海上自衛隊の最新の護衛艦は、乗員がおよそ200名、大型艦になると400名近くが生活する“海に浮かぶ街”です。
では、これらの排水は海にそのまま流しているのでしょうか。答えは「ノー」です。
現代の船舶には家庭の浄化槽にあたる「汚水処理装置」が積まれています。トイレのし尿や生活排水を微生物の力で分解し、塩素や紫外線などで消毒してから海へ放出するのが基本です。
民間船舶向けの汚水処理装置には、活性汚泥方式や接触酸化方式、濾過膜を使うタイプなど、さまざまな方式があります。陸上の下水処理設備を小型化したような考え方の装置が使われています。さらに、民間船舶向けの汚水処理装置は、国土交通省の型式承認やIMO(国際海事機関)の基準に従って設計・運用されます。
護衛艦は国際法上の軍艦として、こうした基準の適用を受けませんが、民間船舶同様の汚水処理装置が搭載され、海洋環境に配慮した運用がなされています。では、海に流す「場所」や「タイミング」に決まりはあるのでしょうか。
岸から3海里? 12海里? 排水処理のルール船舶から出る排水の処理については、「マルポール条約(MARPOL)」という国際条約の附属書IVと、日本の海洋汚染防止法で細かく決められています。MARPOL附属書IVによれば、承認された汚水処理装置により処理・消毒された汚水は最寄りの陸岸から3海里(約5.6km)以上、未処理の汚水であれば12海里(約22.2km)以上、離れた海域で航行中に一定の排出率で排出することができるとされています。
排水は最寄りの陸岸から離れた場所で海洋に投棄することが認められている(画像:写真AC)
つまり、港や沿岸近くでは原則として汚水タンクに貯めておき、外洋に出てから規定に従って処理水を排出する仕組みになっているのです。
ちなみに、護衛艦のトイレの洗浄水には真水ではなく海水が使われています。これは貴重な真水を節約するためです。護衛艦は艦内に「造水装置」を搭載しており、海水を蒸留して真水を作っていますが、製造量には限りがあります。そのため、飲用や調理には真水、トイレや甲板洗いには海水という使いわけが徹底されているのです。
ただ、海水は塩分を含むため、小便器の配管は陸上のトイレより詰まりやすいとか。ゆえに、定期的に衛生係の隊員により分解清掃されている模様です。
また、船内で出るごみの多くはMARPOL附属書Vの規制に従って管理され、たとえばプラスチック類の海洋投棄は禁止されています。海上自衛隊の艦艇でも、ごみは艦内で分別・処理・保管し、寄港後に陸揚げして処分する運用が基本です。
トイレの排水、厨房の生ゴミ、洗濯の排水。私たちが普段あまり気にしないものまで、護衛艦ではルールに基づき、専用の設備によってしっかり管理されています。“浮かぶ街”の快適さは、こうした縁の下の仕組みに支えられているのです。

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