◆第107回全国高校野球選手権大会第2日 ▽1回戦 開星6X―5宮崎商=延長10回タイブレーク=(6日・甲子園)

 2時間47分に及んだ激戦をサヨナラで制し、開星・野々村直通監督(73)が14年ぶりのお立ち台に立った。開口一番、「だんだん」と島根の方言で“ありがとう”と感謝。

同校と自身の甲子園通算4勝目に「よう、やりました。感動しました」とナインをたたえた。

 4回に3点差を追い付かれた。最低でも5イニングを残す中、島根大会は救援で計8イニングのみ登板した遊撃手・持田聖純(せじゅん)にマウンドを託す。任された背番号6が6回3安打2失点9奪三振と踏ん張った。「最後まで、よく持った。派手な子じゃないですけど、魂が宿っていると感じた」

 10回無死満塁、途中出場の前田翔太の中犠飛で、代走を託した松尾直和が「足には自信がある。自分の足で決めてやる」とサヨナラの生還。攻守に“神采配”を見せた野々村監督だったが、タイブレークには「私は全然、興味なくて。そうならない試合を(したい)。子どもたちがいろんなケースを想定して一生懸命、練習していた」と手柄は全て選手に譲った。大会規定でこの回を逃せば継続試合だったと聞き「よかった~。

応援団帰ったら(すぐには再度)来れないですよ、島根から」と安どした。

 88年の同校野球部創部(当時は松江一)から率いていたが、2010年センバツで21世紀枠の向陽(和歌山)に敗れ「末代までの恥」、「腹を切りたい」などと発言し辞任。11年に復帰し、12年3月に定年退職、監督退任した時を「あの時、俺は死んだと思ってたから」と振り返る今大会最年長監督。抽選会は熱中症で欠席したが「こんな試合をしてくれたら、暑さ忘れますね」。黄色のメガホンをたたき、孫世代とともに戦い抜いた。

 初の甲子園連勝へ、次は22年夏覇者の仙台育英(宮城)戦。「大横綱ですから。うちは、ふんどし担ぎで。全て力を出し切って玉砕してくれたらいい」と“カリスマ監督”。まだまだ聖地を沸かせる。(瀬川 楓花)

 ◇野々村監督の経過

 ▽10年3月 センバツで敗戦後「末代までの恥」発言。3日後に辞任

 ▽11年4月 監督に復帰し、夏の甲子園で1勝

 ▽12年3月 定年退職で監督も退任

 ▽12年4月~ 元美術教師の腕前を生かし、松江市内で個人ギャラリー「にがお絵&ギャラリーののむら」を展開。

教育評論家として講演やテレビ出演など奔走

 ▽20年3月 監督再就任

 ▽25年8月 甲子園で14年ぶり4勝目(夏3勝目)

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