◆JERA セ・リーグ 巨人2―0ヤクルト(6日・東京ドーム)

 2023年ドラフト2位の巨人・森田駿哉投手(28)がヤクルト戦でプロ初先発初勝利を挙げた。初回、内角球を3連投する強気の攻めで村上を空振り三振に仕留めるなど、6回2安打無失点。

3回に同期入団の泉口友汰内野手(26)が中前適時打を放ち、同学年の岸田行倫捕手(28)が好リードで引っ張るなど、ナインも奮闘した。チームは3連勝で勝率5割に復帰。7日は日米通算199勝目を目指す田中将大投手(36)が3か月ぶりに先発する。

 まばゆいフラッシュと歓声を浴びながら、森田は東京Dを見渡した。プロ初先発で6回2安打無失点、4奪三振の快投を披露してプロ初勝利。「昨年、何もできなかったので、今年は、と思って。ここでしっかり一つ結果を出せて良かった」と、大事そうにウィニングボールをポケットにしまった。

 強打者に一歩も引かなかった。初回先頭打者が味方の失策で出塁。プロ初登板だった7月31日の中日戦(バンテリンD)では、味方の失策からプロ初黒星を喫していたが、今度は違った。「自分の意図した球を不安に思うことなく投げられた」。2死二塁、村上に内角ツーシームを3連投。

最後はスライダーで空振り三振に斬った。村上を2打数無安打に封じ、阿部監督も「一番いいボールで勝負して、三振を取れた。いい自信にしてほしい」と目を細めた。最速149キロの直球に変化球を効果的に織り交ぜ、わずか2安打で記念の1勝目を手にし、次回先発も確実にした。

 小学1年から野球を始め、「ロッテのベニーが好きだった。名前的にかっこいいから」と、不思議と助っ人外国人に魅了された。小学校の卒業文集には「甲子園に行きたい」と記し、富山商3年夏に聖地へ。エースとしてベスト16に導き、大会NO1左腕の称号を手にした。ただ、どんな時でも謙虚だった。「井の中の蛙(かわず)だと思ってやってきた。都会には、もっとすげぇやつがいっぱいいる」

 現実は想像よりもっと厳しかった。法大1年夏に左肘に痛みが走った。

疲労骨折で保存療法を選ぶも痛みは引かなかった。不安が募る中、2年時に休暇を利用し「カーショーが見たい」とドジャース戦を見に米国へ。「自分の小ささを感じた」と最高峰に触れ、やる気がみなぎった。ロバーツ監督には「頑張れ」と声をかけられ、サインをもらって身震いした。2年冬の手術を経て4年春に復帰。ホンダ鈴鹿で5年もの経験を積み、26歳で夢だったプロの扉をこじ開けた。

 巨人入り後もけがに泣いた。1年目のキャンプで左肘を痛めたが、「起こったことは仕方がない」と前を向いた。左肘の手術を受け、同期が1軍の舞台に立つ中、自分だけ立てずにいたが、折れなかった。誰よりも早く練習を始め、薄暗いG球場室内で一人黙々とやり投げやトレーニングをした。「高校の時から10年間ぐらいずっと続けてきたのは自信になっている」。2度の手術を不断の努力で乗り越え、大きな白星にたどり着いた。

 

 富山から駆けつけた両親や友人の前でつかんだ1勝。「つらい時も、温かい言葉をかけてもらった。励みになりましたし、自分が少しずつ結果を出して恩返しできたら」。28歳5か月。苦労の先に手にした勝利は格別だった。(水上 智恵)

 ◆森田 駿哉(もりた・しゅんや)

 ▽生まれ…1997年2月11日、富山県富山市。28歳

 ▽サイズ&投打… 185センチ、88キロ、左投左打

 ▽球歴… 小学1年から光陽アスレチックスで野球を始め、富山ボーイズでプレー。富山商では3年夏に甲子園出場。2014年にはU18アジア選手権日本代表

 ▽故障との闘い…法大では1年で開幕投手を任されるも同年夏頃に左肘を痛め、2年冬に手術。復帰は4年春。ホンダ鈴鹿に進んで5年間を過ごしたのち、23年ドラフト2位で、巨人最年長タイとなる26歳でプロ入り

 ▽巨人でも故障に泣く…23年ドラフト2位で巨人に入団。1年目はキャンプ1軍スタートも左肘炎症のため途中離脱。

24年4月下旬には左肘関節鏡視下クリーニング術を受けるなど、1年目は1軍登板なし

 ▽球種…ストレート、スライダー、ツーシーム、フォーク、チェンジアップ

 ▽趣味…サウナ

 ▽ゲン担ぎ… 試合前にモンスターを飲む

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