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普通の刑事が国家のせいでひどい目に「ありふれた悪事」にある韓国映画の気骨

2017年12月17日 09時45分 ライター情報:しげる
身も凍るような自国の暗部に向き合いつつ、サスペンスとしてストーリーを成立させる。『ありふれた悪事』は、現在の韓国映画界の勢いや空気感まで伝わってくるような作品である。

民主化直前の韓国、捏造捜査の行方は


来年4月に公開予定の『タクシー運転手』でもネタにされている、民主化直前の韓国。ちょうど30〜40年前の話ということで、絶妙にノスタルジーをくすぐる題材なのかもしれない。『ありふれた悪事』もそれに連なる作品で、舞台は1987年。軍事独裁政権の最末期にあたる。

多少手荒だが平凡な刑事であるカン・ソンジン。民主化を要求するデモに手を焼く警察官であり、足の不自由な息子と障害者の妻を支える大黒柱でもある。楽しみといえば近所に住む親友の新聞記者ジェジンと酒を飲むことくらい。韓国を揺るがしている連続殺人犯の捜査は進まず、上司にケツを叩かれる日々を過ごしている。

ある日、ソンジンは大統領直属の治安機関である国家安全企画部の室長ギュナムに呼び出され、そこで別件で逮捕した男が例の連続殺人事件の犯人だと告げられる。捜査資料を渡され、裏付けを取るための尋問に取り組むソンジン。しかし、捜査を進めるうちにこの男はどう考えても犯人ではないことに気がつく。民主化への要求から国民の目をそらすため、国家安全企画部が捏造した犯人逮捕の片棒を担いでいたことを知るソンジンだが、多額の報酬と息子の治療のためには捜査を続けざるを得ない。

一方、国家安全企画部の陰謀に疑いの目を向けるジェジンは、捏造捜査を暴くべく取材を続ける。しかし、彼の身にも危機が迫っていた。親友と家族と仕事、すべての板挟みになったソンジンが取る行動とは。

なんといっても30年くらい前まで独裁政権下にあった国の人たちが、自分たちで撮った映画である。ディテールがとにかく生々しい。刑事たちのファッションは平服の上にジャンパーを羽織った韓国警察伝統のスタイル。彼らはベトナムでの従軍経験について語らい、タバコを吸いまくり、民主化を要求する学生たちをしょっぴいては容赦無くシバき上げる! 思わず「いいもん見てる!」という気分に。

主人公ソンジンは、そんな生活に特に疑いを持たなかった人物だ。正義感こそあれ、民主化デモの参加者をバンバンひっぱたくし、ちょっとでも怪しい人間はすぐに手錠をかけてしまう。ソンジンは「自分は完全に普通の人間で、こうして仕事をしていれば普通に生きていける」と信じ込んでいる人物だ。

ライター情報

しげる

ライター。岐阜県出身。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

URL:Twitter:@gerusea

コメント 1

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    「ありふれた悪事」にある韓国の気骨

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