◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
入社2年目。日々の仕事でもがく中で、心に留まった言葉がある。
9月15日に30歳の誕生日を迎えた西武・与座海人投手。日本ハム戦で、野球人生では「記憶にない」というバースデー登板の機会が巡ってきた。節目を前に「今振り返ると、どのような20代の10年間でしたか」と問うと、遠くを見つめ懐かしそうな表情を浮かべた。
「ここにいる時点で恵まれている。20歳の時点ではプロに来られるような人じゃなかったので。プロ入りして8年目か…。想像していたよりも、いい20代でした」
沖縄尚学から岐阜経大(現・岐阜協立大)を経て17年ドラフト5位で西武に入団した。沖縄尚学では3年時の13年に春夏連続甲子園出場を果たしたが、背番号は「11」。甲子園出場決定もベンチから眺めた。大学でサイドスローからアンダースローに転向して唯一無二の形を作り上げ、プロの世界の扉をたたいた。
7月1日のオリックス戦では、高校時代の公式戦では投げたことがないという沖縄のセルラースタジアム那覇で、3度目の凱旋登板。「たぶん12年後に与座がここで投げているとは、誰も想像していなかったはず。
普段よりゆっくり間を空け伝えてくれた言葉は、目の前のことで精いっぱいの、23歳の私の心に染み入った。30歳の誕生日を迎える6年後には、与座のように「想像していたよりもいい20代だった」と胸を張って言えるように、がむしゃらに進んでいきたい。(プロ野球担当・大中 彩未)
◆大中 彩未(おおなか・あみ)2024年入社。今季から現職。