◆JERA セ・リーグ ヤクルト4―4巨人=延長12回=(28日・神宮)

 吠(ほ)えながら右拳を握った。巨人の大勢投手(26)が力勝負でピンチを脱した。

2死一、二塁から最後は高め157キロで内山を空振り三振。2試合を残してリーグ単独1位の53ホールドポイント(HP=救援勝利+ホールド)とした。同2位の阪神・及川(52HP)は残り1試合で上回ることができないため、最優秀中継ぎ投手のタイトルが確定した。同時に45ホールドで、12年の山口鉄也を抜いて球団新記録を樹立した。

 「個人の考えよりもチーム優先なのでゼロに抑えられてよかった。本調子で投げる試合は例年より少なかったし、皆さんに守ってもらいながらホールドを稼いできた。本当に感謝したい」

 出番は同点とした直後の8回から。危機を招いたが自慢の剛球で押し切った。心の片隅には、特別な思いもあった。今オフに同学年のヤクルト・村上がメジャー挑戦が確実。1死二塁で打席に迎えたが、ベンチが申告敬遠を選択した。「ムネがメジャーに行くという報道を見てたので、昨日の夜から日本でのラスト(対決)を楽しみというか研究して。

『どう攻めようかな』って。ですけど、僕が先頭を出したせいでああいう形(申告敬遠)になってしまった。そこは残念だった」。力と力の対決がかなわず、思わずこぼした本音だった。

 一つ、約束は守った。開幕前、阿部監督に最優秀中継ぎの獲得指令を出された。「『取れ』と言われて取れた。トレーナーさんや管理をしっかりしてくださる監督、コーチに感謝したい」と頭を下げた。逆転2位は果たせなかったが、最終カードの中日戦で「リスペクト」する田中将が登板する見込みとなった。「まだシーズンは終わってない。田中さんが投げられるので、そこでしっかり(日米)200勝のお力添えをできたらなって。準備して登板したい」

 1年目からプライドを持って守ってきた「抑え」の座をマルティネスに託し、4年目にして主戦場を「8回」へ移した今季。

ホールドだけでなく、61登板もキャリアハイ。期待に応え続けるその背中は、大きく、頼もしい。(堀内 啓太)

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