中国メディアの中国新聞週刊は29日、人工知能(AI)技術の発展などで中国のショートドラマ界に激震が走ったとする記事を配信した。

記事によると、中国では映画市場の低迷や長編ドラマの制作減少が起きる中、これまで急成長してきたショートドラマ市場も転換期を迎えた。

先日開催されたイベントでは俳優のトン・ズージエン(董子健)が「最近暇です。出演のオファーを待っています」とステージ上で呼び掛けて会場の笑いを誘ったほか、リウ・ハオラン(劉昊然)も「仕事をください」とアピール。有名俳優までもが仕事不足をうかがわせる発言を相次いで行ったが、名前があまり知られていない俳優の置かれた状況はさらに深刻だ。

約200本のショートドラマで「俺様社長」を演じ、一時は日給6000元(約14万円)を得ていたジャン・シャオレイ(張小磊)は今年の春節(旧正月)以降、急に仕事が減り、出演料も3分の1程度にまで下落した。4月は仕事が1本しか入らなかったため、現在は故郷の青海省に戻って農作物の栽培で生計を立てている。

ジャン・シャオレイによると、忙しかった時期は3日間ほとんど眠らずに撮影を続けることも珍しくなかった。しかし、今年2月には撮影前に突如、作品そのものが中止になりかけるケースが発生したという。

背景にあるのはAI技術の急速な発展だ。今年2月、動画生成モデル「Seedance 2.0」が公開され、ショートドラマプラットフォームはこれとほぼ同時に最低保証制度を縮小。特に中小の制作チームではこれまで1作品当たり20万~30万元(約480万~710万円)あった最低保証金が廃止され、制作コストの負担が急激に増した。技術革新と制度変更が同時に起こったことでショートドラマ業界には激震が走った。

巨大撮影基地の横店ではその影響が顕著に表れており、この3年の間に横店は「縦店(ショートドラマの撮影基地)」から、さらに「空店(空っぽの横店)」へと変化。

エキストラ俳優によると、今年は一つの宦官役に100人以上が殺到する状況という。

AIの普及は俳優の仕事そのものに影響を与え始めており、映画や長編ドラマでは映像効果などにAIが導入されているが、ショートドラマでの変化はさらに急速だ。2026年第1四半期に公開された約12万8000本のショートドラマのうち、95%以上がAI制作となり、実写作品の制作本数は前年同期比75%減となった。

撮影現場では背景をAIで生成し、エキストラについては「基本的に必要なくなった」との声も聞かれる。さらに一部の制作会社では、中堅俳優やエキストラからデジタル肖像権を買い取り、AI学習用データとして利用する動きも見られる。「AIが最初に切り捨てたのは俳優だった」との声も上がる。

ショートドラマ界に激震、一つの役に100人以上が殺到―中国メディア
横店影視城

ただ、映像業界関係者は悲観一色ではない。近年は低予算ながら口コミで大ヒットした映画も現れており、「業界が冷え込んだからこそ、改めて作品の中身が問われる時代になった」と指摘する。

最近では横店でも実写ショートドラマの撮影が少しずつ戻り始めており、ジャン・シャオレイにも再び出演依頼が届くようになった。今は農作業に追われているが、機会があれば再び俳優として現場に戻りたいという。(翻訳・編集/野谷)

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