上場企業の2026年1~3月海外M&Aは71件、「日米」案件を中心に活発化

2026年1~3月における上場企業の海外M&Aは71件(適時開示ベース)と、前年61年を16%上回り、第1四半期としてこれまでで最も多かった。M&Aを通じた成長分野への展開加速や事業の入れ替えにアクセルを踏み込んだ形だ。

日本企業による買収が前年より3割以上増える一方、海外企業の対日買収も活発化し、なかでも米国が買い手となる案件は前年比ほぼ倍増の13件を数えた。

インバウンド比率が40%超える

国境をまたぐ海外M&Aは日本企業が買い手のアウトバウンド(IN‐OUT)案件と、外国企業が買い手のインバウンド(OUT‐IN)案件に分かれる。

2026年1~3月の海外M&Aをみると、アウトバウンドが42件、インバウンドが29件で、全71件に示すインバウンド比率は40.8%だった。

1~3月は多くの企業にとって事業年度末にあたり、駆け込みの形で非中核事業や不採算事業の売却案件が増え、その際、投資ファンドを含む海外勢が受け皿(買い手)となるケースが多いことから、例年、インバウンド比率が上昇する傾向が見られる。

前年の同じ時期はアウトバウンド31件、インバウンド30件と両者がほぼ拮抗していた。

上場企業の2026年1~3月海外M&Aは71件、「日米」案件を中心に活発化
※2026年1~3月、適時開示ベース

米国関連が全71件中、27件を占める

1~3月の海外M&Aを取引相手の国・地域別にみると、米国が27件(前年20件)と全体の38%と4割近くを占め、2位の中国7件(同4件)を大きく引き離す。

◎2026年1~3月の海外M&A:国・地域別件数

アウトバウンド取引 インバウンド取引 アイルランド 1 イスラエル 1 インド 1 インドネシア 1 英国 3 オランダ 1 カナダ 2 韓国 1 1 オーストラリア 3 シンガポール 5 1 スウェーデン 1 1 タイ 3 中国 7 ドイツ 1 トルコ 1 フィリピン 2 フィンランド 1 フランス 1 1 米国 14 13 ベトナム 1 香港 1 マレーシア 1 リヒテンシュタイン 1 計 42 29

米国の内訳はアウトバウンド14件(前年13件)、インバウンド13件(同7件)。1~3月段階で、国内案件を含めて金額1000億円超の大型M&Aは10件あったが、9件は米国関連で、規模でも他を圧倒した。

目を引いたのはインバウンド、すなわち米国企業による対日買収がほぼ倍増した点。牽引役は投資ファンド勢で、13件中8件にかかわった。

規模が最も大きいのがプリント基板向けインキ(保護膜)世界トップの太陽ホールディングスに対する米ファンドのKKRによるTOB(株式公開買い付け)。自己株取得分を含めた買収総額は4910億円に上る。

株式を非公開化し、中長期視点に基づいた経営戦略の遂行を可能する体制づくりを狙いとし、TOBは10月上旬にも始まる。

太陽HD、非公開化で物言う株主と決別へ

太陽HDは物言う株主として知られる香港投資ファンドのオアシス・マネジメントなどとかねて対立状態にあった。昨年6月の太陽HDの定時株主総会では佐藤英志社長(当時)の取締役再任が反対多数で否決される異例の事態となっていた。

TOB受け入れの背景には株主対応への負担をなくす狙いもあるとみられる。

建築・自動車用ガラスメーカーの日本板硝子は経営再建の抜本策として米ファンドのアポロ・グルーバル・マネジメントと組んで株式を非公開化する。約1650億円の第三者割当増資を引き受けるアポロの傘下に入る。

日本板硝子は2006年、英国の同業大手ピルキントンを約6100億円で買収したが、これが裏目に出て赤字が常態化していた。

ファンドだけでなく、米国の事業会社が買い手となる巨額案件もあった。ルネサスエレクトロニクスは発信器などのタイミング事業を約4680億円、キリンホールディングスはバーボンウイスキー製造の米国子会社フォアローゼスを約1200億円で売却することを決めた。

日本企業にとって対米買収は海外M&Aのホットコーナー。1~3月のM&A全体で金額1、2位を占めたのは米国関連だ。三菱商事はシェールガス開発のエーソンを約8200億円、住友林業は戸建住宅大手のトライ・ポイント・ホームズを約6500億円で買収すると発表した。

ソニー、テレビ事業を中国TCLとの合弁会社に分離

日中M&Aはどうか。7件中、日本企業の対中買収はゼロで、すべて中国側が買い手だった。日本企業が中国子会社・事業を現地合弁パートナーなどに売却する案件が5件を占め、対中ビジネスの戦線縮小を物語る。

そうした中、日中をまたぐ本格的なM&Aとして注目されたのがソニーグループの案件。テレビ事業を分離し、中国の大手テレビ大手であるTCLエレクトロニクスホールディングスと設立する合弁会社に移管することで合意した。

合弁会社の出資比率はTCL51%、ソニー49%で、ソニーにとってテレビ事業の事実上の譲渡となる。2027年4月の事業開始を目指している。

テレビ事業をめぐっては過去に東芝が2018年、中国の海信集団(ハイセンス)に売却した例がある。

2026年1~3月発表:海外M&Aの金額上位(100億円超)

社名内容金額発表 1 三菱商事 シェールガス開発の米国エーソンを子会社化 8210億円 1月 2 住友林業 戸建住宅大手の米国トライ・ポイント・ホームズを子会社化 6549億円 2月 3太陽ホールディングス米投資ファンドKKRによるTOBで株式を非公開化4907億円3月

4

ルネサスエレクトロニクス タイミング事業を米SiTimeに譲渡 4680億円 2月 5 MCJ 米投資ファンドのベインキャピタルと組んでMBOで非公開化 2079億円 2月 6 日本板硝子 株式を非公開化して米ファンド傘下で経営再建へ 1650億円 3月 7 マンダム 同社に対して米投資ファンドのKKRが対抗TOBを実施 1399億円 1月 8 キリンホールディングス バーボンウイスキー製造の米国子会社フォアローゼスを現地社に譲渡 1200億円 2月 9 大塚ホールディングス 米国の医薬品開発企業トランゼント・セラピューティクスを子会社化 1116億円 3月 10 オリックス 足場・仮設機材子会社のSGKホールディングス(東京都港区)を米投資ファンドのカーライル・グループに譲渡 958億円 3月 11 ソラスト アジア系投資ファンドのMBKパートナーズと組んでMBOで株式を非公開化 905億円 3月 12 豆蔵 スウェーデン投資ファンドのEQTによるTOBで株式を非公開化 587億円 1月 13 INFORICH 米投資ファンドのベインキャピタルと組んでMBOで株式を非公開化 434億円 2月 14 森永製菓 餅アイスクリーム大手の米国The Mochi Ice Creamを子会社化 212億円 3月 15 保土谷化学工業 ハンガリーの化学メーカーFramochemを子会社化 166億円 3月 16 塩野義製薬 睡眠障害治療薬開発の米国合弁会社Shionogi‐Apnimed Sleepを子会社化 159億円 3月 17 メディアドゥ 漫画・ライトノベル翻訳出版の米国Seven Seas Entertainmentを子会社化 124億円 3月

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