そんな中、日本の未来像を探るヒントになりそうな本を見つけた。『2100年、人口3分の1の日本』(メディアファクトリー)である。震災以前に大部分が書かれた本ではあるが、歴史人口学者の著者が約100年後の日本を“人口”というキーワードで読み解く未来予想図である。仕事、家族、恋愛のあり方……もはや自分が生きていない世界だけれど、ちょっとのぞいてみたい気も。
本書によると、現在1億3千万人の人口が50年後には9千万人に、100年後には4千万人にまで減ると予想されているらしい。ほんの10年前、2000年頃までは人口減少自体がニュースになるほどで、出生率をなんとか上げて人口減少を食い止めようという論調が主流だった。しかし、21世紀の日本では、「まるで映画のフィルムを逆回転させるように、軌道を逆戻りさせていくことになる」のだとか……。
まず、「出生率が下がった大きな要因には、現代文明の行き詰まりに対する不安がある」とのこと(先の原発事故でよりこの考え方が大きくなっているのでは……)。そして、人口の減少により、地方の過疎高齢化が進み消滅する村落が増え、ますます東京などの都市部に人が集中。学校はコンパクト化されて世代や性別を超えて友達をつくる時代に。
インパクトがあったのは、「結婚に『適齢期』はなくなり、子どもづくりを目的としない新しい結婚文化が生まれる」、そして、「『人生90年』の時代には人間関係の問題から、三世代同居をためらう家族が増える」というもの。
個人的には、非婚やシングルマザーなど生き方の多様化がすすむぶん、たとえば高度成長期のようなサラリーマンの夫+専業主婦の妻+子どもは2人で……といった標準的なモデルがなくなり、社会的な抑圧が軽くなる分、「どう生きていいかわからない」という悩みを持つ人も増えそうだな~と感じた。また、血縁や世代に依らないコミュニティでは、個人の人間力(人柄やコミュニケーション力)がより問われるようになるのかも??
版元の担当者さんにお話を伺ってみたところ、「『デフレの正体』(角川oneテーマ21/50万部)や『老いの才覚』(ベスト新書/100万部)が大変ヒットしていることからも分かるとおり、『人口減少』や『高齢化』に対する興味や関心がとても高まっています。発売後の反応としては、『これからの時代にどう暮らすべきかを考えた』、『どんなところにビジネスチャンスがあるかのヒントになりそう』といったビジネスパーソンの意見や、『4000万人まで減るくらいがちょうどいい気がする』、『自分の子どもの将来を考えた』といった素朴な感想も見受けられました」とのこと。
と、そんなわけで「どこでもドア」のように2100年の未来をちょこっと恒間見せてくれる本書。衝撃的な、というよりはリアリズムを感じさせる未来社会がページの向こうに広がっていた。長期的なビジョンを持つことで、今、何をすべきかといった新たな視点が得られるというメリットも! あなたも数時間の読書で2100年にタイムスリップ、いかがでしょう?
(まめこ)