◆JERA セ・リーグ 中日1―0巨人(5日・バンテリンドーム)

 山崎は思わず「あ~」と声を出してスタンドに飛び込む打球を目で追いかけた。0―0の5回。

ここまでパーフェクトに抑えていた右腕だったが、1死からボスラーに4球目のカットボールを捉えられた。打球は右翼席へ飛び込む先制ソロ。マウンドで悔しげに帽子をかぶり直した。

 打線の援護がない中、最後まで投げきり、8回85球、2安打、1失点の完投負け。セ・リーグの本拠では唯一負けなしだったバンテリンDで初被弾で初の黒星と1球に泣き「投げた感じも状態が良かったですし、ホームランの1本ですね」と何とか前を向いた。

 気合十分だった。この日を含め、残り20試合。初回先頭から回をまたぎ、4者連続で空振り三振を奪った。最速151キロを計測した直球を丁寧かつ大胆に。フォーク、スライダーなど多彩な変化球で5回1死までは完全投球。悔しい被弾は「もうちょっと高く投げようと思ったんですけど、ちょっと真ん中で、投げミスっちゃ投げミスですけど。相手がいいバッターでした」と淡々と振り返った。

一人でマウンドに立ち続けた右腕に阿部監督は「よく頑張ってくれたよね」とたたえた。

 自分らしく引っ張っている。「戸郷とか菅野さんみたいにはできない」と語るが、成績だけでなくチームにとって頼りになる存在だ。大勢は「伊織さんは関西のノリのいい兄ちゃんみたい。誕生日とか、必ずお祝いしてくれる。僕も誕生日にいろんなブランドの服を3着もらった」と面倒見の良さを明かした。現在は2軍で調整中だが、ともに手術をしてリハビリの日々を過ごした堀田も「暗い感じにならないのは伊織さんが盛り上げてくれるから。チームの太陽的な存在。僕が2軍にいても映像を見て『あの球良かった』とか声をかけてくれる」と語る。後輩たちを思いやる背番号19が一人で投げ抜いた姿はエース格としての風格が漂っていた。

 阿部監督は「明日の様子を見てからだと思います」と語りながらも、次回登板については「詰めるかもしれませんけど」と語った。苦しい戦いの中でも、切り替えて次戦に備える。

(水上 智恵)

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