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ジェンダー・ニュートラルは必要か ドイツで国歌の内容めぐり論争

2018年3月13日 18時00分

ライター情報:仲野博文


アメリカのミレニアル世代が「新しい情報をアップデートする」という意味で使う「Woke」をタイトルの一部に組み込んだ本コラムでは、ミレニアル世代に知ってもらいたいこと、議論してもらいたいことなどをテーマに選び、国内外の様々なニュースを紹介する。今回取り上げるテーマは国歌とジェンダー・ニュートラルを巡る論争だ。ドイツでは国歌の歌詞を巡って家族省の平等政策担当トップが「時代の変化に合わせて、歌詞も変更すべき」と、具体的に2カ所の変更を求める提案を行ったが、市民や政界からは大きな支持を得ることはできず、メルケル首相も「変更する必要性は無いと思う」とコメント。ドイツ国歌の歌詞変更が行われることはなさそうだが、すでに「ジェンダー・ニュートラリティ」を理由に国歌の歌詞を変えた国は存在する。

「父なる祖国」と「兄弟のように」は差別的か?
ジェンダー・ニュートラルと歴史を巡る論争



今年はテレビなどで日本を含めた様々な国の国歌を耳にする機会が多い。韓国の平昌で冬季五輪が行われ、6月にはロシアでサッカーのワールドカップも開催される。キックオフ前に両国の国歌が演奏されるワールドカップでは、日本代表が対戦するグループリーグの3試合だけでも、『君が代』以外にコロンビア、セネガル、ポーランドの国歌を聴くことができるだろう。

当たり前の話だが、国歌はそれぞれの母国語で歌われるため、スポーツのイベントなどで他国の国歌を耳にしても、歌詞の意味まで理解するのは困難だ。しかし、世界史に興味のある方は、たとえばアメリカ国歌『星条旗』やフランス国歌『ラ・マルセイエーズ』が独立戦争や革命を歌ったもので、イギリスの事実上の国歌として知られる『ゴッド・セーブ・ザ・クイーン』は君主を称えたものであるという話を耳にしたことがあるかもしれない。多くの国歌では、歌詞から国が誕生した経緯や、国がたどってきた歴史などを垣間見ることができる。

ドイツ国歌『ドイツの歌』はメロディーが18世紀末に先に作られ、1841年に歌詞が付けられたが、当初は自由主義的なドイツの国づくりを目指した1848年革命に参加した市民の間で歌われていたもので、国歌として歌われるようになったのは1922年になってからの事である。国歌として100年近く歌われてきた『ドイツの歌』だが、今月4日に家族省で平等政策コミッショナーを務めるクリスティン・ローゼメーリンク氏が、歌詞の中で使われている一部の言葉が「男性に偏りすぎている」として、それらの言葉を中性的な言葉に変更すべきと提案した。

ローゼメーリンク氏が「男性的」として指摘したのは、「父なる祖国」と「兄弟のように」という2つの言葉。「祖国」と「勇気を持って」という代替案も提示されたが、これに市民や政治家は猛反発。ジェンダー・ニュートラルの名のもとに、これまで使われてきた言葉が別のものに変更されるのはナンセンスだという意見が大勢を占めた。ロイター通信は4日に、ローゼメーリンク氏の提案を皮肉った、「じゃあ『母国語』という言葉も変えなきゃ」というドイツ人のツイートを紹介している。

この問題にはメルケル首相も自身の見解を5日に示しており、「そんなことをする必要は全くありません」と一蹴している。国歌とは異なる話になるが、ドイツ国内を流れる川の殆どは女性名詞だが、ライン川を含むいくつかの川は昔から男性名詞として使われてきた。ライン川は「父なるライン」、ドナウ川は「母なるドナウ」という呼称でも知られているが、ジェンダー・ニュートラルがこれらの川の呼称を変える可能性もあったのだろうか。

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ライター情報: 仲野博文

ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。