「投資型」から「消費型」経済へ、構造転換中の中国経済

中国国家統計局によると、今年前半の経済成長率は4.7%で、全国人民代表大会(全人代)で打ち出された目標値4.5%から5%の範囲内にあるが、不動産問題などまだ問題を抱えていることから、中国経済の先行きについて悲観的な見方もある。しかし、国際通貨基金(IMF)の世界経済成長予測によると、今年の世界経済の成長率は3%で、中国は4.6%だ。それに対し、日本を含む先進国が1.7%であることを考えると、中国の経済成長率は高いレベルにある。

中国の経済成長のエンジンというと、輸出、固定資産投資、個人消費が挙げられる。物品貿易は前年同期比16.9%増と好調で、成長のエンジンとしての役割を果たしているが、固定資産投資(農家含まず)は前年同期比5.7%減となった。

中国人民大学の楊瑞龍教授が22日にWeChatアカウント「中国マクロ経済フォーラム」に発表した記事は、民間企業の固定資産投資の落ち込みが大きかったと指摘する。その要因としては、「内巻」といわれる企業間の激しい競争がもたらした利益減少が大きいとしている。

ただ、中国政府は10年ほど前から文書の中で、経済成長のエンジンとして、個人消費の役割が大きいとし、「投資主導型」から「消費主導型」への構造転換を図ってきた。この数年で言われたことではなく、今は構造転換の過程にある。

個人消費不振の原因は「購買力低下」

個人消費を見ると、1~6月の社会消費財・サービス小売総額は前年同期比で2.7%増だった。うちサービス小売額が5.3%増で、消費財小売額が1.1%増だった。後者の伸びが鈍化していることから、中国の消費者はモノの購入に慎重になっていることが分かる。ただその一方で、前者の伸びが大きくなっていることから、先進国のようにサービス経済の地位も上がっていることを意味する。

個人消費の伸びがあまり大きくない原因として、前出の楊教授は「価格要因ではなく、購買力の低下」を挙げ、「住民の収入が継続的に改善されてこそ、消費需要の実質的な拡大が可能になる」と述べた。

住民消費が振るわないと、生活水準が下がったように捉えられがちだ。6月14日発売の中国共産党理論誌「求是」掲載記事は、「2025年の住民消費率が40%で、一部の国と開きがある」と述べた上で、そうした見方に反論した。

記事は、中国の民生(国民生活)サービス価格は低く抑えられており、先進国とはギャップがあるとし、中国政府の取り組んでいる国民生活重視の政策は統計データに現れていない部分があるので、「指標偏重主義」を捨て去るべきだと主張する。

記事が指摘するように、中国共産党は「人民を中心とする」理念を堅持し、買い物や手続きのデジタル化や高速鉄道ネットワークの整備など一連の措置を取ってきた。ただ、大都市・地方都市間の医療資源、教育資源のアンバランス、社会保障の一層の整備など改善すべき問題はまだある。さらにいえば、購買力アップにつながる施策も必要だ。

また、WeChatアカウント「首席経済学家論壇」の12日付の記事に掲載された前HSBC銀行大中華区外国首席エコノミストの屈宏斌氏執筆の記事は、世界との関わりの観点から、サプライチェーンの分業に大きく依存する中国を含むアジア経済圏は外部要因に大きく影響されるというのが弱点であり、「国内消費市場を深く耕し、内需を系統的に拡大することは、自国の雇用を安定させるための緊急対策であるだけでなく、世界の経済的不均衡に対する解決策を中国が示すための不可欠な道筋でもある」と述べ、国内市場の振興によって外部要因からのショックを吸収できるとしている。屈氏の指摘は中国政府の「国際・国内の双循環」を念頭においたものと思われる。この構想は「閉鎖主義」に陥るのではなく、外国との交流も重視している。ゆえに、中国政府は政策文書で「自国のことにしっかり取り組む」と述べている。

また、25年の中央経済工作会議でも出てきたが、「供強需弱」という言葉がある。文字通り「供給サイドが強く、需要サイドが弱い」という意味だが、これは需要投資が消費拡大の「呼び水」となっていないことを意味する。供給サイドの強化は雇用創出などの面から見ても重要だが、需要サイドの活性化に向けた対策はやや遅れていた。

分配を重視せよ、消費振興につながる包括的措置を

24年12月に開かれた中央経済工作会議では、「中国経済光明論」を持ち出して、中国経済の先行きが明るいと強調し、「期待(予想)」の安定化に力を入れたが、今はその言葉は会議の報道文には出ておらず、状況が厳しい中で「安定を保ちつつ前進する」という基調になっている。

個人消費の拡大のカギは分配問題にある。前出の屈氏は「内需の拡大とは、単に消費券(クーポン)の配布や短期的な購買刺激といった一時的な措置を行うことではなく、所得分配の体系的な改善、社会保障制度の充実、中低所得層の収入向上、都市と農村の間の消費の障壁を解消する長期的な取り組みだ」と述べており、持続可能な内需拡大には人々が消費してもいいと思えるような環境をつくることが大事だとしている。前出の楊教授も、購買力アップには「雇用の安定」が必要としている。

中国共産党は数年前、「共同富裕」を再度強調して、企業による寄付などを使っての所得分配の改善に努めた。今は好調な輸出部門が生み出した富をどのように分配するかも重要な問題となっている。

中国政府は25年3月に「消費喚起特別行動プラン」と題する文書を発表し、「消費を大いに喚起し、国内需要を全方位で拡大し、増収と負担軽減で消費能力を高め、質の高い供給で有効需要を生み出し、消費環境の最適化で消費意欲を高める」ことを目的に、「氷雪経済」や観光などのサービス消費や新しい消費の振興だけでなく、農民・都市住民の所得アップ、社会保障、雇用などの措置も述べられ、専門家の指摘した「購買力アップ」に資する政策も盛り込まれた。

また、26年7月に発表された「消費拡大に向けた第15次五カ年計画」は、「2030年までに消費市場の全体規模は持続的に拡大し、家計の消費率が明確に向上する。社会全体の商品・サービス消費は速やかな成長を遂げ、社会消費財小売総額は約60兆元に達する見込みで、消費が経済成長をけん引する役割を一層強化するようにする」と述べている。「プラン」同様、サービス消費などの拡大のほかに、社会保障や所得アップに向けた措置が打ち出されており、「供給・需要サイド」双方の強化を図っている。

筆者の周りの中国人を見ていると、中国の消費者は以前に比べて節約志向で、消費に慎重になっている。中国政府はここ数年、家電の買い替え補助で消費刺激を図ってきたが、それは持続可能とは言い難い。

今、「体験型消費」や「感情消費」がよく中国の経済メディアに登場しているように、中国の消費は高度化しており、既存のモノの購入拡大を狙うのではなく、それに「文化的要素」を加えたというモノや、アフターサービスの充実などで「差別化」を図る必要がある。

以上、見てきたように、中国経済はやや減速気味だが、戦略的に見れば本格回復に向けて手を打っており、悲観すべきものではないと筆者は考える。

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