斎藤工が妊娠する男性役に挑んだNetflixシリーズ『ヒヤマケンタロウの妊娠』が、全世界独占配信中だ。共演の上野樹里が後ろから斎藤を抱きしめ、斎藤の大きなお腹を愛おしそうに撫(な)でる姿を写したメインビジュアルが大きな話題を呼んだ本作。

妊娠する男性という役を演じる中で、斎藤は妊娠や出産、さらには子育ての現状について「実感に近い」思いを感じたという。

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■上野樹里演じる亜季と対峙することで作り上げたキャラクター

 本作は、すべての男性が妊娠するようになってから約50年後の世界を舞台に、突然の妊娠に悪戦苦闘する主人公・桧山健太郎とその周囲の人々を描いた社会派コメディ。桧山のパートナー・亜季を上野樹里が演じる。

 「もしも男性が妊娠したら?」をテーマにした本作は、斎藤にとって初の“妊娠”経験となる。初めての挑戦には戸惑いも大きかったのではないかと思ったが、斎藤は「映画やドラマは“まさか”を描くもので、予期せぬ何かが起こることで物語ができあがるので、(妊娠する男性という役に対し)全く抵抗感も違和感もなかったです。企画をいただいた時から、この作品を通じて見えるものは多様性につながるという確証を感じていました」と本作への思いを口にした。

 とはいえ、演じる上での難しさもあった。特に物語の前半は、妊娠中のマイナートラブルや体の変化をリアルに丁寧に描いており、「家族など身近な女性の人に話を聞かせてもらったり、さまざまな作品の中で描かれていたものを参考にさせていただきましたが、中でも(原作の)坂井恵理先生がご自身の体験を描かれた作品からは大きな影響を受けました」と、入念にリサーチして臨んだことを明かす。特に苦労したのは「自分の欲するものと、自分に宿るものが欲するもの、という2つの意思をどう感じるのか」という感覚。「それは実際に感じてみることはできないので、聞いた話から想像して演じました。ですが、実際にお腹をつけていただいたりする中で、自分の中の重心が変わっていくことを感じていました。上半身に意識があったものが、だんだんと体の中央にずれていくような感覚は実感に近いものがあったので、不思議で貴重な体験をさせていただきながら、撮影に臨みました」。


 さらに、上野と対峙(たいじ)して芝居をすることで、桧山と亜季の立ち位置も明確になっていったという。

 「上野さんが演じる亜季には、いわゆる“働く男性”的な概念が宿っていますが、それに対して、桧山はいわゆる女性的な立場を経験する、対になる関係性です。この対比によってそれぞれのキャラクターが描かれています。ですが、演じるうえでは、キャラクターの中だけで生まれたもので構築するのではなく、現場で上野さん演じる亜季と対峙することで、桧山という役を作り上げることができました」。

 そんな上野とは、撮影現場では「食に関していろいろな交流をさせてもらった」と明かす。斎藤自身、コロナ禍になってから「自分の体内と向き合うようになった」と言い、現在では「体の9割が菌でできているので、その9割を良い状態にすることを考えて、お味噌汁や糠漬け、玄米のような腸内の菌に良いものに食生活を変えています」と話す。それだけに、食に関して詳しい上野とは話があったようで「上野さんのお知り合いの農家の方にお米を送っていただき、僕は発酵の濃度の高い飲み物をお返ししたり、親戚みたいな関係でした」と笑った。

■今の世の中に必要なのは“ホスピタリティ”

 斎藤は、これまでに監督を務めた作品の撮影現場に、ベビーシッターを手配し、託児所を設け、スタッフたちが子どもを連れてこられる環境を整えていることでも知られる。女性の働き方にも高い関心を持ち、率先して行動している斎藤だが、本作の撮影を通し、妊娠・出産、子育てに対しての意識もさらに大きく変わったという。

 「やはり、社会の目、ホスピタリティが足りていないことを改めて感じました。自分も、妊婦さんに対し『迷惑だったらどうしよう、断られたらどうしよう』という思いが先立ってしまうこともありましたが、そこにもうひとつの命があることを、社会全体で、すなわち個人個人がもっと考え、ホスピタリティを掲げていかなければならないと思います」とその思いを語る。

 「新生児に対するサポートはもっと豊かになって欲しいと思いますし、このコロナ禍でニューノーマルに気付く機会があったことで、お子さんをどういう場所で育てるかの選択肢も増えてきていると思います。
そうした選択肢がたくさん持てる時代になってほしいと思います」。

■隠れていた人間性が出たときに人は変われる

 ところで、本作の桧山は妊娠をきっかけに、人生が大きく変わっていく。そこで、斎藤に「人生が変わったと思う出来事」を尋ねると、「普段は自分で自分をコントロールしているつもりでも、まさかの事態に遭遇した時、隠れていた人間性が出てしまうんですよね」とほほ笑む。「昔、お付き合いしていたガールフレンドと遊園地に行って、かなりの高さから上下するアトラクションに乗ったんです。当時は若かったので、手を握り合って乗っていたのですが、(乗り物が)落下した瞬間に、お互いを支えるようにつないでいた手を思わずパッと離してしまって(笑)。自分の本性が出たなと、笑ってしまいました。僕にはすてきな思い出です」とほほ笑ましいエピソードを明かしてくれた。

 大なり小なりそのような経験を積み重ね、「思いがけない時に出る自分の素直なリアクションに落胆しながらも、それを受け入れることで酸いも甘いも知って成長していく」ということを学んだという斎藤。「もちろん、大きな影響を受けた数々の作品と出会えたことや、監督業をさせていただいたことなど、大きな転機はこれまでにもたくさんあり、それによって人生が変わったことを感じてきました。そして、これからも、(自分自身が成長するため)変化し続けていかなければいけないと思っています」と先を見据える。斎藤の目に映る“この先”に期待し、その姿を追い続けていきたい。(文:嶋田真己 写真:松林満美)

 Netflixとテレビ東京の共同企画・製作のNetflixシリーズ『ヒヤマケンタロウの妊娠』は全世界独占配信中。

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