恋愛離れの時代に、なぜ恋リアは再ブームしているのか? 『今日好き』プロデューサーが語る、高校生の恋愛と大人の恋愛の決定的な違い
恋愛離れの時代に、なぜ恋リアは再ブームしているのか? 『今日好き』プロデューサーが語る、高校生の恋愛と大人の恋愛の決定的な違い

若者の「恋愛離れ」が語られる一方で、恋愛リアリティ番組は今も根強い人気を集めている。なかでもABEMAの『今日、好きになりました。

』シリーズは、現役高校生たちが旅の中で恋に向き合う番組として、10代を中心に長く親しまれてきた。2017年の放送開始からシリーズを重ね、今年10年目を迎える。
 

恋愛への向き合い方が変わりつつある時代に、『今日好き』は何を映しているのか。同番組のプロデューサー・瀧川理香子氏に、10代の恋愛観の変化、他の恋リア番組の印象、そして若い世代との距離の取り方について聞いた。

若者の恋愛は「平等な関係性」を求めている

──瀧川さんは、もともと『今日、好きになりました。』(『今日好き』)のファンだったそうですね。視聴者として、番組のどういうところに惹かれたんですか?

瀧川理香子(以下同) 高校生たちが、恋愛という経験を通して、初めての感情に触れていく瞬間があるところですかね。あるきっかけで、好きな人を見る目が変わったり、口にする言葉がそれまでより豊かになったりするんですよ。まるで視聴者である自分もその瞬間に立ち会っているような感覚になる。

かつて自分も感じたことのある感情を、画面の向こうにいる子たちも同じように感じているんだなと思えるところが、『今日好き』の魅力だと思います。

──番組は今年で10年目を迎えました。この10年間で、若い世代の考え方や価値観に変化を感じる部分はありますか?

最近は「若者の恋愛離れが深刻化している」みたいなことも聞きますし、「傷つくリスクは高いけれど、うまくいくかは分からない」ことを頑張ろうとする価値観って、今はもう古いのかなと思ったり……。今の子たちには「自分の思いを簡単に他人に与えない」という感覚があるのかもしれません。

でも、恋愛への憧れがまったくないかと言われたら、絶対にそうではないと思うんです。お互いがちゃんと同じ感情でいられる平等な関係性を、すごく重視するようになったのかなと感じています。

だからこそ、その子が本当に好きになれるのはどういう人なのか、どういう人ならマッチするのかなど考えています。

──最近では“おひなさま”こと長浜広奈さんのように番組きっかけで、人気が出る方も多いかと思います。オーディションでは、どんなところを見ているんですか?

実際にひとりひとり会って、やり取りをしながら決めています。会話の中で、自然と空気が弾む子っているんですよね。こちらの質問に対するリアクションがよかったり、自分のことをどんどん言葉にしてくれたりする。

失敗した恋愛をかなり赤裸々に打ち明けてくれる子もいますし、中には「自分、めちゃくちゃモテるんです」みたいな武勇伝を披露してくれる子も……。

最近だと、「隣の席になった子とすぐ熱愛報道が出ちゃうんです」と言っていた子がいて。そういう独特な言葉の選び方ができる子は、やっぱり面白いなと思います。

大事なのは「目を見て話す」こと

──最近の恋リアだとNetflixの『ラヴ上等』が大きな話題になりました。瀧川さんはご覧になりましたか?

もちろん見ました。Netflixさんの恋愛リアリティショーのすごいところは、「知らない世界を見せてくれること」だと思っていて。

たとえば『ラヴ上等』だったら、ヤンチャな世界での恋愛は体験したことがないですし、『ボーイフレンド』だったら、男性同士の恋愛にどういうハードルがあって、どう乗り越えていくのかを私は知らなかった。見たことのないものを提供してくれるから、視聴者の気持ちを惹きつけるんだと思います。

あと、「大人の恋愛」って、お酒を飲んで距離が近くなることがきっかけとして多いなと思っていて。それで一気に感情にブーストがかかることもありますよね。でも高校生は、もちろんお酒を飲まない。もっと素の状態で恋愛をしていますよね。その違いは大きいと思います。

──大人はお酒で距離が縮まるとして、高校生の場合はどうやって人を好きになっていくんでしょうか。

何気ない些細な出来事、たとえばずっと目を見て話してもらえることとか、そういうことが彼らにとって一番ドキドキすることなんだと思います。

最初は、そもそも目を合わせること自体ができなかったりするんですよ。好きな人を前にすると、急に言葉が出てこなくなったり、いつも通りに振る舞えなくなったりする。でも、そこで相手がちゃんと目を見て話してくれると、一気に気持ちが動くことがある。

大人みたいに、無理に気持ちを昂らせる必要がないというか、お酒の力を借りなくても、目を見て話すだけで十分にドキドキできるんですよね。そういう小さな出来事が、高校生にとってはすごく大きいんだと思います。

だから、私たちもまずは目を見て話すことから、高校生たちには頑張ってほしいなと思います。相手と向き合うきっかけにきっとなると思いますし、そこから先は、本当に本人たちの感情が動くかどうかなんだと思います。

変わらない番組作りの本質

──番組作りの上で、普段からSNSのリアクションを意識することもありますか?

それを踏まえて番組作りの方針を大きく変えるということはありませんが、「そういうところを見てくれているんだ」と勉強になることはあります。

たとえば、恋愛とは直接関係ない場面でも、誰かの水を汲んで渡してあげるとか、緊張しすぎて飲み物をたくさん飲んでいるとか、そういう些細な行動が、その子らしさとして視聴者に伝わることがあるんです。そこに対する反応があると、次はそういうところにも注目してメンバーを見てみようと思います。

それに参加者の子たちからすれば、自分が失恋した姿をたくさんの人に見られるわけじゃないですか。それで「私は恋愛できないのかもしれない」とか、「魅力がないのかもしれない」と落ち込んでしまったり……。

そもそも恋愛にはタイミングや相性の問題だってあるわけですし、そこは私も「大丈夫だよ」という気持ちでいます。

──視聴者が番組に求めるものも10年間で変わってきているんでしょうか。

あまり大きく変わったとは思っていないです。『今日好き』が提供できる価値は、本質的には「高校生たちが等身大で恋愛する姿」以上でも以下でもないと思っています。

視聴者の方の中には、過去の自分の恋愛経験と重ねて見る人もいれば、「憧れの恋愛」として見ている小・中学生もいますし、もちろん同世代の子が応援して見ることもある。そういう感情が軸になって成り立っている番組だと思うので、重要な部分は変えないようにしています。

恋リアに学ぶ、若い世代とのコミュニケーション

──集英社オンラインの読者の中には、職場などで若い世代との距離感に悩んでいる人もいると思います。普段から高校生と接する機会の多い瀧川さんから、何かアドバイスやコツはありますか?

そうですね……。ひとつあるとしたら、「若い世代の子たちが好きなものに自分もちゃんと触れてみること」ですかね。

たとえば最近だと、ヨーグルトアイスのスイーツが流行っていて、私もよく食べています。わざわざ「知ってるよ」と言いたいわけではないんですけど、「これおいしいよね。私も昨日食べたんだよね」くらいの軽いノリで話すと、向こうも「そうなんだ」と思ってくれやすいんです。年の差をあまり感じずにいられるというか。

こちらが上から「若い子たちの流行を勉強しています」みたいな姿勢で行くより、自分も楽しんでいる方が、会話はしやすくなる。大事なのは、一緒に同じものを面白がれるかどうかなのかなと思います。

あと、私は普段から積極的に自己開示するように心がけています。

「昨日、起きられなかったんだよね」とか、「今日、前髪うまくいかなかったんだよね」とか、本当にちょっとしたことを話すんです。

自分の恋愛についての話も、参加者の子たちに普通に話したりします。そうすると、彼らも「遠い存在の大人」だとは思わなくなるんですよね。向こうから「この前のあれ、どうだったんですか?」と聞いてくれることもありますし、自然と会話も増えてくる。無理に相手に合わせて理解しようとするのではなく、まずは自分のことを出していく、というのは大事かもしれません。

──それを学ぶために恋リアを見るのも良さそうですね。

そうですね(笑)。あとおすすめなのは一人でなく、みんなで観ることだと思います。そうすればおのずとそれぞれの恋愛観の話などになっていいのかもしれません。

取材・文・撮影/キムラ

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