~ 2025年度 全上場企業「不適切な会計・経理の開示企業」調査 ~


 2025年度に「不適切な会計・経理」(以下、不適切会計)を開示した上場企業は、35社(前期比47.7%減)・41件(同38.8%減)と大幅に減少した。社数、件数ともに4年ぶりに前年を下回った。
 監査機能の強化などの効果が出ているが、一方で(株)オルツ(グロース)、ニデック(株)(プライム)、KDDI(株)(プライム)、エア・ウォーター(株)(プライム)など、深刻な不適切会計も発覚した。


 開示企業数は減少したが、ニデックとKDDIは日経平均株価の構成銘柄(ニデックはその後、特別注意銘柄に指定され、除外)、エア・ウォーターはJPX400などの主要指数の構成銘柄だった。日本を代表する企業でガバナンス(企業統治)の機能不全が相次ぎ、改めてコンプライアンス遵守の意識が問われている。
 
 2025年度に上場企業の不適切会計の開示は41件だった。最多は、経理や会計処理ミスなどの「誤り」で26件(前期比25.7%減)。次いで、役職員などの着服横領が8件(同63.6%減)、売上の過大計上などの「粉飾」が7件(同30.0%減)だった。
 2026年3月17日、日本証券業協会はIPOを目指す企業を証券会社が審査する際の新たな指針を公表した。上場後間もなく売上の過大計上が発覚した事例を受けた対応で、販売実態の確認の強化などが盛り込まれた。しかし、不適切会計は新興企業に限った問題ではない。大企業でも、監査のタイミングで本来は減損すべき在庫を意図的に隠蔽し、監査を欺く事例もあった。監査や審査の信頼性向上と同時に、監査法人に依拠せず、自発的なガバナンス機能の健全化も問われている。
※本調査は、自社開示、金融庁・東京証券取引所などの公表資料に基づく。上場企業を対象に、「不適切な会計・経理」で過年度決算に影響が出た企業、今後影響が出る可能性を2025年度内に開示した企業を集計した。
集計開始は2008年。
※同一企業が調査期間内に内容を異にした開示を行った場合、社数は1社、件数は複数件としてカウントした。ただし、1社あたりの件数が多いニデックとエア・ウォーターについては、各社1件としてカウントした。
※業種分類は、証券コード協議会の業種分類に基づく。上場の市場は、東証プライム、スタンダード、グロース、名証プレミア、メイン、ネクスト、札証、アンビシャス、福証、Q-Boardを対象にした。 

開示企業数 2025年度は35社(41件)

 2025年度に不適切会計を開示した上場企業は35社、41件だった。大手通信キャリアのKDDIは2026年1月14日、子会社2社の広告代理事業で架空取引の可能性を認め、特別調査委員会を設置。3月31日公表の調査報告書で、同事業の売上99.7%が架空取引だったことを明らかにした。
 産業ガス大手のエア・ウォーターは2026年2月13日、特別調査委員会の報告書を公表した。グループ内の合計37社で不適切会計が発覚し、経営トップやマネジメント層の関与も明らかになった。また、モーター大手のニデックも2026年3月3日に第三者委員会の報告書を、4月17日には最終報告を公表。グループ内の多岐にわたる拠点で不適切会計が判明した。

2025年度の「不適切会計」開示 35社・41件に減少 開示...の画像はこちら >>


内容別 最多は「誤り」の26件

 内容別は、最多は経理や会計処理ミスなどの「誤り」が6割超の26件(構成比63.4%)だった。
 次いで、役職員などによる「着服横領」が8件(同19.5%)。

「架空売上の計上」や「実態のない取引の計上」などの「粉飾」は7件(同17.0%)だった。
 鮮魚小売業の(株)魚力(プライム)は、賃上げ税制適用の申請を失念した。これで法人税の計上額に誤りが生じたほか、修正の過程で資産除去債務の見積り、固定資産の減損処理の不備も判明し、3件の不適切会計を公表した。

2025年度の「不適切会計」開示 35社・41件に減少 開示企業は13年ぶり40社を下回る、粉飾決算は7件
不適切会計 内容別(2025年)


発生当事者別 「会社」が22件でトップ

 発生当事者別では、最多は「会社」の22件(構成比53.6%)だった。「会社」では会計処理手続きなどの誤りが多かった。
 「従業員」は6件(同14.6%)で、着服横領や試験データの不正などがあった。
 「役員」は4件(同9.7%)で、役員個人による架空取引、横領、会計情報の改ざんなどがあった。
 「子会社・関係会社」は9件(同21.9%)で、取引実在性の疑義、固定資産の減損漏れ、雇用調整助成金の不正受給などがあった。

2025年度の「不適切会計」開示 35社・41件に減少 開示企業は13年ぶり40社を下回る、粉飾決算は7件
不適切会計 発生当時者別(2025年)


市場別 「東証プライム」が13社で最多

 市場別では、「東証プライム」が13社(構成比37.1%)で最も多かった。次いで、「東証スタンダード」が11社(同31.4%)、「東証グロース」が10社(同28.5%)と続いた。
 2015年以降は国内外に関連会社を展開する旧東証1部の構成比が高く、新市場移行後は旧東証1部の企業が大半の「東証プライム」、旧東証1部から移行した企業も多い「東証スタンダード」の構成比が高かった。しかし、2025年度は主要3市場では「東証グロース」のみが増加し、相対的に新興企業が目立つ結果となった。

2025年度の「不適切会計」開示 35社・41件に減少 開示企業は13年ぶり40社を下回る、粉飾決算は7件
不適切会計 市場別(4-3月)


業種別 最多は製造業の11社

 業種別では、最多は製造業の11社(構成比31.4%)だった。次いで、「情報通信業」、「サービス業」の各9社と続く。

製造業は減損処理の不備や過年度の売上計上時期が不適切などの「誤り」が7件だった。「情報通信業」、「サービス業」も「誤り」が目立った。

2025年度の「不適切会計」開示 35社・41件に減少 開示企業は13年ぶり40社を下回る、粉飾決算は7件
不適切会計 業種別(4-3月)


 2025年度に開示された不適切会計41件のうち、上半期(4-9月)に約6割の25件発生した。
 下半期(10-3月)の開示が上半期に比べて減少した背景の1つには、4月に発覚したオルツの常識を超えた売上の過大計上が大きいとみられる。この影響で、上場企業の会計処理や監査法人の監査がより慎重になった可能性がある。
 年度下半期の不適切会計の開示は減少したが、一方で「会計処理の精査が必要」との理由で、上場規定の決算期末後45日以内を超過し、当初の発表予定日を延期する企業が増えている。
 2025年度の決算発表延期企業数(不適切会計や不正アクセス被害を理由とする延期は除く)は、4-12月は7社だったが、1-3月は6社に達した。2026年度も4月14日現在、すでに7社に及ぶ。
 上場企業は、海外を含めグループ会社を多く擁し、取引構造が複雑で高度な知識が必要になり、意図しないミスも起こりやすい。一方、監査強化は進んでおり、監査を担当する会計士などの負担も重くなっている。
 上場企業はこれまで以上に法務や経理に関連する部門の高度化を進め、監査法人に依存しない社内の監査体制の構築が急務になっている。

2025年度の「不適切会計」開示 35社・41件に減少 開示企業は13年ぶり40社を下回る、粉飾決算は7件
決算発表延期企業数(2025年度4‐3月、2026年4月1-14日、不適切会計や不正アクセスによる延期は除く)



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