意地でも本塁は踏ませなかった。日本ハム・達孝太投手(21)は6回2死一、二塁、安田を中飛に仕留めると、右手でグラブをたたいて爽やかな笑顔を浮かべた。
今季は5月にローテ入りすると破竹の6連勝。22年のデビューから全て先発で7連勝は大谷(現ドジャース)をも上回るプロ野球記録となった。しかし、その後は4試合連続で白星なし。「絶賛プロの壁にぶち当たり中」という達を奮い立たせたのが、新庄監督の何げない一言だった。
前回登板の8月26日の西武戦(ベルーナD)。6回まで2安打無失点も7回に4連打を食らい2失点で降板した。
勝利から遠ざかった期間は「寝てたら打たれるイメージしか湧かなかった」と悪夢が何度も再生された。前日3日は、宿舎からZOZOまで約10分の道のりを「『白星、白星』言いながら歩いてきた」と言うほど勝ちに飢えていた。
新庄監督は達の強気な発言に、「今日0点で抑えてどんなマウスが出るかな」と笑った。新人王有力候補の21歳は「あと3勝。この勢いだったらいきそう」。壁を乗り越えた将来のエース候補は、しびれるV争いの中で着実に階段を上っている。(川上 晴輝)