5月10日、大阪。SVリーグ王者を決めるチャンピオンシップ準決勝、サントリーサンバーズ大阪の髙橋藍(24歳)は、ウルフドッグス名古屋との決戦で"主役の迫力"を見せた。

 前日の第1戦でサンバーズは3-0とストレートで勝利していたが、この日は背水の陣で挑んできたウルフドッグスに押される展開だった。1セット目を奪われてしまい、2セット目もセットポイントを取られていた。2戦先取方式で優位は揺るがなかったが、バレーボールは何気ない波が濁流になるゲームだけに、ほのかに不穏な空気が漂った。

 デュースになった2セット目で、30-29から最後の一撃を決めたのが、髙橋だった。セットポイントを決めたあと、彼は激しく咆哮していた。獲物を仕留めた百獣の王のようだった。

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――あのとき、何を叫んでいたんですか?

 髙橋は「なんて言いましたかね?」と少し記憶を辿りながら、こう続けている。

「何を叫んでいたのかは覚えていないんですけど、自分を鼓舞していたと思います。あそこで1本を取るか、取らないか。それで自分もチームも大きく変わっていたので。気持ちが入った1本だったと思います。(あとがなくなった相手が攻めてくるなかで)1セットを取るのがきついと思っていたし、あれを取ったことで次のセットも優位に戦えるはずだったので、その感情が出たのかなって」

 実際、そこが潮目だった。

大事ではない1本などないが、最後の最後で仕留められるか。それがエースに求められる胆力であり、主役だけが帯びるスター性にも置き換えられる。その輝きの点で、昨シーズンのチャンピオンシップMVPでもある彼は他の追随を許さない。

「最後の1点を取りきるのが、エースの役割だと思っています」

 髙橋は平然と言ってのけた。彼は重圧を全身で受け止めているようにも見えるし、重圧を低減できる、もしくは無にできるようにも映る。その計り知れなさが主役の器か。

「競っている場面で勝ちきることが、勝負では必要だと思っています。優勝するためには、そこの強さを求められる。終盤で勝負強さを見せられるか」

 髙橋はそう語るが、その勝負勘はほとんど直感的だ。

【攻める姿勢を見せてきたシーズン】

 1セット目を奪われたサンバーズは2セット目を逆転で奪い取り、3セット目を優位に戦い、4セット目は相手の粘りに苦しんだが、最後は髙橋が23点目を自ら取って追いついた。そこから髙橋は自らのサーブで攻撃を優位にし、25-23で勝ちきった。"窮鼠に猫をかませてはならない"という苛烈さで、そのプレーはとにかく鼻が利いていた。

――4セット目終盤、髙橋選手の勝負強さは際立っていました。自らのスパイクでサーブを取り、自らのサーブで相手を崩し、アドバンテージを取っていく戦いは見事。まさにサントリーの勝利パターンでした。   

 髙橋は少しも疲れた様子なく、熱を帯びた口調で答えた。

「サーブを打つときは、前衛全員がブロックに強いですし、小川(智大)さんも、関田(誠大)さんもいて、後衛も一番強いローテで......サーブを入れにいくのか、攻めにいくのかで、相手の攻撃も変わるし、自分たちのブロックシステムも変わってくる。攻めないとブロックでも勝負できないので、ベストなサーブを打てたと思います。疲労感はありましたが、集中力を切らさずに」

 今シーズンの髙橋は攻める姿勢を見せてきたが、サーブはひとつの象徴だろう。昨シーズンまではショートサーブがメインで、無理にスパイクサーブで決めにいかなかった。相手のレセプションを撹乱するだけで、自分たちの強みであるブロックの堅牢さが出たからだ。しかし、今シーズンは自ら攻める選択肢を積極的に示し、相手を翻弄していた。

「藍はどんな場面でもドロップさせてくるし、そうかと思うと、思いきりコースを狙って打ち込んでもくる」

 ウルフドッグスの選手たちもそう感想を洩らしていたが、コントロールに優れた変化球だけでなく、豪速球も投げ込めるピッチャーになったようなものか。

 髙橋の攻撃力は明らかに増した。

セッターの関田は「藍のライトは強み。ここ一番の集中力があるし、武器として捉えています」と賞賛を送ったが、その言葉は千金の価値がある。

 ふたりはもともと代表でチームメイトだけに連係面の問題はなかったが、試合を重ねることで確実に信頼関係は増した。たとえば第1戦の2セット目の21-21と拮抗した場面で、ほとんど視野に入らないところから関田のトスが上がり、髙橋は1枚になったブロックの脇に打ち込んでいた。

「関田さんが託してくれる、というのは自分が信頼されているからで、その役割を果たせてよかったと思いますね」

 髙橋はそう言うが、ベスト6(アウトサイドヒッター)やベストレシーブ賞に選ばれた昨シーズンの数字以上の成績を叩き出したのは、エースの気概と言える。攻撃だけでなく、守備の数字も上がっている。王者のエースとして周りからも研究されていただろうが、チームをレギュラーシーズン1位に押し上げる中心を担っている。

 5月15日、横浜。王者サンバーズは大阪ブルテオンと雌雄を決する。エースの存在価値が問われる。

 髙橋は来るべきファイナルに向けて語っている。

「リーグ連覇については考えすぎず、1試合、1試合を戦っていけるように......。

昨シーズンは優勝していますが、決勝に行ったからといって優勝できるわけじゃないので」

 野心と達観のバランスに、超然としたスターの肖像が浮かぶのだ。

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