◆第107回全国高校野球選手権大会第2日 ▽1回戦 金足農0―1沖縄尚学(6日・甲子園)

 もう、こらえきれない。試合後の応援団へのあいさつ。

アルプス席に仲間の姿を見つけた吉田大輝は、膝から崩れ落ちて泣きじゃくった。「球場を出るまで我慢しようと思っていたけど、本当に申し訳なくて」。取材中も目は赤いままだった。

 出番は5回2死三塁。大きな拍手を背にマウンドへ走った。大阪入り後の7月下旬の練習で右太ももを痛めた。中泉一豊監督(52)は「将来を考えて」と先発回避を決めた。斎藤遼夢、佐藤凌玖の無安打リレーを受けて二ゴロに仕留めて火消しに成功すると、6回には自己最速を更新する147キロ。だが、ギアを上げた7回2死一、三塁でチェンジアップを阿波根裕に左前へ運ばれた。失点はこの1点だけ。「最速は出ても勝たなくては意味がない。0点で回してくれたのに申し訳ない」と涙した。

 兄・輝星(現オリックス)がエースとして旋風を起こして準優勝した18年。小学校5年生だった大輝はアルプス席で応援した。7年後、兄超えを目指して2年連続で聖地のマウンドを踏んだが無念の初戦敗退。それでもアルプス席で観戦した同校野球部OBでもある父・正樹さん(49)は「ありがたいですね。本当にうれしいです」と愛息たちに感謝していた。

 兄と比べられながら3年間を過ごしたが、目指すのは兄と同じ舞台。「正直、嫌なことしかないけど、弟である以上はそれに恥じないプレーを見せていかないといけない。もっとレベルアップしていきたい」と吉田。次のステージで大きく輝き、兄を超える。(秋本 正己)

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