◆JERA セ・リーグ 巨人2―3ヤクルト(7日・東京ドーム)
巨人がヤクルトに逆転負けし、連勝が3で止まった。日米通算199勝目を狙った田中将大投手(36)は約3か月ぶりの1軍マウンドで移籍後最多の104球を投げ、5回2/33安打2失点の力投。
身を乗り出してベンチで声をからした。日米通算199勝目が消えた後も、田中将は勝負師の顔を崩さなかった。2―1の6回2死。味方失策で出した走者を二塁に置き、10球勝負の末に長岡に四球で降板。直後に同点打を浴びた船迫を出迎え、ねぎらう姿があった。「回途中で降りてしまい悔しい。四球に行き着くまでのカウントの作り方で苦しくしてしまった」。5回2/3で3安打2失点(自責1)。責任を負ったが、98日ぶりの熱投には進化があった。
日焼けした顔で3か月ぶりに帰ってきた。初回わずか6球の立ち上がりに覚悟がにじんだ。2回は村上を外角低めスプリットで空振り三振。同じ9連戦中の出番だった前回5月1日の広島戦(東京D)は3回KO。「春先とは違う手応えを当然感じて上がっていた」と3回までパーフェクト。「やってきたことの積み重ねが出た」。2軍での日々は結果となって表れた。
勝ちへの執念はバットにも乗り移った。3回先頭の第1打席、石川の低め変化球を捉えてチーム初安打となる左中間二塁打。自身4年ぶり、移籍後3打席目での初安打だった。長打は楽天時代の13年以来12年ぶりで、先制の起点になった。5回無死二塁でも13年以来の犠打を初球で成功。
炎天下で流した汗は無駄ではなかった。桑田2軍監督とは低めと両サイドの制球力を、久保巡回投手コーチとは角度、打ちづらさを求めたフォーム修正に励んだ。自身の感覚も大事に試行錯誤を繰り返していたが、7月下旬から目線を変えずプレート後方に左足を引く始動に戻した。久保コーチと2月の宮崎で取り組んでいた“原点”だ。5回2死満塁でも狙い通りにスプリットを沈めて内山を空振り三振。「メカニックが良くなったから、球が良くなった」とうなずいた。
6月25日の2軍DeNA戦は5回持たず14安打。「打たれた夜、次の日の朝は気持ちも落ちる。朝早く起きて『球場に行っきたくねえな』って思うこともある。ただ、やらないと。戦い続けないと」。
4四球に阿部監督は「四球も多かった。慎重に投げているのは分かったけどね。だけど頑張ってくれた」と目を向け「まだ何も。これから」と次回を未定とした。それでも4か月ぶりの白星へあと一歩。5月からの変ぼうを「驚きはない」と冷静に受け止めた。降板時は帽子のツバに触れて大拍手に応えた。東京Dの中心にはこの日、間違いなく背番号11がいた。(堀内 啓太)