◆第107回全国高校野球選手権大会第4日 ▽1回戦 横浜5―0敦賀気比(8日・甲子園)

 今春センバツ王者の横浜(神奈川)が敦賀気比(福井)との初戦を制し、松坂大輔を擁した1998年以来、27年ぶりの春夏連覇へ快勝発進した。先発の最速152キロ右腕・織田翔希が7安打完封。

甲子園大会での横浜の2年生による完封勝利は、73年春のV腕・永川英植以来52年ぶりで、夏では初の快挙となった。局地豪雨の影響で1時間7分の中断もあったが、影響を感じさせない投球で、松坂らも成し得なかった偉業を達成した。

 ぬかるむマウンドも関係ない。織田の目が野獣と化した。9回1死一、二塁。ミットをにらみ、右腕を振った。直球で遊ゴロ併殺に仕留める。7安打完封。初戦突破だ。力強く拳を握り、笑顔を見せた。横浜の2年生が甲子園大会で完封勝利を飾るのは、52年ぶりだ。

 「チームの勝利に貢献できて良かった。

夏、投げてこそ本物。1回から9回まで幸せなマウンドでした。100%楽しめました」

 本来は前日7日の午前8時開始だった一戦。雨予報でこの日夕方に変更された。直球の最速は149キロ。チェンジアップを沈め、カーブも操り緩急で幻惑した。打ってもすごい。2点リードの2回2死一塁、外角高め直球を捉え、右中間に適時三塁打を放った。「思い切り振った結果です」。打撃に優れた大先輩の松坂大輔氏も甲子園に駆けつける中、投打で“横高エース道”に恥じない活躍を見せた。

 4回裏には降雨が激しくなり、1時間7分の中断。アンダーシャツを重ね着し、タオルを羽織り、体を冷やさないように努めた。

雨で重くなった黄色のグラブから茶色のものに替えた。

 試合前には村田浩明監督(39)の「お前がこの試合を絶対に投げきって、チームに勢いを持ってこい」との言葉に心を熱くした。三塁の為永皓や外野の奥村頼人、阿部葉太ら3年生が好守を連発し、もり立てた。「終盤、気の弱さがあった」と織田。指揮官は言った。「3年生が頑張っているのに、お前がしっかりしないと。松坂さんなんて200何球投げて次の日投げて、弱さなんか一つも見せてないぞ。松坂さん超えるんだろ」。目が覚めた。ほとばしる気合を白球に込めた。

 織田の127球には村田監督も「難しい環境の中で一番伸びる。成長できる試合だと思った」と確かな手応えを口にした。

雨ニモマケズ、守り抜いた聖地のマウンド。過酷な試練で最高の結果を残し「恵みの雨だと思います。成長できたと思います」と織田。本物を目指して、挑む夏。新たな怪物伝説はまだ、序章に過ぎない。(加藤 弘士)

 ◆織田 翔希(おだ・しょうき)2008年6月3日、北九州市生まれ。17歳。足立小1年で野球を始め、3年から投手。足立中では軟式野球部。高校では1年春の県大会からベンチ入り。同秋の関東大会準々決勝の東農大二戦で、公式戦初完投初完封。明治神宮大会でも準々決勝で明徳義塾を2安打完封。

今春センバツでは奥村頼人との二枚看板で優勝に貢献した。185センチ、76キロ。右投右打。

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