里崎智也×五十嵐亮太 後編
2025年パ・リーグ優勝予想
(前編:セ・リーグ優勝チーム予想 広島は「ワンチャンある」 巨人は本命か4位の可能性も?>>)
里崎智也と五十嵐亮太に聞く2025年のプロ野球展望。セ・リーグの優勝予想に続き、パ・リーグの優勝争いを予想してもらった。
【ロッテは「VISION2025」集大成の年になるのか】
――まず、パ・リーグの順位予想をお願いできますか?
里崎 Aクラスは1位がロッテ、2位がソフトバンク、3位が日本ハム。Bクラスは4位が楽天、5位がオリックス、6位が西武です。
五十嵐 僕はソフトバンク、日本ハム、楽天、ロッテ、オリックス、西武の順になると予想します。
――里崎さんは1位が古巣のロッテ。五十嵐さんも同じく、古巣のソフトバンクが優勝と予想しましたが、根拠を教えていただけますか?
里崎 何年も前からチームが「VISION2025」というコンセプトを掲げていて、5年計画で「2025年は優勝する」と宣言しているわけだから、今年はロッテが優勝する、ということでしょう。
五十嵐 現場とフロントが一体になってコンセプトを打ち出したことが話題になっていたけど、今年がその最終年なんですね。
里崎 ずいぶん前から、「これからロッテは常勝軍団になる」と大々的に宣言していて、今年がその計画の最終年。だからロッテをリーグ優勝と予想するのは当然のことですよ。OBとして信用してるんです。
その代わり、今年優勝できなかったらフロントは総辞職すべきです。一般企業でも、5年にわたって全社的なプロジェクトをやって成功しなかったら、その責任を取らないといけないですよね? 今年も結果が出なかったら潔く退いて、新しい人たちにバトンタッチして違うアイディアを採り入れるべきでしょう。
五十嵐 具体的な戦力面としては、どのように評価しているんですか?
里崎 投手陣でいうと、まずは開幕投手の小島和哉。彼は、相手エースと投げ合ってバンバン勝つような絶対的なエースじゃないけど、2023年、24年と2桁は勝っている(23年は10勝、24年は12勝)。
さらに、西野勇士がFAせずに残留したから、8勝ぐらいしてくれれば。問題はその後。特に頑張らなきゃいけないのは種市篤暉だよね。
五十嵐 2020年9月にトミー・ジョン手術を行なって、昨年も故障にも苦しめられて7勝8敗でしたけど、彼には15勝くらいできるポテンシャルがありますよね。そこでしっかり勝ちきることができれば、ロッテ先発陣はかなり厚みが増すと思いますね。
【ロッテは新戦力の台頭がカギ】
里崎 先発陣では、オースティン・ボスも加わった。開幕後に先発した2戦はうまくいかなかったけど、彼は制球力もいいし試合を壊すタイプじゃないから、日本野球にアジャストできる可能性が高いと思います。
さらに、新たな顔ぶれとして田中晴也や木村優人、中森俊介など若手の突き上げがあればかなり面白いと思うな。リリーフはタイロン・ゲレーロが"出戻り"して160キロ台をバンバン投げている。そして昨年に活躍した鈴木昭汰、国吉佑樹、澤村拓一、西村天裕と、質量ともに充実していますよ。
五十嵐 その言葉通りの活躍ができれば「5年計画」の集大成となるけど、僕は現実的には難しいと思いますね。
里崎 野手に関しても、新戦力の台頭に期待したいよね。ルーキーの西川史礁、宮崎竜成といった新戦力と、去年はケガで出場が少なかった髙部瑛斗、藤原恭大、2023年ドラフト1位の上田希由翔などが底上げできれば、ネフタリ・ソト、グレゴリー・ポランコがいるのである程度の形にはなるでしょう。
佐藤都志也も開幕には間に合ったし、寺地隆成もいる。彼らがどこまで頑張ることができるか。それ次第では十分、優勝の可能性はあるよ。亮太はやっぱり、ソフトバンクを優勝と予想しているんだね。
五十嵐 去年、あれだけゲーム差をつけてペナントレースを勝ち抜いたら、そういう予想になりますよね。今年のキャンプも充実していたし、昨シーズンに結果を残した選手が今年もある程度はやるだろうという計算も立つ。誰かが欠けてもカバーできる選手が控えています。
個人的には、リチャードに期待していました。
里崎 日本ハムに移籍した水谷瞬の昨年の活躍は、リチャードもかなり悔しかっただろうね。自分より苦しんでいたはずなのに、現役ドラフトで移籍して、いきなり活躍して日の丸を背負ったわけだから。だからこそ、これから奮起してほしいね。
【「ポスト甲斐拓也」海野隆司に求めるもの】
五十嵐 開幕から低空飛行が続いているソフトバンクだけど、「やっぱり甲斐拓也の存在は大きかった」と言われても仕方がない感じですね。
里崎 ソフトバンクとしては、球団なりの正当な評価を提示したけれども、甲斐はチームを去ることを決めた。選手としての正当な権利だから、ソフトバンクからすると「それなら他のキャッチャーで勝っていこう」という思いだったはず。逆に甲斐にとっては、今年ホークスが日本一になって、ジャイアンツが優勝しないとなると複雑でしょうね。
五十嵐 甲斐に代わるキャッチャーとしては海野隆司、渡邉陸、谷川原健太が一軍登録されているけど(谷川原は4月7日に登録抹消)、その筆頭はやっぱり侍ジャパンメンバーにも選ばれた海野。オープン戦で右脚を痛めていたけど、なんとか開幕には間に合いましたね。
里崎 3月14日の試合で右太もも裏を故障してかなり痛がっていたね。でも、翌日には軽傷だったことがわかった。小久保裕紀監督も「大げさですね」って言っていたけど、僕からしたら「ハムストリングを少し痛めたしたぐらいで休んでる場合かな」とも思いますね。それほど、今年は彼にとって"勝負の年"だから。自分で「痛い」と言わない限り、第三者に痛みなんかわからない。今の時代にはそぐわない考え方かもしれないけどね。
五十嵐 少しのケガなら試合に出ろというのも大変だとは思うけど、海野にとっては本当に勝負の年であるのは間違いないですよね。渡邉とか谷川原とか、他の選手が台頭してきたら、すぐに取って代わられるわけだから。
里崎 僕なら絶対に休まない。ハムストリングの肉離れぐらいだったら、バンテージをガチガチに巻いて試合に出るね。僕は座して死ぬより、戦って死んだほうがいいという考えだから。現役時代もレギュラーになる前は、「絶対的な存在になるまでは休んではいけない」という意識でやってたよ。
今年、海野にとっては野球人生最大のチャンスが訪れたわけでしょ。大卒6年目の27歳だから、なおさら「甲斐」という絶対的な存在がいなくなった今年はラストチャンスとも言っていい。それぐらいの強い気持ちがなければ、レギュラー奪取はできないよ。
五十嵐 先ほども話が出ましたけど、開幕してからの戦いぶりを見ていると、「やっぱり甲斐の抜けた穴は大きいな」という気がしますね。オリックスがスタートダッシュに成功したけど、パ・リーグもセ・リーグ同様に予断を許さない状況は続きそうですね。
里崎 だからこそ、ロッテにチャンスがあるはず。何度も言うけど、「VISION2025」の集大成の年なんだから。あれだけ大々的にアピールしたんなら、優勝してもらわなければ困るよ。ファンサービスや地域密着などの理念は着々と実現させているわけだから、ぜひ、「常勝チームになる」という理念も実現させてもらいたい。OBとしても注目しています。
五十嵐 個人的には「ロッテのリーグ優勝は厳しい」と思うけど、そこまでサトさんが力説するのなら、僕も今年はロッテに注目したいと思います。
里崎 ただ、ちょっと気がかりなのが、ここ最近のロッテ球団は「VISION2025」をあまり口にしなくなっていること。
五十嵐 ますます、ロッテに注目したくなりました(笑)。
【プロフィール】
里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工(現鳴門渦潮)、帝京大を経て1998年のドラフト2位でロッテに入団。正捕手として2005年のリーグ優勝と日本一、2010年の日本一に導いた。日本代表としても、2006年WBCの優勝に貢献し、2008年の北京五輪に出場。2014年に現役を引退したあとは解説者のほか、YouTubeチャンネルなど幅広く活躍している。
公式YouTubeチャンネル『Satozaki Channel』
五十嵐亮太(いがらし・りょうた)
1979年5月28日生まれ、北海道出身。1997年ドラフト2位でヤクルトに入団し、2004年には当時の日本人最速タイ記録となる158キロもマークするなど、リリーフとして活躍。その後、ニューヨーク・メッツなどMLBでもプレーし、帰国後はソフトバンクに入団。最後は古巣・ヤクルトで日米通算900試合登板を達成し、2020年シーズンをもって引退した。現在はスポーツコメンテーターや解説として活躍している。