セ・リーグ6球団による理事会が4日、都内で行われ、2027年シーズンから指名打者(DH)制を採用すると発表した。先発投手が降板後、DHで出場できる「大谷ルール」の適用も承認された。

DH制は攻撃時に、投手に代わって打撃専門の打者を使える制度。現在はメジャー、韓国など世界の主要リーグの他、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)などの国際大会でも実施されている。数少ない不採用のリーグだったセが、大きな変革期を迎える。

 時代が、大きく変わる。セが27年からDH制導入を決めた。先発投手が降板後もDHとして出場できる通称「大谷ルール」も採用される。鈴木清明セ・リーグ理事長(広島)は「新たなセ・リーグの時代に挑戦する時期が来た」とした上で「アマチュア球界の動きは注視していた。我々も決断するべきじゃないかという判断です」と語った。導入を27年からとしたのは、編成面を考慮したため。来季は猶予期間とした。

 約10年にわたって、水面下では検討しながら実現しなかった。阻んできたのは「9人野球」の重みや伝統を守るべきだという意見があったからだ。

だがWBCなどの国際大会で実施され、メジャーでも不採用を貫いてきたナ・リーグが22年に導入。韓国など各国の主要リーグも採用しており、大学野球も来春から全日本大学連盟に加盟する全27連盟でDH制を導入することが決まった。さらに日本高野連がこのほど、来年センバツからの導入を発表した。高校野球が続き「日本高野連が採用したのは大きなインパクトだった」と同理事長。採用への動きが一気に加速した。

 DH制のメリットは打撃に秀でた選手を起用できるだけではない。守備の負担が軽減されれば、ベテラン打者の寿命も延びる。打席に立たないことで、投手はさらなるレベルアップが期待できる。実際にパが75年に導入後、投手の完投数は6球団の合計で前年の197から302に増えた。打席での代打もなくなるため、先発の投球回が増える可能性が高い。投球だけに集中した結果、先発投手が育ちやすい土壌ができる。

 巨人・星理事は「国際的な潮流というか、一定程度のルールをそろえていくことは、野球全体のレベルの底上げには必要」とコメント。

巨人の戸郷翔征投手は「僕ら投手のけがのリスク(回避)が一番ですし、投球に専念できると思う。セ・リーグの伝統的なピッチャーが打って守る醍醐(だいご)味がありましたが、一ついい方向にいくこともあるのかなと思います。野球が面白くなることが一番」と歓迎する意向を示した。

 打撃力を生かした選手の出場機会も拡大するため、野手も育成できる。より攻撃的な展開が望める上、ドジャース・大谷翔平投手のような二刀流が生まれやすい土壌もできた。今季の交流戦は63勝43敗2分けとパが3年連続17度目の勝ち越し。ついに一歩を踏み出したセ界に、どんなドラマが生まれるか。(長井 毅)

パ導入後 完投も安打も増

 ◆パ・リーグのDH制導入前と導入後 パ・リーグは75年からDH制を導入。74年(導入前)にはリーグ全体で197だった投手の完投数が75年に302と飛躍的に増えた。また、打者のデータも打率が7厘上昇し、得点が65、安打が384、本塁打が23、打点が74といずれも増加。敬遠が140から97と激減し、三振も1年で406少なくなった。

◆DH制によって期待される変化

★ダイナミックな試合増…切れ目ない打線で得点力アップ

★投手力アップ…9人の打者と対戦。

代打を出されにくく投球回増加

★投手故障リスク減少…打席に立たず死球などのリスクなし

★野手の故障リスクも減少…DHの有効利用で疲労分散&守備の負担減

★出場機会アップ…スタメン野手9人。雇用機会増で新たな人気選手生まれる可能性も

★強打のスター誕生…打撃に特化した選手、外国人を起用可能

★パ・リーグとの格差減…上記した投手のレベルアップなどの理由で相対効果で打者も向上。セ・パのレベルが均衡に

◆通称「大谷ルール」

 先発投手が、降板後もDHとして出場可能なルール。22年の米国に続き、日本では翌23年に採用。二刀流の大谷翔平が降板後、DHで出場していることが多いため「大谷ルール」と呼ばれる。

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