コロナ禍で消費が停滞するなか、マリンレジャーの業界が活況です。ボートのレンタル需要が急増し、高価な船を購入する人も増えているといいます。

なぜ多くの人が海へ海へと向かうのか、人気の背景を探りました。

「船舶免許取った!」芸能人の報告が多数

 2020年初頭から続くコロナ禍では、他人とのふれあいを極力避けることが求められ、旅行やイベントなど多くの楽しみがお預けとなってきました。そうしたなかで大注目されているのが、マリンレジャーです。

 たとえば釣り業界は「空前の釣りブーム」といわれ、アパレル業界も女性向けの釣りウェアで活気づくなど好連鎖が生まれています。さらに、プレジャーボートなどで海に出る人が急増中。これまでハードルが高いように思えた本格的なマリンレジャーも、急速に身近なものになってきているのです。

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マリーナのイメージ。船舶免許が取得できる場所も多い(画像:写真AC)。

 その人気は数字にも表れています。国家試験を行う日本海洋レジャー安全・振興協会によると、エンジン付きボートなどを運転するための小型船舶免許(以下、船舶免許)の合格者は2020年度に7万1975人で、前年と比べると、実に25.7%も増加したそう。ここ数年の合格者は5万人台だったそうですから、コロナ禍で急激に注目度が増したことがわかります。旅行や外食などができなかった分の時間的・金銭的余裕を、新しい趣味に向けた人も多かったのではないでしょうか。

 芸能人のなかにも、船舶免許を取った人がいます。俳優の柳楽優弥さんは2020年に「コロナで仕事が休みになったので普段できないことにトライしてみたい」と、妻で女優・モデルの豊田エリーさんとともに1級船舶免許を取得し、家族で海釣りを楽しんでいるそうです。2021年10月には、元AKB48メンバーで女優の前田敦子さん、お笑いタレントのダンカンさんが、次々と船舶免許の取得を報告しています。

 船舶免許を取得する芸能人は以前から少なくありませんでした。タレントのタモリさん、俳優の織田裕二さん、女優の仲間由紀恵さん、お笑いコンビ・ナインティナインの岡村隆史さん、タレントの三田寛子さん……ジャニーズの面々も免許取得者が多く、木村拓哉さん、嵐の大野智さん、関ジャニ∞の安田章大さんら数多くのアイドルもマリンレジャーを楽しんでいるようです。

 釣り好き、ダイビング好きなど理由はそれぞれですが、プライバシーを脅かされがちな芸能人にとって、海の上は人目を気にせず心からリラックスできる場に違いありません。

コロナ禍で「密」からひととき逃れる場としても、ぴったりなのではないでしょうか。

学科講習はリモートも ハードル低くなっている船舶免許

 船舶免許のボート・ヨット用は1級と2級に分かれます。大きな違いは操縦できる海域の範囲です。1級免許は無制限ですが、2級免許は海岸から5海里(約9km)という制限があります。

 免許といっても、自動車の運転免許と違い何日も教習所に通う必要はありません。全国のマリーナなどにあるボート免許教室で学科講習・実技講習・国家試験がセットになったコースを選べば、2級の場合は3日で免許が取得できます。

教室によってコースは様々ですが、国土交通省から認定を受けた教習所に限られる「国家試験免除」コースなら最短2日、教室によっては学科を自主学習として最短1日コースをうたっているところもあります。

 さらにコロナ禍のご時世ではリモートコースも人気で、2020年、ヤマハボート免許教室の学科講習をオンラインで行う「スマ免」は前年の2倍に増えたそう。コースの選択肢が多いのも、船舶免許取得を後押ししているのかもしれません。

コロナ禍、ボート需要が絶好調! マリン業界が「何か新しいこと」の受け皿になれたワケ

ヤマハのフィッシングボート「F.A.S.T.23」。2021年10月マイナーチェンジしたばかり(画像:ヤマハ発動機)。

「俺のボート」じゃなくてもいい!

 船舶免許の取得者数とともにボートの売り上げも伸びているそうですが、それ以上に注目されているのがレンタルボートです。

購入費や管理費を負担せずとも、好きな時に借りて手軽に海上のひとときを楽しめるとあって人気が高まっています。日本マリン事業協会によると、レンタルボートを営むマリンクラブへの2020年の入会者は、前年より20%ほども増えているそう。

 ヤマハ発動機が全国140か所でレンタルボートなどを扱っている会員制マリンクラブ「シースタイル」では、2020年の入会者数は過去最高を記録したといいます。これまでひと握りの人の優雅な遊び……というイメージだったボートが、急速に身近な存在になってきているようです。

 日本マリン事業協会ではさらに業界を盛り上げるべく、マリンレジャーの無料体験会やボートショーなどを積極的に開催していくということですので、マリンスポーツに親しむ人はますます増えていくのではないでしょうか。