまででもなかったんですよね。選手が持つIPを“借りて”露出価値を高めるっていうよりもまず、『アスティーダ』というIPをしっかり育てていかないと、結果的には回っていかないことに気づきました。



サッカーのようなメジャースポーツだと、放映権が絡んでくる部分もあります。卓球はTリーグもまだ出来上がったばかりで、世界にはドイツ(ブンデスリーガ)や中国(超級リーグ)やタイとかもあるんですけれども、そういったメディアバリューとかIPバリューが全くないじゃないですか。そこは辛いところですね」



※2025-26シーズンから岡山リベッツに移籍



一方で、卓球に対する情熱の入れようも間違いなくある。



「世界と戦える競技は卓球しかないと思っていますね。

我々のサイトビジョンでも『世界を獲りにいくよ』と書いています。日本人の体格で、世界との体格差に向かっていける球技ってなかなかありません。その点で、卓球は世界が取れるんじゃないか?っていう魅力があります。5歳からお金をかけずに始められますしね」



そう期待を寄せる早川氏。実際にプレイすることもあるそうだが…。



「いま小学生相手に29連敗中で、30連敗したらさすがに恥ずかしいからやらないようにしてます(笑)。でも試合を見て、やっぱり面白いなと思って、去年のある試合後、選手に30分ぐらい教えてもらったんですよ。そしたらめちゃめちゃ腰が痛くなって、トイレ行くのも辛い状態になって、人生で初めてブロック注射打ったんですよ。しばらくはやらないでしょうね(笑)」



スポーツをサステナブルに、学べるビジネスに



話は再び運営面に。経営者として課題に直面した早川氏。具体的にどういったアプローチを取ったのだろうか。



「従来のチケット収入や商品購入といったファンクラブに頼る形ではなく、卓球教室、スポーツバル、レンタカーなど『スポーツ×〇〇』の掛け算をしています。

『BtoCのマーケティング会社』といった位置づけで、スポーツのIPを活用して上り坂を作っていますね」



加えて、スポーツクラブ運営において欠かせないのがスポンサー収入だが、これは企業目線でいえば、究極の“自己満足”ともいえるものだ。



確かに地域貢献やCSRなど、“理由付け”は年々容易になってきてはいる。しかしお金をねん出するには、経営者ないし決裁権者の承認あってのものだ。であるなら、スポンサー企業にとっての明確なベネフィットがあることは至極当然のことであり、クラブ側も浪花節では通用しないことを留意しなければならない。



「そういった収入とかに頼っていると、例えば胸スポンサーが消えた瞬間に多額の損失が発生します。これは上場会社として考えれば、KPIの設定が合わない状態になります。他にも看板を出して何百万とかありますが、そういった世界観じゃなくて、応援することでPR・CSRだけではなくて、学べてビジネスにつながる。スポーツをサステナブルな形で応援できる仕組みを作ろうとしているのが我々アスティーダです」



問題意識を持つ早川氏だが、ではどのような「持続可能モデル」なのだろうか。



「例えば単純にスポーツですが、これは『短期消費』の概念ですよね。つまり看板を出しても300万とか、ユニフォームで5000万とか。契約だったら〇年。そういうのではなく、スポーツを応援することで『学べる』『インプットできる』『人脈も広がる』。

そこからビジネスも広がっていく。それができるサロン事業を展開しています。スポーツを短期消費や商品といった概念ではなく、応援できて、学べてビジネスにつながって、さすがにしっかりとスポーツに関わることができる仕組みを作りました」



ここで早川氏が言ったサロン事業が、「アスティーダエグゼクティブサロン」である。



取材・執筆:向山純平



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