◆第107回全国高校野球選手権大会第4日 ▽1回戦 綾羽6―4高知中央=延長10回タイブレーク(8日・甲子園)

 春夏を通じて初めて甲子園の土を踏んだ綾羽にドラマが待っていた。1点ビハインドの8回にエース藤田陸空(3年)を投入。

3者凡退で流れを呼ぶと、9回2死満塁から代打・川中雄人(3年)の遊ゴロが失策を誘い、同点に追いついた。9回裏は失策から迎えた1死一、三塁の大ピンチを藤田が死守。タイブレークの10回に一挙4点を奪った。無死一、二塁で最初の打者となった主将・北川陽聖(3年)が右中間を真っ二つ。2点三塁打で一気に波に乗った。

 千代(ちしろ)純平監督は試合前に「狙えるのなら複数得点を狙う攻撃も」と予告。中盤も簡単にはバントを使わず、多彩な戦術を繰り出したが「1、2点では勝てないし、そういうチーム作りをしてきたので」と最後まで貫いた。午後9時58分に始まった9回の攻撃前には回の攻撃前には全員で夜空を見上げ「甲子園でお月さんを見られるなんて、幸せだぞ」。そこからのドラマ。滋賀大会準決勝でも9回の逆転で強豪・近江を破った底力を発揮した。

 午前と夕方の2部制の第4試合で、プレーボールは史上最も遅い7時49分。史上初の10時台となる46分にフィナーレを迎えた。

試合前から継続試合となる可能性を伝えられていた中で「時間が理由での継続試合は経験がないので考えず、むしろ自然にやれました」と指揮官。10時が判断の基準となっていたが「先のことは考えず、常に『この回に決着をつけるぞ』という気持ちでやっているので」と集中した。9回に追いついた時点で10回までの実施を提案されたが、選手には何も伝えずにプレー。「打順が1番から。やっとツキが向いてきたなと、月を見ながら思いました」と笑顔で振り返った。

 綾羽が野球部の強化を始めた04年に入学し、主将を務めた千代監督。「きのう順延になり、きょうも遅い時間なのにアルプスが満員でうれしかったです。校歌は感無量。初めて味わう幸せな気持ちです」と浸った。

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