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「自分が疑問を抱くことを投げかけると、考え方に距離がある人のほうが意外な答えを返してくれる。そこに取材という仕事の本当の面白さがある」と語る川中だいじ氏


「日本中学生新聞」とは2023年3月、中学入学を控えていた川中だいじさんが創刊した手書きの新聞だ。
川中さんはX(旧Twitter)などで次々に記事を投稿。その存在と発言は瞬く間に話題に。今やXのフォロワーは4.7万人だ。

初の著書『こちら日本中学生新聞』は、川中さんがいかに記者活動を始めたのか、そしてG7広島サミットや大阪・関西万博、IRカジノ、兵庫県知事選などでの取材活動をまとめた一冊。

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――高校入学、おめでとうございます。日本中学生新聞の「創刊の辞」には「中学生が作った民主的読みものである」とありますね。川中さんが政治に関心を持つようになったきっかけは?

川中だいじ(以下、川中) 僕は大阪市で生まれ育ちました。両親は食卓で普通に政治の話をするのですが、意見が違ってもけんかになったことはなく、僕も自分なりに考えを話していました。

政治に興味を持つようになったのは「選挙って面白い」と思ったからです。記憶に残る最初の選挙は19年の参議院選挙で、僕は小学校3年生でした。

選挙って非日常じゃないですか。公園の前に掲示板が立てられ、駅前では立候補者が街頭演説をする。

そんな街に起こる小さな異変が面白いと思いました。

特にれいわ新選組の安冨歩候補は「ユーゴンくん」という白馬が一緒で、とても自由な選挙運動だった。街で馬を見る機会なんてないので、子どもたちも集まっていました。そこにいた子どもも大人も楽しそうで、僕も居心地が良かったのを覚えています。

――川中さんの文章は、その場にいる人たちの表情、空気感が鮮明に描かれます。選挙の候補者やスタッフ、政治家について書くときは、良くも悪くも、その人物の顔が見えるようでした。

川中 もともと人間観察が好きなんです。電車に乗ると、向かいに座った人をじっと観察するのが小さい頃から好きでした。実は父も同じく観察好きで、電車に乗ると僕たち父子が向かいの人を見つめるので、母に嫌がられることもあります(笑)。

十人十色と言いますが、人によって発するオーラが違うので、見ているだけで面白い。人間が好きなんでしょうね。ドキュメンタリーでもひとりの人間をテーマにした作品が好きです。

例えば大島新監督の映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』は、中道改革連合の代表になった小川淳也さんを追って、ひとりの青年が政治家へと変わっていく過程が描かれていて面白かった。

――本の構成はどう考えましたか? 一般メディアと一緒に取材することもあれば、「ルポ生徒会」など、中学生の川中さんにしか書けないテーマもあるのがユニークです。民主主義を巡ってはジャーナリスト・今井一さん、川内博史衆議院議員(当時)にインタビューしていますね。

川中 書籍の担当編集さんと相談しながら決めていきました。構成を考えるのは楽しかったんですが、書くのは大変でした。

当初考えた取材リストには思想も立場も異なる、さまざまな人の名前があったんです。民主主義をテーマにした取材ではジャーナリストの櫻井よしこさんに会ってみたかった。自分と異なる意見の人の話を聞くことも大切だと思っているからです。

――本の中でも、候補者や政治家に突撃取材をしています。

川中 僕が記者として心がけているのは、安易なポジショントークにならないことです。自分の考えに近い人の意見ばかり集めて、結論ありきの取材になるのは楽しくないんですよね。

本書でも突撃取材した政治家の方々にあえて「あなたの考える民主主義」を問うています。

自分が疑問を抱くことを投げかけてみると、考え方に距離がある人のほうが意外な答えを返してくれるんです。そこに取材という仕事の本当の面白さがある気がしています。

本では「大人」が「子ども」である川中さんに対して、威圧的、無礼な振る舞いをする様子も書かれています。「傷ついた」というリアルな感情も書かれていますが、活動することが嫌にはなりませんか。

川中 嫌だとは思うんですが、へこたれないんですよ。自分でもちょっとびっくりするくらい。中学1年で生徒会長になって、次の選挙で落選したとき、再選のために活動していたんですが、あるとき「水泳部は全員、おまえのことが嫌いだぞ」と言われたんです。そのときアドレナリンがあふれました。「じゃあ水泳部全員を味方にしよう」って。

「嫌い」と思う人は、少なくとも僕を認識してくれている。だから関係性を変えていけばいい。何をしたか細かくは忘れちゃいましたが、今では水泳部とはすごく仲がいいです(笑)。

――一方、学校内で政治の話をして先生に注意されたり、ビラ配りに参加して大人に怒鳴られたりしたことも書かれています。

川中 小学校では、何度も先生に呼び出されました。でも「子どもの権利条約第12条」には子どもであっても自分に関わることについて意見を述べる権利があり、その意見は尊重されるべきという「意見表明権」が明記されています。生活に直結し、切っても切り離せない政治について、子どもが意見を述べることの何が問題なのでしょうか。

選挙取材を続けていても感じますが、子ども相手に横柄な態度を取ったり嘘をついたりする大人もいれば、対等に丁寧に接してくれる大人もいる。子どもに対する向き合い方ひとつに、その人の人間性がはっきりと表れるのだと実感しています。

――楽しげな雰囲気の19年の参議院選挙で始まった本は、日本中が注目した24年の兵庫県知事選で締めくくられています。

川中 実は取材活動をしていて、唯一「会いたくない」と思ったのが、この選挙のときの立花孝志候補でした。そもそも自分が当選することを目的とせず、デマを含んだ言説を演説する候補にはどうしても近づきたくなかった。ただ、これもまた記録に残すべき選挙だと思い直し、取材に足を運びました。

振り返っても、取材活動の中で抵抗感があったのは、あのときくらい。基本的には、人と会って話すことが大好きなんです。

候補者の人柄を自分の目で確かめ、その地域で暮らす方々に情報を共有することには、大きな意味がある。

学生ながらに苦労も多いですが、やはり取材は楽しい。この好奇心と衝動を大切にしながら、これからも現場を走り回り、皆さんに記事を届けていきたいですね。

●川中だいじ
2010年生まれ、大阪府出身。「日本中学生新聞」記者。小学3年生のときに政治に関心を持ち、23年に日本中学生新聞を創刊。「誰にも遠慮せずに書きたいことを書く」をモットーに、選挙をはじめ大阪・関西万博、森友学園問題などを取材し、SNSやYouTubeで発信。雑誌やウェブメディアへの寄稿も多数。25年春より、テレビ大阪の公式YouTubeチャンネル『大阪NEWS【テレビ大阪ニュース】』内の番組「中学生記者・だいじの対談クラブ」で聞き手を務めた

■『こちら日本中学生新聞』
柏書房 1980円(税込)
メディア最注目の"中学生記者"が権力に切り込む本格ルポルタージュ。取材対象は外務省、大阪・関西万博、IRカジノ、そして混迷を極めた兵庫県知事選――「日本中学生新聞」創刊以来、社会問題の現場に足を運び、粗削りながらも自分の言葉で取材と発信を重ねてきた川中だいじ。本書では取材の記録だけでなく、現場で感じた手応えや迷い、葛藤も描き出す――ひとりの記者が現場に立ち、民主主義を問い続ける、かつてないノンフィクション

既成概念に縛られない若き新鋭記者の奮闘から民主主義を問い直す! 『こちら日本中学生新聞』(著:川中だいじ)

取材・文/矢内裕子

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