盲目の芸人・濱田祐太郎「目が見えない人は○○がいい? いや、...の画像はこちら >>

盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎さん

『R-1ぐらんぷり』第16代王者にして、盲目のピン芸人・濱田祐太郎のコラムが週刊プレイボーイで好評連載中! その名も「盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の『死角からの一撃』」。

第21回は、目が見えない人がよくされる勘違いについて。

* * *

「そんなわけないやろ!」

僕は今日、皆さんにこの言葉を大きな声で伝えたい。......といっても文章なので意味ないですけどね。たとえこの文章を書きながら大声で「そんなわけないやろ!」と叫んでも読者には伝わらないし、ご近所から苦情が来るだけですよね。

ただでさえ毎朝5時に、生クリームをマリトッツォみたいに詰め込んだトランペット、通称「トランペッツォ」を全力で吹いているというのに。まあこれは、生クリームがパンパンに詰まっているせいでほぼ音が鳴らないので、苦情が来たことはないんですけどね。

さて、なぜ僕がこんなにもあらぶっているのかというと、目が見えない人に対するイメージや思い込みに言いたいことがあるからなんです。

皆さんも、いろんなことに対してぼんやりしたイメージを持っていると思います。例えば、「港区女子はたちの悪い金持ちとばかり飲んでいる」とか「お笑い芸人はだいたい浮気している」とか。あくまでイメージですよ、イメージ。

では、皆さんは「目の見えない人」にどんなイメージを持っていますか? 僕がこれまで一番多く言われてきたのは、「目が見えない分、耳がいいんでしょう?」というものです。

いやっ、そんなわけないやろ! ああ、今日はこれが言いたかった。なぜそんなふうに言い切れるのか、いくつか僕の体験を紹介します。

おそらく多くの人は、「視覚をほかの感覚で補うことで、聴覚が研ぎ澄まされていく」と考えているんだと思います。特に僕のように、生まれつき緑内障で、子供の頃から見えないのが当たり前だった人間は、幼い頃から訓練しているはずだ、と。

でも実際には、何度か受けた聴力検査の結果はすべて平均。結果を聞いたときは、僕だって「せめて耳は優れていてくれよ」と思いましたよ。20代には、年相応にモスキート音も聞こえなくなりましたしね。

あと、とある駅の改札付近を歩いているときに「濱ちゃん」と聞こえた気がして。「知り合いが僕を見つけて声をかけてきたのかな?」と思ったけど、まったく知らない人が「麦茶」と言っていただけだったこともあります。返事しなくてよかったですよ。

極めつきは、先輩から「濱田って目が見えない分、耳とかめっちゃいいんやろ?」と言われたのがよく聞こえなかったので、聞き返したことがあります。ほら、耳がいい要素がひとつもないでしょう?

ただ、ややこしいことに、目が見えない人の中には本当に耳がいい人もいるんです。盲学校に通っていたときにも、そんな生徒が何人かいました。

廊下から聞こえてくる足音を聞いただけで誰が歩いてくるのかを当てたり、電車のモーター音を聞いてそのモーターの種類を言い当てたり。

まあ、モーターのほうは本当に当たってるかどうかこっちにはわからないんですけどね。

ただ、ほとんどの生徒は健康診断の聴力検査でも普通でした。つまり「耳がいい」というのは、視力とは特に関係のない、その人の能力なんだと思います。

目が見えない人の中のごく一部に、いわば大谷翔平さんみたいな突出した才能の持ち主がいて、その人たちの印象が強く残っているだけなんでしょう。一方の僕は、いわば〝聴力草野球〟です。

だから僕は声を大にして言いたいんです。目が見えないから耳がいいなんて、そんなわけないやろ!と。

 ●濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう) 
1989年生まれ、兵庫県神戸市出身。2013年より芸人として活動を開始し、『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ)で優勝。関西の劇場を中心に舞台に立つほか、テレビやラジオなどでも活躍。公式X【@7LnFxg25Wdnv8K5】

撮影/梅田幸太

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