馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はウオッカが勝った2009年のヴィクトリアマイルを取り上げる。

まさに“モノが違う”という圧巻のパフォーマンスに衝撃が走った。

 風になったウオッカを、復活を待ち望んでいたファンが温かく迎えた。敵はいない。完全に抜け出すと、大好きな東京コースを、気持ちのままに駆け抜けるだけでよかった。差が開く、開く。みるみるうちに7馬身の差をつけ、悠々とゴールに飛び込んだ。

  2着に敗れた昨年の雪辱を果たす勝利。そして、ダイワスカーレットとの2センチ差の激闘を制した昨年の天皇賞・秋以来の勝利でもある。「ウオッカらしい競馬ができた。気持ち良かったですね」。武豊はすがすがしい表情で喜んだ。「位置取りは、最初の100メートルの様子で決めようと思っていた。

いいポジションが取れたし、いつもより折り合ってましたね」。好スタートから絶好の5、6番手へ。流れに乗った時点で、勝負は決した。

 春のドバイ遠征では、苦汁を飲んだ。特にドバイ・デューティフリー(7着)は、2番手から失速して完敗。限界論も出たが、完全に払拭した。「ドバイの敗因は、いまだに我々もわからない。ただ、当時も状態は良かったし、今回も今までで一番と思えたくらい良かった」。やはり、ウオッカは強かった。

 これでJRAでの獲得賞金は牝馬で歴代1位(当時)。賞金女王となった名牝とともに、武豊自身も今年のG1初勝利だった。「秋に入るといろいろ言われるので、早めに勝てて良かった。

今回は勝って当然の立場だと感じていたが、終わるまでは不安でした。僕自身、今日の勝利で吹っ切れました」と胸をなで下ろす。なかなか勝ち星が伸びず、先週のNHKマイルCでも1番人気のブレイクランアウトで9着。期待を裏切ったが、今週は土日で5勝。全国リーディング2位に浮上してきた。

 人馬ともに復活を告げたヴィクトリアマイル。次は、連覇のかかる安田記念に向かう。「今度はディープスカイがいる。今回負けるのと、勝って行くのでは、気持ちが違いますからね。ウオッカは強い。改めて感じましたし、今後は、すべて今日のような競馬をしたい」。迷いはない。

攻めの姿勢を取り戻したゴールデンコンビが、新たな戦いに打って出る。

 その後も安田記念、ジャパンCを勝ち、当時の史上最多タイとなるG1通算7勝。牝馬による日本ダービー制覇など、記録にも記憶にも残る現役生活を駆け抜けた。2010年のマクトゥームチャレンジ・ラウンド3(8着)がラストラン。その後はアイルランドで繁殖生活を送っていたが、2019年に天国へ旅立った。

 まだ15歳。引退後は日本へ戻ってくることなく、あまりに早い突然の別れだった。

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