ラグビー・NTTリーグワン2025―26のプレーオフ(PO)は23日、秩父宮ラグビー場で東京SG―BR東京による準々決勝から幕を開ける。リーグワン初のPO進出を決めたBR東京は、前身のトップリーグ(TL)を通じて初の4強入りを目指す。

チームの攻撃のタクトを振るのは、SO中楠一期。27年W杯オーストラリア大会に向けても期待される司令塔だ。今季は得点ランク2位と躍進。充実のシーズンを過ごす25歳が、負けたら終わりの戦いに挑む。

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 ”慶応ボーイ”が、チームを史上初の4強に導く。レギュラーシーズン(RS)5位で初めてPOに進んだBR東京は、司令塔に入団3季目のSO中楠を置く。RS全18試合を初めて完走し、チームをけん引する25歳。「一発勝負。初めての経験でワクワクしているし、結果を求めていきたい」と、冷静な瞳の奥に闘志を燃やす。

 23年に慶大からBR東京入り。24年には日本代表に初招集された。「まさか」と言える代表入りだったが、試合には出られず「悔しい思いをした」。

経験を積んだ28、29歳頃の代表デビューを思い描いており、準備不足の面もあった。日本トップの環境を目の当たりにし「そんな、ゆっくりしている暇なんてないな、と。このレベルでプレーしないといけないんだと、意識が変わった」。日本代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)からは「努力次第では、日本一のSOになれる」と言われた。日々の練習に対する集中力は、一段とアップ。25年7月のウェールズ戦で初キャップを摑むと、デビュー戦トライを飾った。

 

 自身を「特別足が速かったり、身体が強かったり、特別な才能がある10番ではない」と評す。武器は、正しい状況判断による試合運びと正確なプレーだ。磨いたのは、1年時から起用された慶大時代。高校時は、1人で状況を打開する派手なプレーを好んでいたと言うが、慶大の栗原徹ヘッドコーチ(当時)から「長くラグビーをしたいのであれば(元ニュージーランド代表の)ダン・カーターのような選手になるべき。派手なプレーは、相手のプレッシャーも少ない若いうちにしかできない」と言われた。174センチ、84キロと身体も決して大きくはない。

パス、ラン、キック、そして状況判断、全てで世界最高とされた元オールブラックスの司令塔を参考に「何がすごいかは分からないけど、チームを勝たせられる」という10番を目指した。

 在学時は、週ごとに南半球最高峰のスーパーラグビー・パシフィックや、各国のテストマッチを栗原HCとレビュー。一つ一つのプレーの意図について、意見を交換したという。「ラグビーがどういうものか、そこで初めて理解できた。大学時代に、試合の見方が変わった」。ゲームの流れが変わったプレーは何か、敗因となった判断は何だったのか。「この時のベストは何か」と、ゲームメイクについて学んだ。今でこそ他試合を見る機会は減ったが、東京ベイで元オーストラリア代表のSO、フォーリーのプレーを分析することもある。頭脳派か、と問われれば「そうですね」と、答える。

 慶大に入学時までは、卒業後は就職するつもりだった。だが、栗原HCとの出会いでラグビーを学び「面白いな、と思うようになった」。試合に勝つたび、意識が芽生えてきたというトップチームでのプレー。

リーグワン入りを志し、泥臭いプレーがスタイルのBR東京にひかれて入団した。今季からは、プロ選手に転向。「前の自分からすると、ビックリすると思うけど」と、ラグビーに100%集中するため決断した。

 目指すはPO1勝、そしてチーム初の4強進出。中楠は「派手なこともできないので。泥臭さ、そういうところで勝ちたい」と足元をみつめる。「POという経験したことのない舞台になるけど、今までと同じ事を積み重ねたい」。チーム一丸、その中の司令塔を全うする。(大谷 翔太)

◆中楠 一期(なかくす・いちご)2001年6月1日、神奈川県生まれ。25歳。3歳の頃、田園ラグビースクールで競技を始め、国学院久我山中高、慶大を経て23年にBR東京加入。高校日本代表。

広い視野、的確な判断力が武器の司令塔。昨年に日本代表初招集。174センチ84キロ。

◆リーグワン1部得点ランク5傑

①185 コルビ(東京SG)

②184 中楠一期(BR東京)

③170 フォーリー(東京ベイ)

④167 山沢拓也(埼玉)

⑤140 松田力也(トヨタ)

◆BR東京の今季全成績

①15ー29東京SG

②28ー50東京ベイ

③32ー28三重

④37ー29トヨタ

⑤21ー67神戸

⑥33ー24相模原

⑦6-13埼玉

⑧53ー31横浜

⑨41-19浦安

⑩33ー14BL東京

⑪37-33静岡

⑫7-31埼玉

⑬33-7相模原

⑭19ー40神戸

⑮49-5三重

⑯28-40トヨタ

⑰8-52東京ベイ

⑱22-39東京SG

9勝9敗

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