新型コロナのニュースの影であまり報じられていない、深刻な千葉の水不足の問題について、12月17日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。

いま、千葉県・南房総市では、深刻な水不足に悩んでいます。

どんな状況なのか、南房総市で民宿を運営する方に伺いました。

★水不足で困っています!

南房総市で民宿を営む女性
「2~3週間位前に、急に「水不足で節約してもらわないと困る」と言われた。断水になれば商売できない。皆さん海から帰ってきて、お風呂やシャワー浴びたりする。ウエットスーツも洗わなきゃなんないから、どうしても水が必要。だからいまお客さん取れないのでお休みしてます。去年の台風15号、19号で瓦が剥がされて雨漏り。やっと直ったと思った途端に今度はコロナさんで出来なくなって、今度は断水だなんて言われた。我々もお風呂は2日にいっぺんとか、食器もまとめて洗ったりして使わないように気をつけてます。雨が降ってくれればありがたいですけど、雨が降らない限りダメだと思います。」

11月の降水量が例年の5分の1と極端に少なく、市内の水道を供給している「小向ダム」の水が大幅に減少。現在、貯水率が30%程ということで、南房総市の一部の地区で節水が呼びかけられており、このまま雨が降らず、貯水率が20%を切ると、年明けにもおよそ3000世帯に断水の恐れがあると言われています。

この民宿もそうですが、この地域は、去年の台風で屋根が飛ばされるなど大きな被害を受け、1年近くかかって復旧したご家庭も多い地域。

それでほっとしたところで、新型コロナに襲われ、今度は水不足と、大変な状況になっているのでした。

★ダム工事のために、水を抜いていた

では、今回の南房総市の水不足、原因は何なのか?実は「雨不足」だけではないようなんです。国内外の水問題に詳しい、水ジャーナリストの橋本淳二さんに聞きました。

水ジャーナリスト 橋本淳司さん
「ダムの整備をするため、90%位の水位を、50%に減らして工事をしている。従来なら11月の雨量が期待できたが、その雨が降らなかった為に今回の事態。小向ダムは1975年に竣工しているので、50年弱が経過。今回の工事は必要なものだったと思うが、「人災」と言う人たちもいる。「コロナ」と「水」は重要。水が使えないアフリカでは感染が心配されていたし、医療施設でも50%位の所で水が使えないので、何とかしなくてはとWHOが言っていた。それが日本で起きてしまった。開発途上国の水の少ない地域でのコロナ対策を、日本でやらなければいけないことにびっくり。予測しておくべきことだったと思う。」

この件について南房総市に取材をお願いしたのですが、現場の対応に追われているということで詳細は答えていただけませんでした。

ただ、はっきりしていることは、橋本さんも指摘していた通り、小向ダムの「水門」が老朽化していて、更新工事が必要だったということです。市としては、今年6月から工事を始め、過去10年の雨量等を元に、水の量を計算。今年10月に水位を50%まで下げることを決めたそうですが、ところがその後、想定よりも雨が降らず、この状況を生んでしまったようです。

▼「小向ダム」の貯水率/12月16日時点の予測(南房総市ホームページ)

千葉で深刻な水不足。ダムの工事は、いつが適切だった?の画像はこちら >>

▼渇水の主な原因(南房総市ホームページ)
千葉で深刻な水不足。ダムの工事は、いつが適切だった?

問題なのは、いま水は、新型コロナの感染予防のためにも、非常に重要であること。石鹸を使った手洗い、トイレ、お風呂、洗濯、食器洗い等々、感染予防の基本は水でもあります。橋本さん曰く、私たちは1日に水をおよそ250リットル使っていますが、飲み物や食べ物に使うのは10リットル。残る240リットルは、衛生環境を保つのために必要な水なので、水不足が感染対策不足を招くのではと、橋本さんは心配していました。

実際、この地区の小学校では、うがい用の水を減らしたり、トイレ掃除で使う流せる除菌シートを、ゴミ箱に捨てたりという形で節水に協力しているそうですが、これは衛生面でどうなのか。

コロナ禍の水不足は問題。ただし、気候変動で予測が困難に

そしてもう一つ問題なのは、実はこの状況、どこでも起こりうる話でもあると、橋本さんは警鐘を鳴らしていました。

水ジャーナリスト 橋本淳司さん
「長期化すると本当に厳しい問題。緊急給水、仮設トイレの設置、水をリサイクルさせる施設など、あらゆることを考えていく必要がある。

今回と似たことが、実は今年の初めに、関東地方の水源地である群馬県周辺で起きていた。関東地方の水源地でダム周辺の積雪がほとんどなく、私は真剣に、今年の夏は水不足になると思っていた。ところが結果的には6~7月が記録的な豪雨で水不足は回避、その後は少雨傾向。こういう中で、いつダムの工事をしたらいいか、過去のデータが使えない状態になっている。雨の降り方は確実に変わっている。改めて地域の水の問題を、これから考え直していく必要がある」

南房総市のホームページによると、断水した後の支援策として、入浴補助や、営業に支障の出た事業者に給付金を配布するなど、いくつか保障を検討しているようです。

全国的に見ても、多くのダムで老朽化が課題になっているようですが、昨日から今日にかけても例を見ない大雪が群馬や新潟で降っているように、予測が非常に難しくなっています。そんな中で、どう工事の計画を立てるか、改めて考え直さなければいけない時期に来ているのではと、橋本さんは話していました。

◆12月17日放送分より 番組名:「森本毅郎 スタンバイ!」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20201217063000

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