英国のハリネズミの個体数減少に歯止めをかけるため、人工知能(AI)と衛星技術の活用が始まった。ケンブリッジ大学の科学者たちは、「テッセラ(Tessera)」と呼ばれるAIシステムを用いて、英国の詳細な衛星画像を分析し、ハリネズミが生息している場所や、その生息地が失われつつある場所を特定している。



 このシステムは極めて詳細な地形図を作成し、個々の生垣といった特徴を識別できるだけでなく、雲に覆われて見えにくいハリネズミに適した地域も予測することができる。



 この技術によってハリネズミの生息地が特定されるだけでなく、ハリネズミが安全に移動し、餌を摂り、パートナーを見つけるのを妨げている障害も明らかになることが期待されている。



 英国のハリネズミの個体数は、ここ数十年で劇的に減少しており、2022年の研究によると、2000年以降、農村部のハリネズミの数は最大75%減少したと推定されている。英国唯一の在来種である西ヨーロッパハリネズミは、現在、国際自然保護連合(IUCN)によって「準絶滅危惧種」に分類されている。



 「テッセラ」プロジェクトでは、衛星分析に加え、ハリネズミの移動を監視するために個体に取り付けた小型GPSデバイスなど、追加の現地調査データを組み合わせている。ちなみに研究者たちは、英語でハリネズミを意味する「ヘッジホッグ(Hedgehog)」と「デジタル(Digital)」を掛け合わせ、このGPSで追跡対象となっている動物を「デジホッグ(Digihog)」と愛称で呼んでいる。



 絶滅危惧種保護団体「People's Trust for Endangered Species」の戦略・研究マネージャー、シルヴィウ・ペトロヴァン氏は、AIが保全活動に新たな知見をもたらす可能性についてこう述べた。「私たちが本当に望んでいるのは、こうした非常に強力なモデルを活用して、例えばハリネズミが餌を見つけたり、パートナーを見つけたり、田園地帯を安全に移動したりする際に、具体的にどのような障壁があるかを解明することです」



 今回のシステムの構築には、膨大な計算リソースが必要で、研究者たちは、約20ペタバイトのデータ(標準的なデジタル写真約100億枚分に相当)を用いてテッセラを学習させた。そして 大学の利用可能な計算能力を使い果たした後、科学者たちはデータ処理を継続するため、机の下に追加のプロセッサを設置したと報じられている。



 その後、米国のテクノロジー企業であるAMDとVultrからの支援により、プロジェクトのインフラが拡張された。



 ケンブリッジ大学の惑星コンピューティング教授であるアニル・マダヴァペディ氏は、テッセラの応用範囲はハリネズミの保護をはるかに超えていると語った。「衛星データの利用は非常に複雑で、ノイズも多い。

雲の除去や昼夜の補正など、様々な処理が必要だからです。テッセラはそうした大量のデータを圧縮し、非常に使いやすい英国の地図を提供してくれます。これにより、宇宙から見えるものについて、極めて具体的な問いを投げかけることができるのです」



文:BEST T!MES編集部

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