◆第107回全国高校野球選手権大会第3日 ▽1回戦 広陵3―1旭川志峯(7日・甲子園)
3年ぶり出場の旭川志峯(北北海道)は、広陵(広島)に敗れ、1993年以来32年ぶりの勝利を逃した。1番・左翼でフル出場した熊野瑠威外野手(3年)は、5回の第3打席で意地の1安打を放ち、憧れ続けた甲子園の大舞台で野球人生を終えた。
静まりかえった聖地を眺めながら、熊野はグラウンドに向かって頭を下げた。「やりきった。いや、もう少しやりたかった」。時間の経過とともに、満足感と未練が交錯した。
対戦相手の広陵が、大会直前、1月に野球部員の間で暴力を伴う不適切な行動があったことが発覚。暴力事案がSNS上で拡散されるなど世間からも注目を集める試合となったが、「正々堂々戦うだけだと思っていた」と熊野。前夜は相手エース・堀田の動画を何度も見返して準備してきたといい、「(広陵は)昔から憧れていたチーム。強いのも知っていたので、だからこそ何も考えないで、自分もチームも試合に集中すると決めていました」。邪念を捨て、この一戦に全てを捧げた。
将来は総合格闘家を目指しており、野球は高校で引退する。世界最大の総合格闘技団体「UFC」で世界一を夢見る18歳は「(野球は)良くも悪くも楽しかった。野球がなかったら、こんな思い出もなかったし、仲間とも出会えてなかった。