低迷する日本競泳界の新星・大橋信(17)=枚方SS=が、21日までにスポーツ報知の単独インタビューに応じた。3月の日本選手権で、五輪2大会連続2冠の北島康介(43)を超える史上最年少で男子平泳ぎ3冠を達成した。

100メートルで日本記録、200メートルは自身の世界ジュニア記録を更新。大阪・四條畷学園高の3年生が、28年ロサンゼルス五輪のメダル有力候補に躍り出た。“日本のお家芸”種目で世界記録と五輪金メダルを目指す“北島2世”が、競泳を始めた理由や世界で戦う思いなどを語った。(取材・構成=吉村 達)

 日本選手権で男子平泳ぎ最年少3冠を得ても、大橋の視線はもっと高いところにある。「全てのレースでベストが出たけど、思っていたタイムじゃなかった。うれしさと悔しさ半分半分」。200メートルは世界記録(2分5秒48)を上回るペースを刻みながら終盤50メートルで失速。今季世界ランク1位のタイムながら日本記録(2分6秒40)に0秒19届かず、「我慢しきれなかった。ちゃんと戦える実力をつけないと」と、現在は体力強化に励んでいる。

 競泳を始めた理由は「お池にはまったら、さあ大変」だった。母方の祖父母宅のそばに池があり、「落ちても溺れないように」と、家族が考えて3歳で始めた。一躍、脚光を浴びたのが、昨年7月の近畿高校選手権。

200メートルを24年パリ五輪銅メダル相当の2分6秒91で制した。169センチの小柄な体格を生かしたテンポの速さが特徴。大柄な世界トップ選手より、50メートルあたりのストロークは5~6回も多い。「小さい頃からの泳ぎ方。中学3年から高校1年くらいで自分の強みと感じ始めた」と振り返る。

 独自のフォームで記録を伸ばし続けてきたのは、日々の研究の成果だ。「参考にするのは、自分より速いタイムを持っている人」。世界記録保持者の中国・覃海洋(タン・カイヨウ、200メートル平泳ぎ)、英国のアダム・ピーティー(50、100メートル平泳ぎ)、フランスのレオン・マルシャン(200、400メートル個人メドレー)らの体の使い方を動画で細かくチェック。さらに「ここ一番での強さ、すごさがよく分かる」と04年アテネ、08年北京の五輪2大会で金メダル4個を手にした北島氏の映像も教材にしている。

 枚方SSには、梶本一花(22)、今福和志(18)の男女800メートル自由形日本記録保持者ら国内トップ選手が多数在籍する。「チームのレベルが上がってきている」と、切磋琢磨(せっさたくま)を実感。高校卒業後は東洋大に進み、北島氏ら多くの五輪メダリストを育てた平井伯昌(のりまさ)監督(62)の指導を仰ぐ予定だ。

「僕は結構前から関わってもらっている」。大学2年で迎えるロス五輪は名伯楽とのタッグで臨む。

 「一番の目標は五輪で優勝すること」。パリ五輪の後に立てた4年計画は「高校が終わる時の設定タイムが今のベストより少し遅くて。1年分くらい前倒しになっている」と順調だ。今年の山場は、覃との対決が予想される9月の愛知・名古屋アジア大会。「勝負強くなることをテーマにしたい」。世界の強豪との本気の戦いを経験しながら進化を続けていく。

 ◆大橋 信(おおはし・しん)

 ▽生まれとサイズ 2009年3月5日、大阪・枚方市。169センチ、66キロ。「肺活量は水泳選手としては少ない方。潜っていられるのは1分半くらい」。

小学3~4年にバレーボールを習っていたため、垂直跳びは約80センチ

 ▽水泳歴 小学3年から枚方SSの系列クラブで選手コース。中学1年から枚方SS

 ▽平泳ぎ自己ベスト 50メートル=26秒98(高校記録)、100メートル=58秒67(日本記録&世界ジュニア記録)、200メートル=2分6秒59(世界ジュニア記録)※いずれも長水路

 ▽自由形も速い 高校の試合では平泳ぎ以外もエントリー。「クロールは全国大会で決勝に行けるかなというくらい。バタフライは普通、背泳ぎは苦手」

 ▽趣味、息抜き スマートフォンのゲーム、ボウリングなどに友人と遊びに行くこと

 ▽好きな食べ物 ラーメン、チャーハン、ギョーザ、アロエヨーグルト、アポロ(チョコレート)

 ▽家族 両親と姉2人、兄1人

 ◆大橋の日本選手権(3月、東京アクアティクスセンター)

 ▽100メートル平泳ぎ 予選は59秒57で全体1位通過。決勝は後半から独泳し、58秒67で小関也朱篤(やすひろ)の日本記録(58秒78)を8年ぶりに更新して優勝。

 ▽50メートル平泳ぎ 予選を27秒13の全体2位で通過し、決勝は日本高校新記録の26秒98で優勝。

 ▽200メートル平泳ぎ 予選は4位通過。決勝は前半100メートルを世界記録ペースの59秒86で突っ込み、自身のジュニア世界記録を更新する2分6秒59で優勝。北島康介、立石諒、小関に続く大会4人目の3冠を獲得した。

 ◆「日本のお家芸」継承者 平泳ぎは日本競泳界伝統の得意種目だ。過去五輪で22個の金メダルを獲得しているが、平泳ぎは4泳法最多12個を獲得。1928年のアムステルダム大会、32年ロサンゼルス大会男子200メートルで鶴田義行が連覇。

36年ベルリン大会200メートルで葉室鉄夫、前畑秀子がアベックV。92年バルセロナ大会では、14歳の岩崎恭子が女子200メートルで当時の日本人最年少金メダリストに。04年アテネ、08年北京大会では北島康介が100メートル、200メートルで連覇を成し遂げた。

 ◆大橋が出場を予定する主な大会

 ▽シドニーオープン(5月15~17日、豪州・シドニー)

 ▽日本選手権(6月4~7日、東京)

 ▽パンパシフィック選手権(8月12~15日、米国・アーバイン)

 ▽ジュニアオリンピック(8月22~26日、東京)

 ▽愛知・名古屋アジア大会(9月20~25日、東京)

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