清水直行インタビュー 前編

今季のロッテについて

 吉井理人監督が3年目の指揮を執るロッテ。近年は安定してAクラスを維持しているものの、リーグ優勝には手が届かない状況が続いている。

長らくロッテのエースとして活躍し、2018年、19年にはロッテの投手コーチも務めた清水直行氏は、今季のロッテをどう見ているのか。オープン戦で存在感を放つルーキーたち、打線のキーマン、期待の投手などについて語った。

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【ドラフト1位、2位ルーキーがチームに好影響】

――キャンプ、オープン戦を見て、今季に期待できる野手は?

清水直行(以下:清水) 髙部瑛斗です。ネフタリ・ソトとグレゴリー・ポランコが得点源なのですが、安定してチャンスメイクできるバッターがいなければ打線として機能しません。その部分を髙部に期待しています。シーズンを通して戦列にいてくれないと困る、中心選手だと思っています。

 内野の起用法がどうなるか定かではないですが、ソト、ポランコ、髙部、佐藤都志也は固定でいくような気がしています。佐藤は故障明けですし、ベテランのソトらも含めて多少は休ませながらの起用になると思いますが、基本的にこの4選手は常にラインナップにいてほしいですし、相手も嫌がるはずです。

――外野は競争が激しくなっていますね。

清水 髙部をはじめ、岡大海、藤原恭大、石川慎吾、山口航輝、愛斗、山本大斗、和田康士朗らが争う形ですが、髙部が元気であればファーストチョイスは髙部です。右膝の手術明けですが、コンディションもよさそうですし、大丈夫だと思います。

 それと、ドラフト1位ルーキーの西川史礁(青学大)がいいですね。結果が出ていることもそうですが、どんな状況でも、どんな球種にもバットをしっかり振っていけるのが強みです。

さらに、コンタクトする能力も高いですし、スイングスピードも速い。仕掛けるのも早いので、ピッチャー目線で言えば、初球の入り方を含めて要警戒のバッターです。開幕スタメンの可能性も十分にあると思います。

――シーズンに入ってピッチャーの攻め方が変わると思いますが、それに西川選手がどう対応するかが今後の課題でしょうか?

清水 それが唯一の懸念点です。オープン戦では、ピッチャーは基本的にファーストストライクで真っすぐをどんどん投げ込んできます。しかしシーズンが始まれば、仕掛けの早いバッターに対しては、インサイドの強いボール球から入ったり、落ちるボールから入ってきたりします。そういった攻め方をされて1回はつまずくでしょう。

 また、交流戦が終わる頃には各バッターのデータが蓄積し研究されるので、より厳しい攻め方をされるはずです。西川をはっきり判断できるのは、そこの対応を見てからですね。ただ、現段階では故障することもなく、即戦力として期待できるだけの実力をいかんなく発揮してくれていると思います。

――内野で注目している選手はいますか?

清水 ドラフト2位ルーキーの宮崎竜成(ヤマハ)は非常に能力が高く、期待できます。セカンドとサードはある程度守れて、(打撃では)西川と同じように思い切りがよくてスイングが鋭いです。

彼がキャンプ、オープン戦といいアピールをしてくれたおかげで、内野の競争が活性化しています。外野に西川、内野に宮崎が加わったことで、これまで試合に出ていた選手たちの立ち位置が危うくなってきているんです。

――尻に火がついている状況ですね。

清水 中村奨吾は今季から再びセカンドで勝負していますが、セカンドには藤岡裕大がいて、小川龍成、宮崎らもライバルになります。サードは上田希由翔、安田尚憲、宮崎らの争いといったように、西川と宮崎が結果を出しているので各選手に危機感が生まれていますし、チームにとって2人の存在はすごくチームにとってプラスになっていると思います。

【先発で期待の若手、リリーフで「一番大事」な投手は?】

――ピッチャーについてもお聞きしますが、まず先発陣はいかがですか?

清水 新外国人選手から言うと、オースティン・ボスはある程度の結果を出しているので、少しずつ信頼を得られてきたかなと。速いスライダーと遅いスライダーがありますし、キレがあるので武器になっています。

 一方でブライアン・サモンズは、バッターを抑えるパターンを確立できておらず、毎回ピッチングで苦しんでいる印象です。どの球でカウントを取って、どの球でファウルを打たせて......というのが見えてこないんです。

――ボス投手は先発ローテーション枠に入ってくる?

清水 入ると思います。あと期待しているのは、3年目の田中晴也です。オープン戦で徐々に長いイニングを投げていますが、いずれも成長を感じるピッチングを見せてくれていますし、個人的にはローテーションで頑張ってもらいたいピッチャーです。

2年目の木村優人も成長著しいですし、シーズンのどこかで出てきてほしいです。

――リリーフ陣はいかがですか?

清水 一番重要な存在は鈴木昭汰です。彼にブレーキがかかると、今季からロッテに復帰したタイロン・ゲレーロ頼みになってしまうので。今季は鈴木が8回、もしくは9回もけっこうな割合で投げるんじゃないかと予想していますし、ゲレーロが8回を投げてくれたら、9回を鈴木に任せられます。昨季は8回を任せられるピッチャーがいなかったので、鈴木が8回を投げるしかなかったんです。

 リリーフ陣は頭数が揃っていてどのピッチャーにも期待はしていますが、僕のなかで勝ちパターンとして主に決まっているのは、現状では鈴木とゲレーロ、国吉佑樹、横山陸人、益田直也くらいまで。ロッテのストロングポイントはピッチャー陣ですし、リリーフ陣をうまくやり繰りできれば安定した戦いができると思います。

(後編:パ・リーグ順位予想 戦力充実の上位3チームは「優勝を狙える」>>)

【プロフィール】
清水直行(しみず・なおゆき)

1975年11月24日に京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市で育つ。社会人・東芝(旧・東芝府中)から、1999年のドラフトで逆指名によりロッテに入団。長く先発ローテーションの中核として活躍した。日本代表としては2004年のアテネ五輪で銅メダルを獲得し、2006年の第1回WBC(ワールド・ベースボールクラシック)の優勝に貢献。2009年のシーズン後にトレードでDeNAに移籍し、2014年に現役を引退。

通算成績は294試合登板105勝100敗。引退後はニュージーランドで野球連盟のGM補佐、ジュニア代表チームの監督を務めたほか、2019年には沖縄初のプロ球団「琉球ブルーオーシャンズ」の初代監督に就任した。

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