◆JERA セ・リーグ 巨人5―2ヤクルト(5日・東京ドーム)

 流れを変える強烈な弾道だった。右翼席に伸びる白球を見つめ、リチャード内野手(26)はバットを高々と掲げて走り出した。

7回2死。カウント1―2から、ランバートの153キロ外角低めを捉えて4号同点ソロ。打球速度179キロの超高速逆方向弾に「腹を決めていた。走者がいなかったし、僕が安打を打っても各駅停車。次が(門脇)誠と考えると長打が欲しい。長打を打てたらいいな、と思っていた」とうなずいた。

 指揮官との“約束”が勝負どころで果たされた。試合前練習で、右中間方向へのアーチを放つと、阿部監督から「試合でやれよ!」と、ゲキを飛ばされた。その数時間後、注文通りの一発を逆方向へ。「僕も思ってました。『試合で打てよ』って。そんなもんですよ、毎日。

練習から打って、試合で打てんからなあ…って」。リチャード節全開で、チームを救ったアーチを振り返った。

 思わぬところから劇弾につながるヒントを得た。同学年の相手4番・村上の打撃を一塁の守備位置から観察。6回の守備で村上が四球で一塁に来た際に、思い切って聞いた。「(村上は)こうじゃないかな、と思っていることを聞いてみた」ところ、答えは“イエス”。内容は伏せたが、イメージが出来上がった。「俺もやってみようかな、みたいな。ヒントもありながら(本塁打の打席で)試した」。打率1割台の苦境を打破しようともがく姿勢が、結果に結びついた。

 ベンチに戻ったリチャードから力強いハイタッチを受け、右肩を痛めたようなそぶりを見せていた阿部監督は「あれ(本塁打)があるんでね、あの数字ですけど使いたくなっちゃう。素晴らしい打撃だった」とたたえた。

指揮官の期待に“一発回答”した大砲候補は、「感謝ですね。今日だって(増田)陸がいたりする中で使ってもらっている。何とか結果で応えていきたい」と力を込めた。

 勝負の9連戦を逆転勝利でスタート。チーム、そしてリチャード自身にとっても勢い付く1勝となった。「9連戦は長いので、疲れが来ないかちょっとおびえているんですけど。がむしゃらにやるだけ」。底知れぬパワーを秘める“飛び道具”が、阿部巨人に必要な戦力になってきた。(小島 和之)

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