ヒロド歩美さんインタビュー 後編(全2回)
『報道ステーション』(テレビ朝日系)や『熱闘甲子園』(同)で高校野球やプロ野球などさまざまなスポーツの取材を続けているフリーアナウンサーのヒロド歩美さん。自身は十数年来の阪神タイガースファンでもある。
そんなヒロドさんに、タイガースの注目選手、藤川球児・新監督への期待、そして高校野球からプロへと進んだ選手たちへの思いを語ってもらった。
【阪神の注目は育成出身の背番号24】
ヒロド歩美 今シーズン、阪神で注目しているのは23歳の工藤泰成投手です。育成選手から、今季開幕前に支配下登録を勝ち獲り、話題になりました。背番号は、(2023年に脳腫瘍のため28歳で亡くなった)横田慎太郎さんが背負った24番ということもあり、阪神ファンの応援の度合いがすごいんです。
東京国際大学時代について大原伸監督にお話を聞くと、工藤投手は入学当初は線が細く、監督も最初は「ある程度スピードがある。試しに使ってみよう」という評価でレギュラークラスとは考えていなかったそうです。
それでも工藤投手は誰よりも努力する選手で、3、4年生になるとチームの主力として活躍。スカウトが視察に来る大事な試合で緊張してしまうこともあったそうですが、四国IL plus・徳島で経験を積んで、見違えるほど成長しました。
苦労を重ねてはい上がってきた彼の姿は、同じく四国ILに在籍していたこともある藤川球児監督にも何か響くものがあったのではないでしょうか。先日、出場選手登録を抹消されてしまいましたが、さらにたくましくなって帰ってきてくれると信じています。
また、ヤクルトの奥川恭伸投手も注目選手のひとりです。星稜高2年だった2018年から取材をしていて、彼の喜怒哀楽を、一方的にですがたくさん見させてもらってきました。開幕投手を務めた試合にも並々ならぬ思いがあったと思います。
パ・リーグでは、オリックスの宮城大弥投手に注目しています。3月の侍ジャパンの強化試合では、最年少とは思えないほど貫禄を感じさせる投球でした。
【プロ入りした選手たちの顔つきの変化が楽しみ】
高校生だった彼らがプロに入り、新人として戸惑いながらも、経験を積んで先輩になっていく。その過程を見守ることができるのは、とても幸せなことだとあらためて思います。
プロになったあとに取材で再会して、「調子どうですか?」と聞く前に、「お久しぶりです」という話から始められるのはこのうえなくうれしいことですね。選手たちも当時のことをよく覚えてくれていて、いつも感謝しています。
とくに楽しみなのが、高卒でプロ入りした選手たちの"表情の変化"。プロに入ったばかりの頃は、環境に慣れていないせいか初々しい。それが、時が経ち、後輩が入ってくると、今度は頼もしい先輩の顔つきになっていく。この変化を見ることができるのは、とても貴重なことだと思っています。
とくに宮城投手は、興南高1年の頃から取材を続けてきたので、その変化を強く感じました。経験によって人ってこんなに顔つきが変わるんだな、とあらためて驚きました。2023年のWBCで最年少ながら堂々とした姿を見せていた髙橋宏斗投手(中日)も、ふとした瞬間に見せる表情にはまだ初々しさがあり、そのギャップが印象的でした。
佐々木朗希投手(ドジャース)がメジャーリーグに挑戦したことで、同世代の奥川投手や宮城投手も刺激を受けたと思います。同様に、WBCで活躍した髙橋投手の姿を見て、中京大中京高時代の同級生である中山礼都選手(巨人)も刺激を受けたはずです。

高校時代は注目されていなかった選手がプロで大きく開花するケースもよくありますし、ひとつの世代を継続的に取材することで、さまざまな刺激の連鎖や変化を見ることができるのは、とても興味深いです。
高校や大学、プロ野球、そしてメジャーリーグ。さまざまな舞台で活躍する選手たちの姿を追いかけていると、この選手ってあの時の甲子園に出ていたあの子だよね、と、まるで壮大なパズルを組み立てているような感覚になるんです。
私が『熱闘甲子園』のキャスターになった2016年、夏の甲子園優勝投手は今井達也投手(作新学院/現・西武)でした。あの時の選手がメジャー挑戦の可能性もあると思うと、本当に感慨深いです。先日、西武が本拠地初勝利を飾った時の今井投手の熱投とお立ち台での姿には、感動しました。
【令和の指揮官、そして再び"アレ"に期待】
さて、今シーズンのプロ野球で注目している監督は、阪神の藤川監督と、日本ハムの新庄剛志監督です。
藤川監督は、現役時代から取材や仕事でご一緒する機会があり、野球に対する熱い情熱を間近で感じてきました。野球人口の減少についても強い危機感を持っていらっしゃって、選手育成だけでなく、野球界を盛り上げるというミッションも担っているのではないかと感じています。
新庄監督は、『報道ステーション』での松岡修造さんによるインタビューを見て、令和のプロ野球の監督像を感じました。
昨シーズン、本拠地のエスコンフィールドで取材していた際、たまたま新庄監督が球場入りする場面に遭遇しました。その時、細川凌平選手にふわ~と近寄り、「今日、ショートね」とひと言だけ声を掛けて去っていったんです。
そのときの細川選手は、顔面蒼白に近い表情になりながら、「ショートやったことないんですけど......」と驚いていましたが、徐々に「頑張らなきゃ」と決心。その数分間の心境の変化を間近で目撃しました。新庄監督はこういう距離感で選手のモチベーションを上げているんですよね。
阪神の岡田彰布・前監督のように、メディアを通して選手たちにメッセージを送るスタイルもあれば、新庄監督のようにDMで激励するスタイルもある。どちらも好きですし、それぞれの監督の個性が反映されていて興味深いです。
今年の大阪は、夏の甲子園だけでなく、万博も開催中です。センバツ高校野球では大阪勢は残念ながら出場がなく静かでしたが、夏の甲子園では大暴れしてくれることを期待しています。そして、阪神ファンとしては、もう一回、"アレ"を見たい。
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<プロフィール>
ヒロド歩美 ひろど・あゆみ/1991年10月25日生まれ。兵庫県宝塚市出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、2014年に朝日放送テレビ(ABCテレビ)入社。2016年に『熱闘甲子園』のキャスターに就任。その後は『サンデーLIVE!!』『芸能界常識チェック!~トリニクって何の肉!?~』『芸能人格付けチェック』などに出演。2023年からフリーとなり、現在まで『報道ステーション』のスポーツキャスターを務めている。