シンガポールメディアの聯合早報は26日、中国で発生した2つの騒動をめぐり、「中国の警察の『事なかれ主義』的な対応が問題になっている」と伝えた。

助けたのに賠償請求、派出所も容認

今月17日、湖南省衡陽市祁東県の店に体調不良を訴える男性が現れた。店側は椅子に座らせて休ませるなど介抱したが、男性が意識を失ったことから救急車を呼んだ。

男性は搬送先の病院で死亡した。男性の遺族は「店側にも責任がある」などと主張して10万元(約236万円)の支払いを要求し、「応じない場合は(男性の)遺体を店の前に置く」と迫った。

その後、司法機関や派出所が調停に入った結果、「店側に落ち度はない」と認定されたが、それにもかかわらず遺族側は執拗に賠償を求め続け、最終的に店側が「人道主義的な配慮」で1万9000元(約45万円)を支払うことで調停がまとめまれた。ところが、この件が報じられるとネット上で遺族に対する批判が殺到した(その後、店側には救済措置が取られた)。また、責任のない者にも一定の譲歩を迫り「事なかれ主義」的に丸く収めようとした派出所の対応にも批判の声が上がった。

中国国営の中央テレビ(CCTV)のウェブサイト「央視網」は論評で、「調停が成立したからといって、その対応が正しかったとは限らない。世間が懸念しているのは金額ではなく、『金を払って事を収める』ことが慣例になってしまうことだ」と指摘。「『人道主義』という4文字で法律の境界を曖昧にしてはならない。責任があれば法律に基づいて責任を負い、責任がなければ堂々としていればいい」と論じた。

また、河北日報傘下の「縦覧新聞」も、「表面的には調停によって解決した民事紛争に見えるが、実際には理不尽な騒ぎを起こす行為を容認したものだ。罪のない側が金を払うことで、表面的な平穏を手に入れた」と批判。さらに、「騒ぎを起こして圧力をかければ、公権力が罪のない側に妥協するよう説得するというのは悪しき前例となる。

このようなやり方では、一時的にトラブルを収められても『道理がなくてもとにかく騒げばいい』という風潮を助長し、社会の公平や正義を損なうことになる」とも指摘した。

このほか、SNS・微信(ウィーチャット)の民間系情報アカウント「金水路7号站」は、「(派出所は)単になあなあで済ませたというだけではない。まじめな人をいじめたようなもの。善人に損失を負わせ、道理のない者を思い通りにさせている。法律の規定を無視し、違法行為を見て見ぬふりをしている」と批判。また、遺族が「賠償しなければ遺体を店の前に置く」と脅したことについて、「明らかな脅迫。目の前で脅迫が行われているのに警察は店側に立たなかったばかりか、(店側に不利な)調停にも加わった。まさに悪事を働く者を助ける行為だ」と断じた。

「責任追及するな」と被害女性を説得

聯合早報の記事はさらに、警察による「事なかれ主義」的対応はこの一件だけではないとし、今月4日に青島市嶗山区の公園で発生したトラブルにも言及した。この件では、女性が公園内で写真を撮影していたところ、ジョギング中の男性から声をかけられた。女性が拒絶したところ、男性は突然激高して「規則に違反して撮影した」「道を不当に占有した」などと怒鳴り、土下座による謝罪を要求した。女性は自分の話し方などが悪かったことについて謝罪したが、男性はなおも執拗に責め続けた。

女性から通報を受けた警察官が駆け付けたが、ネットユーザーを憤慨させたのは警察官が「男性は精神的に問題がある」などとして「責任追及はしないように」などと女性を説得、事件として立件しなかったことだ。この過程は女性がSNSに投稿した動画にすべて収められていた。その後、相手の男性の名前や、不動産仲介業者をしていることなどがネットユーザーによって突き止められたほか、騒動後に男性が別のアカウントを使って女性のSNSのコメント欄に「その場でお前を殴るべきだった」などと書き込んでいたことも判明した。

ネットユーザーからは男性に対する批判のほか、「あのなあなあで済ませた警察官には処分や懲戒を科さないのか?」「警察に通報したのに、逆に加害者の盾になっている」「警察は当初何もしなかったのに、騒ぎが大きくなってから対応するとはひどい」といった警察官への厳しい声も上がった。また、ネット上の追及を受けて、青島市文化観光当局がコメント欄を閉鎖したことも、「当局が身内をかばっている」として火に油を注ぐ形となった。

嶗山区の公安当局は同20日になってようやく正式に対応する旨の通知を発表。これについて中国の官製メディア・人民日報は「長時間にわたって公衆に何の説明もしなかったことは、確かに対応の遅さに対する世論の疑問を招いた。このような事件への対応では、迅速かつ積極的に行動することがより一層求められる」と論評した。

聯合早報の記事は、「中国の地方警察がこの2つの事件で優先したのは、できるだけ早く終わらせ、過去のことにしてしまうことだったようだ。『なあなあ』で済ませるような対応の結果、かえって問題が広範囲に及び、事態の収拾をさらに難しくすることとなった」と評し、「中国の警察は『急いては事を仕損じる』という道理をより深く実感しているだろう。今後はより明確な立場を貫き、毅然として対応し、法治社会と秩序を支える強固な後ろ盾となることが期待される」と結んだ。(翻訳・編集/北田)

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