誰も知らない中国調達の現実(77)-岩城真

 皆さんは、VOS(ボイス・オブ・サプライヤー)という、発想、手法をご存知でしょうか。直訳すると「供給者の声」となりますが、正に「サプライヤーの声」を聞くこと、つまりサプライヤーの側から見たバイヤー、バイヤー企業の評価を聞くことで、取引をより良い方向へ改善していく手法です。
実際にはサプライヤーがより、ありのままの評価を発せられるように、直接の利害関係のない第三者を介するなどの手法が有効ですが、「サプライーの声を聞く」という姿勢、発想は、すべてのバイヤーに必要なことです。

 バイヤーであれば、取引に係わることは、誰よりも熟知していなくてはなりませんし、実際、真剣な態度で仕事に臨んでいれば、様々な事象の意味がわかってくるものです。しかし、それはあくまでもバイヤーの側から見た事実です。VOSを私に紹介をしてくださった方の、「我々は片側から見た半分のことしか分かっていなかった」というフレーズは、そのことを端的に言いあてています。

 中国調達の世界であっても、取引の主導権と選択権を握っているのはバイヤーです。バイヤーはバイヤー企業の代表として、サプライヤーを、あるいは取引そのものを評価して、期待しているあるべき姿を伝え、懸念を質し、改善を求めて、取引が有益なものとなるよう先導しているはずです。ところが、逆のサプライヤーの側に立った視点での、期待する姿、改善の要求、懸念といったものは、案外封印されてしまっているのではないでしょうか。この一方向の視点でのコミュニケーションのため、バイヤーとサプライヤーの関係が、脆弱なものになっているのかもしれません。

 例えば、品質改善が一向に進まないサプライヤー、それはサプライヤーの技術不足といったサプライヤーだけの問題でなく、取引を魅力的なものにするためのバイヤー側の何かが欠如しているため、サプライヤーの改善へのモチベーションを低くしてしまっているのかも知れません。

 「突然のサプライヤーからの取引中止の申し入れ」というものは、以外に多いものです。その理由は様々でしょうが、VOSの発想でサプライヤーと接していたら、それは少なくとも「突然」ではなく、事前に察知できたでしょう。そして多くの場合、取引の停止そのものを回避できたのではないでしょうか。


 正直なところ私もまだ第三者にインタビューを依頼する本格的なVOSを中国サプライヤーに実施したことはありません。しかし、常にサプライヤーからの声に耳を傾け、取引のメリット、デメリットを、バイヤー側からだけでなく、サプライヤー側からの視点での検証を心がけるようにしています。(執筆者:岩城真 編集担当:水野陽子)

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