大ヒット公開中の「映画プリキュアオールスターズNewStage3 永遠のともだち」小川孝治監督にインタビュー。「NewStage」シリーズのフィナーレの本作、もう見た人も「もう1回見たくなる」ガイドを小川監督に語ってもらった。



■最初からクライマックス!

──バトルがとにかくかっこよくて引き込まれました。

小川 今回は20〜30代のアニメーターが多く集まりました。みんなが思いっきりやってくれた結果、派手になっています。最初からクライマックス(笑)

──「NewStage2」の属性攻撃バトル、今回は超肉弾戦。シリーズの違うプリキュア同士の共闘もアツいです。

小川 キャラクターデザインが同じ川村敏江さんの、プリキュア5とスマイルプリキュアがセットで戦っている。
5とスマイルはカラーも一緒なので、組み合わせて一緒の画面で見たいという思いが叶いました。

──35人以上のプリキュア全員が大活躍したという印象です。

小川 「なるべく平等に作ろう」ということが頭にあったんです。今回は永富大地プロデューサーがいろいろがんばってくれて、プリキュア映画としては最大の人数を呼ぶことができた。大勢が出演できるので、プリキュアひとりひとりに「この映画に出てよかった」と思ってもらいたかった。ファンもそう。
どの世代のファンが見ても納得してもらえるように、「出来る限り、みんなを活躍させよう!」という気持ちで作りました。

──キュアムーンライトとキュアエースのシーン、「ムーンライトらしい!」と思いました。

小川 バトルは全般的に楽しんでほしい。特に会心のバトルは、ブラックとホワイト! 作画はブラックとホワイトにすごく思い入れがある方で、映画が決まった瞬間から「ブラックとホワイトは俺が描く! 描かせて!」ってずっと言い続けてくれて。特別に気合を入れてバトルをつくりました。作画と、役者の2人のアドリブと、全部重なってすごい迫力になったんじゃないかな。


──オールスターズを見るたびに、初代はかっこいいな〜と思います。画面が熱くなる感じですよね。強い。

小川 この2人が動くと熱くなっちゃうんですよね、自然に。公式な設定ではないですけど、強く見えちゃう。


■監督抜擢の理由は「口が滑った」!?

──(ハミィのお面を持って来ている小川監督)ハミィがお好きなんですか?

小川 そうですね、妖精の中ではハミィが一番大好き。
机の上はハミィグッズだらけです。

──小川監督は「スイートプリキュア」の演出をされてます。

小川 スイートプリキュアを3本やってて、そのうちの一本がキュアビートが変身する話(21話)。ハミィとセイレーンの友情話なんですが、色んな人の協力があってすっごくウルッとくる内容になったので、思い入れがありますね。三石琴乃さんの芝居もすごくキャラとマッチしていてかわいいんですよ。あとは、単純にネコが好き(笑)。


──プリキュアに初めて関わられたのって、「ハートキャッチプリキュア!」(7話演出)ですが、思い入れがあるのはスイートのほうだったり……?

小川 いや、自分が関わったプリキュアは全部思い入れがありますね。プリキュアはやっているうちにどんどん好きになる。でも「スマイルプリキュア」は関わっていなくて、自分もプリキュア卒業かなー?と思ってた。

──そんなタイミングで、「NewStage2」の監督に。小川監督に白羽の矢が立った理由は?

小川 あー……あの、口が滑ったんですよ(笑)。エキレビに載っていた梅澤プロデューサー(プリキュア二代目プロデューサーの梅澤淳稔P)のインタビューでは、「(小川監督が)『もうそろそろ俺じゃねーのか』と思っていたんじゃないか」と言ってましたが、あれは冗談で! 演出で関わった「NewStage1」の打ち入り忘年会で、スタッフで集まってた。
「スマイルプリキュア」の劇場版監督が黒田成美さんで、どんどん若い世代が監督になってる。酒の席で「黒田さんがやるなら自分にもやらせてほしい!」みたいなことを言ってた。梅澤Pはそのときいなかったのに、めぐりめぐって耳に入ったらしく。「それほど熱い思いがあるのなら、お前に」と任されました。

──でも、言われたからって任せるわけじゃないですから、以前からそういうつもりがあったのでは。

小川 テレビの自分の演出を見ていて、梅澤Pが引っかかってくれたんなら……。お互いにそういうこと言わないですけど(笑)


■「2」で終わっていたかも

──「NewStage2」をやって、「NewStage3」もやるぞ! と燃えてましたか?

小川 いや。次にオールスターズの映画があったら、もう自分は作るのはやめようと思ってた時期はありました。毎年どんどんプリキュアの人数が増えていって、自分の持っている力や引き出しを限界まで使い果たして作っている。その中でいいものが作れるのだろうかという不安があったんです。それから、自分は「ドキドキ!プリキュア」の演出をやっていたけど、映画を作るならテレビシリーズにお別れをしなければいけない。当時「ドキドキ!」は最終話に向けて現場が暖まって勢いがあった。そこを離れなきゃいけない淋しさもちょっとありました。

──でも、「NewStage3」をやることにした。

小川 オールスターズ映画は、「新しいプリキュアへバトンを渡す」意味合いもあります。「ドキドキ!」現場の熱気を、「ハピネスチャージプリキュア!」のキャストの2人に手渡すのも、オールスターズをやってる人間の1つの役目じゃないかなと思った。バトン渡しをしっかりするために、「NewStage3」は自分が取り組ませていただきました。それから、「NewStage1」と「NewStage2」の両方関わっていて、グレルとエンエンの夢が叶う瞬間が3で見られるなら、自分で作りたいっていう気持ちもありました。

──映画のゲストキャラが再登場するのは、初めてですよね。悪役はありましたが。

小川 初めてですね。だからもう一度動かせて幸せだったな。

──「NewStage」シリーズは、1のあゆみと、2のグレルとエンエンが、3で出会って完結します。最初から三部作構想があったんでしょうか。

小川 梅澤Pの頭の中にはあったみたいですね。でもいろいろな事情があって梅澤Pが「NewStage2」でいったんプリキュアを引退した。プロデューサーが永富Pに代わって、梅澤さんは永富Pさんに「今度はお前がプロデューサーなんだから、好きにNewStageシリーズじゃないものを作ったほうがいいよ」と言ったらしいです。永富さんは何を作るかそうとう迷ったけど、「やっぱり僕はNewStage3を作りたい」と梅澤さんに言ったんだとか。そこで永富Pが「別の作品を作りたい」と言ってたら、三部作じゃなくて2で終わってた。

──いい話だ!

小川 梅澤さんはシナリオの打ち合わせには全部参加してます。本来永富Pと自分と成田良美さんの3人で作るところにずっといてくれた。で、いろんなアドバイスを。

(ここで、永富P颯爽登場)

小川 いま永富さんの話をしてましたよ! 「オールスターズを好きに作っていい」って言われた話。
永富 あー、はいはい! そんなこともありましたね(笑)

後編に続く
(青柳美帆子)