◆第76回チャレンジカップ・G3(9月13日、阪神競馬場・芝2000メートル、良)

 3日間開催初日の13日、第76回チャレンジC・G3が阪神競馬場の芝2000メートルで行われ、2番人気のオールナットが、短期免許初日のジョアン・モレイラ騎手(41)=ブラジル=に導かれてインから鮮やかに1馬身抜け出し、重賞初制覇を飾った。

 “マジックマン”が帰ってきた! 直線入り口でオールナットは馬群の中。

万事休すかと思われたが、モレイラなら違う。残り1ハロンで開いたわずかな進路を逃さず、一瞬で抜け出してラチ沿いへ導いた。そこがVロード。スルスルと坂を上がり、1完歩ごとに後続を突き放した。「スペースができてからの反応が素晴らしかった」。満面の笑みで、相棒をたたえた。

 この日は9Rも快勝。今回の来日初日で、早速“マジック”をさく裂させた。今春は高松宮記念桜花賞皐月賞とG1・3勝で大暴れ。「いつも日本で乗るのが楽しみ」と、秋も無双を予感させた。

 オールナットとは初コンビだったが、高野調教師が伝えたのは、レース前に興奮しやすいという点のみ。「2000メートルはスタートがスタンドの正面」とコース形態も踏まえながら、返し馬で落ち着かせることを意識した。

高野師は「レースだけじゃなくて、ゲートインまでの持って行き方も本当に素晴らしい」とほれぼれ。「牧場も担当者も、立派な仕事をしてくれた」と、チームでつかんだ勝利に目尻を下げた。

 指揮官が手がけたG1・2勝馬ショウナンパンドラの半弟で、ゆかりのある血統。オープン入り後は〈9〉〈3〉〈6〉着と振るわなかったが、待望の初タイトルを手にした。「ようやく、持っていた力を形として出せた。もっと先、高みを見れると思う馬」と、喜びもひとしお。「いい流れを妹さんにも」と、今日のローズSに出走する半妹チェルビアットにも期待を込める。まだ4歳と前途洋々。名手が咲かせた才能の花を、さらに大きく開いていく。(水納 愛美)

 ◆オールナット 父サトノダイヤモンド、母キューティゴールド(父フレンチデピュティ)。栗東・高野友和厩舎所属の牡4歳。北海道白老町・(有)社台コーポレーション白老ファームの生産。

通算成績は12戦5勝。重賞初勝利。総獲得賞金は1億523万6000円。馬主は(有)シルクレーシング。

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