◆JERAセ・リーグ 中日8―3阪神(7日・バンテリンドーム)

 中日のドラフト1位・金丸夢斗投手(22)が、10度目の先発でようやくプロ初勝利をつかんだ。序盤に失点が続いたが、8回6安打3失点。

150キロ超の直球を軸に、多彩な変化球で的を絞らせなかった。ここまでは援護に恵まれずに苦しんだが、12安打8得点と味方打線も発奮し、首位・阪神に快勝。チームは連敗を3で止めて、再び4位に浮上した。

 大きく息を吐くと、ようやく笑みがこぼれた。「勝利投手は金丸」のアナウンスに球場は大きな拍手に包まれた。「重い。10試合分の思いが詰まってる」。金丸は、念願のウィニングボールをうれしそうに見つめた。

 先制点をもらった直後の2回に中川に1号同点ソロを献上。4回にも佐藤輝に29号ソロを被弾するなど、4回までに3点を失った。だが、6~8回はいずれも3者凡退と修正。8回にも151キロを計測するなど、4球団競合の片りんを見せつけた。

「直球とスプリットが決まっていた。要所で抑えられた」とうなずいた。

 長かった―。初登板から3か月。10度目の先発でやっと白星を手にした。7月8日の巨人戦(山形)では勝利投手の権利を持って降板するも、チームは9回1死からサヨナラ負け。同21日のDeNA戦(バンテリンD)も8回1失点で負け投手になった。同31日の巨人戦(バンテリンD)では6失点。真っ赤にした目をタオルで抑えた。

 天真らんまんな性格。明るく振る舞ったが、ふと本音をこぼした。「複雑だった」。

昨年3月に共にアマチュアから侍ジャパンに選出されたヤクルトのドラ1・中村優が7月3日に2度目の登板で初勝利を飾った。岐阜の下呂温泉に旅行するなど、プロ入り前から親交があった2人。結果は必ずチェックしている。「優斗の初勝利はうれしかったけど、自分の方が先に1軍で投げてたから悔しい気持ちもあった」と吐露した。

 それでもつらい現状を前向きに捉えた。「1点の重みに、1年目から気づけてよかった。簡単に勝ててしまったら、そうは思えなかった」。悔し涙から1週間。この日の目は輝いていた。

 夢斗の名は「夢に向かって、ひたむきに努力できるように」という意味を込めて、付けられた。「どこまで勝てないのかと思った。ここからがスタート。

球界を代表する投手になれるように頑張りたい」。不安を乗り越え、つかんだ1勝。夢への挑戦はまだ始まったばかりだ。(森下 知玲)

 金丸の父・雄一さん(先発した全10試合を観戦。プロ初勝利に)「うれしい。いろんな球場に見に行くことができてプレゼントみたいな気持ち。テレビで見てる選手に立ち向かっていく姿に勇気と感動をもらった」

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