古澤健、いまおかしんじという気鋭の映画監督らによる「青春H」シリーズが始まった。その第1弾が「オトシモノ」(2006)、「トワイライトシンドローム デッドクルーズ」(2008)で知られる古澤健の新作「making of LOVE」だ。


この作品は、古澤健自身が演じるふるさわたけし監督が、実際に映画を撮影している姿を追った疑似ドキュメンタリー形式で進行していく。街なかでビデオカメラを片手にロケをしていた古澤は、通りかかったある少女に心を惹かれる。その少女ゆかり(藤代さや)は、見かけるたびに違う男と歩いていた。そのうえ、ゆかり自身もビデオカメラを片手に男との行動を記録し続けていたのだ。取材という名のストーキング行為で彼女の実像に迫ろうとするふるさわだが、彼女と寝た男はすべて記憶を失っているなど、奇妙な事実が明らかになっていく。それでも執拗にゆかりを追い続けるふるさわは、次第に常軌を逸していき、やがて衝撃の事実を目にするのだった……。


ヒロインゆかりを演じた藤代さやがとにかく素晴らしい。謎を秘めた横顔と瑞々しい笑顔がころころと切り替わる様は、ふるさわ以上に観客をも虜にさせる魅力に満ちている。彼女は本作が映画デビューということだが、かなりの逸材であることがうかがえる。中盤のベッドシーンではボーイフレンドを相手に、見事な脱ぎっぷりを見せてくれる。

そして、脱ぐのはヒロインだけではない。監督のふるさわもまた、知人から「ポール・バーホーベン(「ロボコップ」などの監督)は俳優たちを脱がせるために自分も率先して脱いだ」という逸話を聞かされるやいなや、全裸で映画を撮りはじめたりするのだ。
この映画では誰もそんなこと望んでいないのに! 女は男を狂わせる、とはよく言われることだが、それを見事に映像化した名場面と言えるだろう。

ゆかりとのベッドシーンの相手を務めるのはもちろんふるさわではなく、劇中にハンサムな映画俳優として登場する翔太(川上洋一郎)だ。翔太とゆかりがデートを繰り返す場面の甘酸っぱたるやどうだろう。あんまり恋愛的に恵まれた青春時代を送ってこれなかった筆者などは、人前で何度もチュッチュする二人の様子に、うらやましくて劇場の椅子の上で悶絶してしまった。そんなおいしい役どころの川上くんではあるが、主役としては完全にふるさわの狂気(半分本気)に食われてしまっている。それはこの映画の展開上、仕方のないことではあるのだが。


いろいろといびつな映画ではあるが、そこには映画への愛がある。映画の力を信じる監督の想いがある。一見、普通の青春映画だと思って見ていると、いつの間にやら虚構の世界に放り込まれる映画の魔法を、ぜひ体験してみてほしい。(とみさわ昭仁)