2026年8月29日、中国のポータルサイト・捜狐に「なぜ日本漫画の中国語翻訳版は繁体字ばかりなのか?」と問い掛ける記事が掲載された。
記事は、「中国では簡体字が一般的に使われているにもかかわらず、ネット上で出回っている日本漫画の中国語翻訳版は、繁体字のものが多い。
そして、「最も現実的な理由はフォント資源である。中国語翻訳が始まった初期の頃は、繁体字用のフォント資源の方がはるかに充実しており、日本漫画の原版に近い雰囲気を再現できるフォントを見つけやすかった。漫画の翻訳は、単に日本語を消して中国語を入力するだけの作業ではない。本格的な写植では、フォント、文字サイズ、縁取り、吹き出しの形状、さらには作品全体の画風との調和まで考慮しなければならないのだ」と説明した。
また、「翻訳経験者によれば、日本の漫画で使われている特殊なフォントは、簡体字では対応する字形が存在しないことがあるという。たとえ大半の文字が揃っていても、一文字だけ収録されていなければ『□』のような欠字になってしまう。その点、繁体字用フォントのほうが代替を見つけやすかったようだ」とした。
さらに、「重要なのは、繁体字は画数が多く、吹き出しの中で文字が占める面積も大きいということである。一見すると不思議な話だが、画像編集を行う側にとっては非常に現実的な問題である。日本の漫画では、不規則な形の吹き出しが多く、日本語を消した後には背景まで修復しなければならない。繁体字は字形が複雑で視覚的な面積も広いため、元の文字があった部分を隠しやすいのである」と言及した。
記事は、「見落とされがちな要素として、日本漫画特有の縦書きが挙げられる。日本の漫画は縦組みが基本である一方、多くの簡体字フォントは横書きを前提として設計されてきた。そのため、簡体字フォントを縦書きで使用すると、一部の句読点や字形の見え方があまり良くない場合がある。これに対し、繁体字フォントは縦書きに対応した資源が比較的充実しているのだ」と述べた。
また、「もう一つ重要な理由がある。初期に流通していた漫画の多くは、もともと香港や台湾で出版された正規版や、それに関連するデータをもとに広まったものだった。当時は、中国のネット漫画翻訳文化はまだ現在ほど発達しておらず、香港・台湾のほうが漫画資源も翻訳経験も先行していた。そうした積み重ねの中で、フォントや制作手法そのものが一種の『伝統』として受け継がれていったのである」と紹介した。
さらに、「コメント欄では、もう一つ現実的な理由も挙げられていた。繁体字による翻訳は、必ずしも中国の読者だけを対象としていたわけではないという点である。多くの翻訳者たちは、より広い中国語圏全体に作品を届けたいと考えていた。中国の読者も一般的には繁体字を読むことができるため、当時は繁体字のほうが幅広い地域に対応できるという利点があったのだ」と説明した。
記事は、「こうして振り返ってみると、繁体字で翻訳されている漫画は、香港・台湾の翻訳者たちによるものだと思われがちだが、実際には繁体字の翻訳作品の多くが、中国のネットユーザーによって制作された可能性もあることが分かる。つまりこれは、歴史的な経緯やフォント資源、組版の慣習、そして翻訳コミュニティーの文化が重なって生まれた結果なのだ」と強調した。
その上で、「簡体字フォントは飛躍的に充実し、正規の漫画配信サービスも普及した。公式の中国語翻訳版でも、簡体字版と繁体字版が同時に提供されることは珍しくない。それでも、かつて築かれたフォント資源や制作習慣、データの流通経路は、現在のネット漫画文化にもなお大きな影響を与え続けている。結局のところ、翻訳者たちが本当に頭を悩ませているのは『簡体字にするか繁体字にするか』ではなく、いかに原作の画面やフォント、そして読書体験を忠実に再現するかなのだろう」と結んだ。(翻訳・編集/岩田)











