痒いところに手が届く、業界にはなくてはならない存在
自動車に置けるOEMとは、他メーカーが製造した車両を自社のブランドで販売することを指す。とくに自社で開発するほどではないが、完全にそのジャンルの車種がなくなってしまうと困る……といったモデルが対象になることが多い。
例を挙げると商用車の開発・生産から撤退したマツダがトヨタからハイエースやタウンエース、プロボックスなどのOEM供給を受け、ボンゴブローニイ、ボンゴ、ファミリアバンとして自社で販売するというようなものだ。
このようなOEM供給は国内のメーカー同士で行われているイメージが強いかもしれないが、じつは海外メーカーとOEM関係を結んだ車種も存在していた。今回はそんな海を超えてコラボしたクルマを紹介しよう。
1)スズキ・スイフト → シボレー・クルーズ
スズキのコンパクトカーであるスイフトの初代モデルは、日本国内では軽自動車にも迫る低価格と実用性の高いハッチバック車という点で人気を集めた1台だ。
そんなスイフトをベースとして生まれたのがシボレー・クルーズだ。いわずと知れたアメリカブランドであるシボレーでコンパクトカーを販売していたのは意外かもしれないが、じつはこのモデルは日本国内専売であった(オーストラリアでは傘下のホールデンブランドから販売されていたことはあるが)。

ただ、デザインはGMが担当しており、スイフトとは違うフロントマスクやコルベットを思わせる4灯テールランプ、形状の異なるリヤクォ―ターウインドウなど、じつはかなり手が加えられているモデルとなっていた。
2)日産パルサー → アルファロメオ・アルナ
チェリーから続く日産のコンパクトカーの系譜を引き継いだパルサーは、現在でこそ消滅してしまったが、GTI-Rを筆頭にスポーティな印象のあるモデルだ。そしてその2代目モデルをベースとしたのがアルファロメオ・アルナであった。

これは日産とアルファロメオが設立した合弁会社が生産したもので、ボディはパルサー、エンジンはアルファロメオ製の水平対向エンジンが搭載されていたため厳密なOEMモデルというわけではないが、個性的な1台ということでピックアップさせていただいた。

販売台数的には成功したとは言い難いアルナであったが、生産技術などに関しては両社とも得るものが多かったという逸話もあり、そういった面では評価されるべきモデルと言えるだろう。
仕入れることもあればこっちから送り出すことも
3)ランドローバー・ディスカバリー → ホンダ・クロスロード
今でこそヴェゼルを筆頭に人気のクロスオーバーSUVを抱えるホンダだが、90年代前半は自社でSUVを生産していなかった時期が長らく存在していた。当時は自社の工場で大きなボディのモデルを生産することができないという物理的な問題があったためである。
そのため、ホンダはいすゞからミューやビッグホーンのOEM供給を受けていたのだが、そのほかに当時提携関係にあったローバーグループから、ランドローバー・ディスカバリーのOEM供給を受けたのである。

クロスロードと名付けられたこのモデルは、本家と同じく3ドアと5ドアをラインアップ。ディーゼルモデルはラインアップされなかったが、本家ディスカバリーとまったく同じ価格で販売され、ローバー系のディーラーがなかった地方ではそれなりに歓迎されたようだ。

4)日産NV200バネット → シボレー・シティエクスプレス
日産の商用バン&ミニバンとして販売されているNV200バネットは働くクルマとして街中で見ない日はないと言えるほど走り回っている。一時期は三菱デリカバン及びデリカD:3としてもOEM供給がされていたが、じつは海外でもOEM供給先があったのだ。

それがシボレーのシティエクスプレスである。すでにシボレーにはエクスプレスというフルサイズバンが存在しているが、それの小型版とも言える位置づけとなっている。

ただし、厳密にいうと日本仕様のNV200ではなく、海外仕様のNV200がベースとなっているため、Bピラーが太く、ホイールも5穴となるヘビーデューティシャシーとなっていた。