岩田稔インタビュー(後編)
2025年のセ・リーグは、戦力補強や若手の成長により、例年以上に激戦が予想される。DeNAは昨年の日本一の経験を武器にリーグ制覇を目指し、昨シーズン優勝の巨人は大型補強で巻き返しを図る。
【不気味な投手力充実の中日】
── では、セ・リーグの順位予想をお願いします。
岩田 順位予想だけは、ほんとに難しい。不確定要素が多すぎますからね。そのなかで、中日は上がってきそうな気がしていて、選手層的にはヤクルトが厳しいかなと。申し訳ないですが、ヤクルトを最下位にさせていただきます。投打ともに厳しいなか、村上宗隆、山田哲人、塩見泰隆というチームの中心を担う3人が開幕に間に合わない。そこは不安しかないですよね。
── 5位はどのチームになると予想しますか。
岩田 中日が上がってくるとはいえ、ほかのチームも充実していますからね。5位は中日でいきます。中日の投手力はリーグでもトップクラスです。
── 昨年は、4位から上はシーズン最後まで大混戦でした。
岩田 そうなんですよね。今年も4チームで上位争いが繰り広げられると思うのですが、それぞれに長所と短所がある。もしDeNAが昨年日本一になっていなかったら、4位にしていたと思います。ただ、昨年の日本シリーズでの勝ち方を見ていたら、単純に「強いな」と思いましたし、なにより選手が自信を持って戦うと思うんですよね。ちょっと4位以下に落ちるというイメージが湧かないです。
── そうなると4位は?
岩田 カープですかね。昨年も9月まで首位を争っていたチームですから、底力はあります。去年の負け方をどこまで引きずっているのか、そこが心配です。投手力で勝ってきたチームが、最後の最後でスタミナが切れた。
【菅野智之の抜けた穴は埋まるのか】
── 上位争いは、阪神、巨人、DeNAの3チームに絞られましたが。
岩田 ここからがさらに難しい。巨人はライデル・マルティネス、甲斐拓也、マー君(田中将大)が加わりましたが、昨年15勝の菅野智之が抜けた穴は大きい。そう考えると、先発をどうするのかなという不安があります。
── 甲斐選手は経験豊富だとはいえ、パ・リーグからセ・リーグへの移籍で、リード面、配球面で変わることはありますか。
岩田 それはめちゃくちゃあると思います。どちらかといえば、パ・リーグはストライクゾーンに投げて打ちとるスタイル。逆にセ・リーグは、ストライクゾーンからボールになる球を振らせて打ちとる。当然、ピッチャーの考え方も違うでしょうし、どこまで適応できるか。甲斐選手が普段どおりプレーできるのではあれば、まったく心配はないのですが、セ・リーグのリードに戸惑った時にどうするか。若干の不安要素があるという点で、巨人を3位にしたいと思います。
── 残るは阪神とDeNAです。
岩田 DeNAは先程も言いましたが、昨年の日本一の経験が大きい。そこにかつてのサイ・ヤング賞投手であるトレバー・バウアーが2年ぶりに復帰しました。これはものすごく大きいと思います。もともと攻撃力のあるチームですが、先発の柱が加わったことで投打のバランスがよくなりました。
── DeNAの選手たちは「今年はリーグ制覇して日本一」とモチベーションも高いです。
岩田 目標がはっきりしていますよね。ただ、あえて不安な部分を挙げると、短期決戦と長いペナントレースの戦いは違うということです。去年のプレーオフのような戦いがシーズンを通してできるかと言えば、はっきり言って無理だと思います。勝てなくなった時に、どうチームを立て直すのか。そこがDeNAの課題だと思います。勢いに乗った時はとんでもないパワーを発揮するけど、一方で連敗もある。
── 阪神も一昨年の優勝メンバーが多く残っており、経験という部分では心配ないように思います。
岩田 特に野手はほとんど変わってないですし、年齢的にもまだまだ問題ありません。それに阪神の強みはさっきも言いましたが、投手陣ですよね。離脱中の大竹耕太郎や髙橋遥人が戻ってくれば、さらに厚みが増します。長いシーズンを考えれば、投手力が重要になってくると思いますので、阪神を優勝にしたいと思います。
── 上位は最後までもつれる感じですか?
岩田 最後までわからないと思います。特に8月から9月にかけて、サバイバルレースになるのではないでしょうか。あくまでこの順位にしましたが、ひとつのきっかけで大きく変わってきます。最下位にしてヤクルトにしても、ケガ人が戻ってきて、奥川恭伸がエースのピッチングを続ければAクラスの可能性はあると思いますし、中日は井上一樹新監督になりましたが、チームをまとめるのがうまい。上位と下位の差は、昨年ほど開かないと思います。
岩田稔氏のセ・リーグ順位予想
① 阪神
② DeNA
③ 巨人
④ 広島
⑤ 中日
⑥ ヤクルト
岩田稔(いわた・みのる)/1983年10月31日生まれ、大阪府出身。