102歳で死去した佐藤愛子さんの最大のベストセラーとなったのが、2016年に出版し、17年の年間ベストセラー1位となったエッセー「九十歳。何がめでたい」(小学館)だった。

断筆宣言を取り下げ、「半ばヤケクソ」で書き始めたというユーモアあふれるエッセー集は中高年を中心に大きな共感を呼んだ。

 「もうこれ以上書くことはない。空っぽになった」。人生のすべてを出し切ったという長編小説「晩鐘」を2014年に書き終えた佐藤さんは、のんびりと余生を過ごすつもりだった。ところが、のんびりの仕方が分からず、鬱々とした日々を送っていると聞いて、連載を呼び掛けたのが週刊誌「女性セブン」の編集者だった。

 佐藤さんは「90歳を超えて週刊誌の連載をやれなんて。私を殺す気か」と難色を示したが、3か月間の説得の末に了承。佐藤さんは手書きで原稿を執筆した。50代以上の女性を中心に反響が広がり、16年に書籍化。17年には年間ベストセラー第1位に輝き、佐藤さんは「だからどうした、と毒づきたくなるのですが、たくさんの人に面白がって読んでもらったと思えば、それは素直にうれしいです」とコメントしていた。

 【17年の年間ベストセラー1位になった時の佐藤愛子さんのコメント】

 この本は、91歳のときにこれで最後だというつもりで「晩鐘」という小説を刊行して、あとは何もしないつもりでいたらウツ病みたいになって。これは困ったぞということで書き始めたエッセーなんです。

それがこんなに売れて、おかしいですよね。

 私は作家という仕事を商売と思ったことがないので、売れた、売れたというふうに表現されると、だからどうした、と毒づきたくなるのですが、たくさんの人に面白がって読んでもらったと思えば、それは素直にうれしいです。私自身、面白がることが好きだから、人が面白く思ってくれたと思うと、ああ良かったと思いますね。

 この本を読んで勇気をもらった、元気をもらったという人も多いそうですが、私は自分が思ったことを書いているだけなので、どうして読んだ人が勇気が湧くんだか私自身にはわからないんです。私は昔から同じように好き勝手書いてきて、かつては顰蹙(ひんしゅく)を買ったり悪しざまに思われたりしていましたから。それが時代が変わって、顰蹙じゃなくて勇気となった。日本人がずいぶんと変わったんだなぁと思いますね。

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