好調のバットでセ・リーグ首位打者争いを続ける巨人・泉口友汰内野手(26)が、遊撃守備でも輝きを放っている。平均的な野手が守る時と比べてどれだけ失点を防いだかを示す守備指標「UZR」では、12球団の遊撃手でトップの数値をマーク。
抜けたか、と思った打球の先にことごとく泉口がいた。8月29日の阪神戦(甲子園)。2回に阪神の坂本が放った三遊間へのライナーを、横っ跳びで好捕。9回2死でも中前へ抜けそうな二遊間へのゴロに追いつき、流れるような一塁へのストライク送球で最後のアウトをつかんだ。いずれも鋭い反応から生まれたプレーだった。
8月が終わり、レギュラーシーズンは残り23試合となった。4月から正遊撃手に定着した泉口の守備率9割7分7厘5毛は矢野(広島)に次ぐ2位。野球データの分析を手がける「デルタ社」によると、平均的な選手が守った時と比べて失点をどれだけ防いだか、守備での貢献度を表す守備の指標の「UZR」は12球団トップの「8・7」をマークしている。「身体能力がすごく高いわけではない」と自己分析する男に、守備で大切にしている考え方を聞いた。
「ピッチャーが打ち取ってくれた打球を確実にアウトにする。
地道な努力の結晶だ。古城内野守備コーチが「あれが全てのプレーにつながっている」と評価するのが、打球に対する1歩目の反応。鋭い出足で打球に“先手”を打てていることが捕球、送球の安定性を生んでいるという。その前段階として「(捕手が出す)球種のサインを見てシフトをとって、打球をイメージしています」と泉口。失策数こそリーグ最多の10だが、守備機会は446と矢野の364を大きく上回る。青学大時代から磨いてきた先読み力が、他球団の遊撃手を上回る守備範囲の土台となっている。
7月以降、一塁での出場が続く大城卓は「送球に安心感がありますし、すごく捕りやすい」。二遊間でコンビを組む吉川も「球際、スローイングも安定感があります」とうなずいた。
昨季ゴールデン・グラブ賞を初受賞した吉川も二塁で12球団2位のUZR8・8をマークしており、球団史上初となる二遊間でゴールデン・グラブ賞を同時獲得する可能性もある。29日阪神戦で好守を連発しても「昨日、タイムリーエラーしてしまっているので」と笑顔はなかった泉口。その慢心のない姿勢が、進化につながっている。(内田 拓希)
◆UZR(Ultimate Zone Rating=アルティメット・ゾーン・レーティング) 同じ守備位置、守備機会で平均的な選手が守った時と比べて失点をどれだけ防いだか、守備での貢献度を表す守備の指標。